3. 魔族捜索隊の襲来
※夏休み特別企画第2弾 本日最終日です。
レナが師匠の元で修行している中、村へアルデイル騎士団と名乗る連中が訪れた。
突然の来訪者に驚いた村人の一人が急いで、ノブツナを呼び出しに来る。
師匠はレナに家の中で隠れているよう伝えて騎士団との話し合いに向かう。
彼女は師匠がどう対処するのか気になり、建物の隙間からやり取りを覗いている。
「私はアルデイル騎士団長フレッド!この村の代表者はいるか!?」
騎士の呼びかけに師匠が正面から名乗り出て問いかけた。
「某がこの村の代表を努めておりますが、貴殿らは何用でこちらに来られたのだ?」
「この周辺に魔族が居ると聞いて調査にやって来た!嘘偽りを語ればアルデイルへの反逆とみなす!正直に答えよ」
隊長と思われる騎士の問いかけを聞き、レナは自分を探しに来たと認識する。
このままでは、騎士たちに捕まるのしか無いのか、そう思っていたが師匠の態度は毅然としたものだった。
「魔族と言う者はここには居らぬ、立ち去るが良い」
師匠の言葉を聞き騎士の一人が事実かのように大声で疑問を問いかける。
「しらばっくれるな!この周辺で目撃情報が出ておるのだぞ」
「ここは平穏に暮らす村人だけで暮らしておる、お主らの問うた者はおらぬ」
「なんだか信用ならんな!念の為家探しをさせてもらうぞ」
「静かに立ち去れと言う取るだろうに…」
「なんだあ?ジジイ貴様生意気だぞ、我ら騎士に逆らうのか」
騎士の一人が師匠を右腕で掴もうとするが、ひらりと体を右回りに交わし相手はバランスを崩し転びそうになる。
その様子をみて他の騎士に失笑が起き、怒りを抑えられない男は武器に手をかける。
「貴様!我ら騎士を侮辱するのか!?」
大声で叫んだ男は自身の剣を抜き、相手へと斬りかかろうとするが、その前に師匠は一瞬で剣を握った手を腰にさしていた木刀で殴り武器を地面に叩き落とす。
「うっ!」
武器を叩き落された騎士は、殴られて痺れた手をもう一つの手で支えながら、相手に対して強がりともいえない声で相手を威嚇する。
「貴様あぁ?歯向かうのか!?」
「これで力量の差に気付かんとは、王国の騎士と言っても大した事ないのう」
他の騎士たちが武器を構えて臨戦態勢を取るが師匠は全く動じず、呆れたように告げる。
「こうなったら本気の剣を見せるしか無さそうだのう」
師匠は静かに自身の腰に差していた刀に手を掛けて居合の構えを取る。
そして自身の周囲一体に恐ろしいほどの殺気を放ち、今にも剣を抜かんとしている。
その殺気はまるで人外にも勝るほどで周囲に居る人間たちが恐怖の感情を現す。
圧倒的な殺気の気配に気づいたのか隊長の男が驚いた様子で師匠へと問いかけた。
「貴様!?なんだその恐ろしいまでの殺気は…化け物か!?」
「お願いだから拙者に刀を抜かせんでくれんか?お主たちはただ、ここに魔族は居なかったと報告するだけで済むだけだ。このままでは全員の命を刈り取るしかなくなるぞ、無駄に命を散らす必要はあるまいて、どうだ聞き入れて貰えんか?」
相手の恐ろしいまでの気迫を感じて、隊長フレッドが全員に命じる。
「全員撤退するぞ!ここには何もなかった。帰投する!」
そう騎士たちに告げて馬を外に向け、他の騎士たちは若干不満そうな表情を見せながら村から全員が立ち去っていた。
様子を見ていたレナは師匠の圧倒的な殺気を全身で感じて漏らしそうになって思わず言葉が溢れる。
「あれが…師匠の本気、相手を殺気だけで引かせる圧倒的な威圧感、本当に凄い…」
──騎士フレッド視点
騎士の数人が隊長の行動に不満を見せ、なぜ引き下がったのか食い下がる、
「隊長なぜあそこで引き下がったのですか!?騎士隊の名折れになりますよ!」
「お前たちはあの剣士から放たれる恐ろしいほどの殺気に気づかなかったのか!?あのまま我々が戦っていたら全員死んでいたぞ」
騎士たちは全員が顔を見合わせて本当かどうか確認したが解らない様子を見せる。
そのうち一人が真実かどうかを再度問いかけた。
