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魔王の娘は剣聖に拾われ伝説となる ~勇者への仇討ち目指して冒険者始めます~  作者: 茶巾丸


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6. 冒険者の洗礼

 レナは念願の冒険者としての登録を済ませ、外に出ると何者かに呼び止められた。


「おい、姉ちゃんちょっと待てよ」


 声を掛けてきたのは四人組のパーティで恐らくリーダーと思われる人物。

 額を全て出すような短い髪と見た感じチャラそうな剣士の男に、 青いローブに身を包み鉄製のロッドを所持した治癒魔術師の女性。

 黒いローブとツリ目で少しキツそうな雰囲気の魔法使いと思しき女と軽装で背中に矢筒を抱えた弓術士件レンジャー風の男性。

 リーダ格の男は首元に自身よりひとつランク上、銅のプレートを装着していた。

 

 レナは唐突に因縁を付けられた事情について何となく察した。

 恐らく自身が魔族という逃げられない事実に基づいての事だろう。

 余り絡みたくはないが無視するのもバツが悪い、適当にあしらうかと考え軽く返事だけを返す。


「なんだ?何か用ありか?」


「今まで散々人々を苦しめてきた魔族が冒険者やるって本気か?」


「拙者は真剣に冒険者目指してやってきた剣士だ、ギルドからも冒険者として認められた。お主から文句を言われる筋合いはないぞ」


「お前ら魔族が人間にした事を忘れるなよ、そんな言葉信じられるか」


「魔族だからと言って全員が悪だと決めつけるのか?人間にだって悪い奴が沢山いる、お主はその目で悪人を見てきていないのか?」


「うっ、うるせえ!屁理屈言ってんじゃねえよ」


 二人の問答を見ていた仲間の一人である僧侶の娘が、リーダーの男を後ろから宥めようと試みていた。


「ね、ねえ……もうやめましょうよ」


 だが、男は頭に血が登っているのか、仲間の進言も聞かずに相手へと責め立てようとしている。

 レナは出来るだけ関わりたくないと思い、その場を立ち去ろうと男たちに告げた。


「それで、お主は文句を言うためだけに拙者を呼び止めたのか?用事がないならもう行くぞ」


「お前に冒険者としての心構えを教えてやろうとも思ってな、ちょっとそこまでツラ貸しな」


 レナは面倒な奴に絡まれたと思い大きく溜息をつく。

 冒険者開始初日からケチが付くとは想像もしていなかったが、ここでトラブルを起こして騒ぎになるのも困ると思い、素直に男たちについていく。


 彼らの後に続くと冒険者が武器の訓練が出来るような木の人形が立てられた広場のような場所へ到着した。

 周囲では何名かの冒険者が修練の後なのか休憩しながら二人へと奇異の目を向ける。

 何事かと思い野次馬のように周りへ集まり事態の成り行きを見守りはじめた。 

 先程の男は腰に備えていた片手剣を抜き、レナへ刃を向けて告げる。


「お前も剣士なら新米冒険者としての心構えを見せてやるぜ、もし冒険者を辞めるって言うなら、ここで仕舞いにしてやってもいいぜ」


 だが、レナは相手の要求など意を介さず毅然とした態度で答えた。


「断固お断りだ」


「それならこれでも喰らいな!」


 男は右手の片手剣を正面から鋭い突きをレナに向けて放つ。

 剣先がレナの目の前まで迫り左腕に刺さるかと思った瞬間、彼女の姿が消えた。

 レナが体現したのは、師匠に教えられた転(まろばし)の基本に乗っ取った転円転の変化。

 襲いかかる剣を最小限の動きで体を右回りに反らし相手の攻撃を交わし挑発する。


「どうした?攻撃が当たっていないぞ」


「くっ!この野郎!!」


 男は大きく剣を振りかざし、レナへ再度斬りかかる。

 だが、繰り返される攻撃も剣筋の切先三寸での外しで体を反らし避ける。

 彼女は相手から放たれる攻撃の剣筋を全て読み取り、既《すんで》のところで避けていく。

 師匠から教わった古流武術の教えを体現し、相手の剣を無力化する巻き技を狙っていた。

 二人の戦いを見ていた野次馬が白熱する剣のやり取りに大声を飛ばし、リーダーの男を応援している。


 レナは周囲のことなど全く気にもせず、初めての実戦で師匠の教えが生きているのを体で感じ取り、口元で僅かに笑みを浮かべていた。

 狙いは相手から放たれる攻撃の隙を瞬時に判断して必殺の一撃で決めるために。

 全ての攻撃が避けられ、相手の攻撃が大振りに上段から襲い掛かって来た瞬間、彼女の目が真剣な眼差しを見せ、己が腰に刺していた袋竹刀を抜く。

 