「そ,それは本当ですか?」
「本当だ、あの剣士は恐らくだが勇者級の強さを持っている。我々騎士たちが全員で戦いを挑んでも恐らく一瞬で真っ二つだ」
「そ、そんなに強いのですか?」
「ああ、まさかこんな辺鄙な村にあれ程の強さを持った人物が居たとはな…全員聞け!あの村では何も見つからなかったと報告を合わせよ!さもなくば我らの国に害が及んだ場合、大量の死者が出るのを覚悟せよ」
「はっ!」
騎士たちはそのまま馬を走らせ自分たちの国へと帰路へ向かっていった。
──平穏を取り戻した村
騒動の騎士たちが立ち去り落ち着いたのか師匠は静かに呟く。
「あの隊長が解ってくれて助かったわ」
彼は落ち着きを取り戻した街を見回し、隠れていたレナの元へと戻る。
急いで師匠の元へ駆けつけた娘は、改めて礼を告げた。
「師匠!助けていただいてありがとうございます」
「気にするでない、人間だ魔族とかは関係ない。お主は我が愛弟子だから守るのは当然だ」
「ありがとうございます。師匠の優しさを見て何だか涙が出てきました」
自身の袴で涙を拭いながら、師匠の行動についてレナは疑問を問いかける
「でも何故あの剣で襲いかかってきた騎士を討たなかったのですか?師匠なら楽勝でしょうに」
「我が剣は無闇矢鱈に人を傷つけない、人を活かす剣だ。その事を心に留めておくがよい」
「わかりました、それにしてもさっきの師匠が放った殺意の波動は凄かったですね!私もあれくらい出来るようになってみたいです!」
「お主にはまだまだ無理だ、教えるのは剣の修業を極めてからじゃの。まずは自身の修行を続けて剣技を究めよ」
王国騎士の一騒動から落ち着きを取り戻し、皆が平穏な生活に戻る。
レナは師匠に追いつくべく更なる修行に取り組み始めた。
──それから一ヶ月後
レナは相変わらず毎日剣術の修行を行っていた。
腕が棒になるほどの素振りの練習と師匠との剣術組手で実戦を想定した訓練。
何度も相手へと攻撃を繰り出しながら何かに気づいたのか師匠が行動を嗜める。
「ほれほれ、また体から殺意の気配が漏れ出ておるぞ」
レナは心を落ち着かせようとして、静かに剣道の中断の構えを取り精神を集中させる。
再度攻撃を繰り出すも直ぐに師匠から合図が送られる。
「攻撃止め!」
レナは呼吸と整えながら師匠の方を向き相手の言葉を聞く。
「何度も言っておろう、お主の剣は殺意が剥き出しになる場面が多すぎる。湖畔に静かに落ちる木の葉のように波を立たせない無の状態で戦うのだ」
「教えを心がけてはいるんですが、先日見せくれた師匠の剣技に追いつこうと必死になると、どうしても抑えきれなくて…」
「いいか、我が剣は人を活かす術、いわゆる活人剣だ。常に殺意を振りまいていたら勢いで相手を殺しかねない。それは理解できるな?」
「それは何度も教えられましたので、頭に叩き込んでいます」
「普段戦う時は殺意を抑え込み、相手を技術のみで叩きのめす。それで力の差を見せつけることで相手の戦意を失わせられる、それを理解せよ」
「はい、殺意を使うのはどのような時でしょうか?」
「殺意は相手を仕留めると判断した時に使うのだ。世の中には言葉も通じない本当の悪人も存在する。そういう者と遭遇した時に己で判断して剣を振るいなさい」
「わかりました師匠!」
「もう一つ殺意を使うのは、自身の強さに絶対的な自身が生まれた時だ」
「絶対的な強さですか、まだまだ自分には不足しているように感じます」
「だから言うておろう、中途半端な力で殺意を振りまいて相手を抑え込んでも、ただの殺し合いになる。また精神修行の特訓だな」
「そんなあ、この時期に滝行は厳しいですよ師匠…」
「そう思うなら精進せい、まだまだ未熟だからだ」
泣き言を言いながらも自身の成長を感じる師匠との修行。
師匠との修行の生活を続けやがて旅立ちの道筋が少しずつ見えてくるのであった。
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