 自身切りかかっていた剣へ、刀を上から重ねて外に反らしながら地面へと叩き落とし、そのまま刀身の先を相手の首筋に当てて止める。

 完全に相手の首を跳ねる位の勢いで刀を振りながら既《すんで》の場所で止めていた。

 一撃の必殺が決まったところで、周囲で騒いでいた冒険者達の声が静まった。

 男が唾を飲み込んだ音が聞こえたところで、レナは相手へと静かに告げる。


「拙者が獲物を抜いていたら、お主の首は落ちていたぞ」


 その言葉を聞き、男は後ろに腰を落とし地面へと座り込む。


「たったの一撃で決めてきた。なんなんだよ、その強さ……お前なんで攻撃を止めた!?」


「お主が悪いやつには思えなくてな」


「どういう事だ!?」


「お主の剣筋を見ていた、相手に軽い傷を負わせる程度で攻撃していたのだろう。そうではないか?」


 男は自身が行っていた狙いを見透かされてバツが悪そうな感じでポツリと呟く。


「なんでバレてるんだよ……」


「拙者は相手が取る普段の身のこなし、体の動きや攻撃の方法を見極めて強さを図っている。どうみても本気で相手を殺めに来る太刀筋ではなかったからな」


 レナは男へ左手を差し出し起き上がるように促す。


「ホラ立てるか?」


 男は相手の手を強く握りしめ、その場に静かに立ち上がる。

 相手に立ち振舞に疑問を持った男は疑問を相手へとぶつけた。


「お前、まだ新米で駆け出し冒険者なりたてだろ?今の戦い方は相当な手練だ、何でそこまで強いんだ?」


 レナは自身を鍛えてくれた師匠のことを少しだけ誇らしげに語った。


「剣技を教えてくれた師匠が物凄い人だったんだ、剣と心を教えてくれた父同然の大きな存在。あの人に近づくために剣の修行を続けたからここまで成長できた」


「そうか……無礼を働いて悪かった。俺の名前はレオスだ、この辺じゃ一応名のしれた冒険者をやっている。後ろにいる僧侶がサリア、魔法使いのレダ、もう一人がレンジャーのフォルスだ」


「私の名はレナだ、まだ新米冒険者だが、しばらくこの街で世話になる。よろしくな」


 リーダーのレオスに右手を差し出し固い握手を交わす。

 本来の目的である宿屋を探すべく別れの挨拶を伝え、その場を去ろうとする。


「それじゃあ、拙者は失礼するよ、またな」


 立ち去ろうとしたレナの背中を見てリーダーのレオスは呼び止めた。


「な、なあ!レナ……俺達の仲間にならないか?」


 相手からの突然のパーティー勧誘に、揃った全員を見据えて素直に答えを出す。


「辞めておくよ」


「なんでだよ!?いいじゃねえか」


「見たところ、お主のパーティはリーダー役を含めとても均衡が取れている。拙者が入ると力関係のバランスが崩れてしまい崩壊しかねない。だから断る」


「そ、それは大した問題じゃないだろ!」


「お主は、剣技を更に極めて強くなり仲間を大事にしてあげてくれ。自分の仲間は自身で見つけていくよ」


「そ、そうか解ったよ。残念だが……」


「ああそうだ、一つ頼まれてくれるか?」


「なんだ、頼みって」


「こちらはまだ冒険者としては新米だ、何かわからないことがあった時に、先輩としてアドバイスして貰えると助かる」


 レオスは先輩として頼られたのが嬉しいのか笑顔を見せてレナへ強く伝えた。


「お、おうっ!任せとけ!何か困ったら相談してくれよな!」


 因縁をつけられたレオス達と別れ、今日の宿屋を探すべくレナは再度街中へと歩みを進める。

 歩いている最中、後ろから何者かがつけてくる気配を感じた。

 警戒をしながら後ろを振り向くと、少し背が高くて頭から僧侶の様なローブを被ってメガネを掛け胸元が豊満な体つきをした女性が立っていた。

  何故、自身の後をつけてくるのか、相手に目的を問いただす。


「なにか用でもあるのか?」


 目の前の女性は何か言いたそうにこちらを見つめ杖を握りしめモジモジとしている。

 決意を決めたのか、必死に声を絞り出すようにレナへと目的を告げた。


「あ、あのっ……私を貴方のパーティに加えては頂けないでしょうか!?」


レナは突如として現れた女性からパーティ加入の相談を受けることになった。

こちらの作品は毎週金曜日更新予定です。

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