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 フィオディーナ修理店がわたしだけではなく、ウィルエールが加わって二日。

 溜まっていた未修理の術具はどんどんと修理されていき、彼の目測通り、今日の夜か明日の昼前には全ての修理が終わってしまいそうなほどだった。


「こればかりは本当に流石としか言えませんわね」


「王城の仕事に比べたら楽なもんだよ、はっはっは」


 ウィルエールはどこか遠い目をしていた。

 ここに並ぶ術具に比べたら、王宮の方が取り扱いが難しいのかもしれない。主に金額的な意味で。

 それに王宮は広い。よくある照明の術具の点検総数だけで、ウィルエールがここ二日でさばいた術具の量を簡単に上回るだろう。勿論、一人でやるわけではないだろうが、ウィルエールの様子を見るに、分担してもなお量が多いのだと思われる。


 残る術具は持ち主不明のものだけだ。

 ギルドには一応確認を取ったのだが、持ち主が見つけられなかった術具が数点。

 不用品として紛れ込んでいた術具か、あるいは持ち主自身がすっかり忘れてしまったか。考えたくはないが――生きて帰ってこれなかったか。

 どちらにせよ、持ち主がいないので、これらはそのまま処分しても、直して使ってもいいと言われている。

 ちなみにわたしが使っているカフス型の術具もここに入る。てっきりギルドの備品かと思っていたのだが、どうやらそうじゃなかったらしい。フィオディーナ修理店を立ち上げる際、ギルド長からそう言われた。

 これもいらない、と言われていたので、魔力を込め直してわたしがありがたく使っている。


「ちなみにわたし、これらの術具を見たことがないのですけれど……どうやって使うんですの?」


「ぼくも見たことない物ばかりだからなんとも言えないけれど……これは熱風を出す術具かな。こっちは中のものを冷やす箱型の術具かなあ。これは……」


 見たことがない、と言いながらも、ウィルエールは少し術具を見たりいじったりするだけで仕組みが分かるらしい。

 というか、ラインナップがどうにも、咲奈の記憶の中にある家電に近い。まあ、人間、どんな世界でも『こういうのが欲しい』と思うことには大差ないようで、似たような性能の術具は他にもある。

 でも、こうもピンポイントに近いと、家電を知っていて術具で再現しようとしていたのでは……と変に勘ぐってしまう。わたしが術具も家電も両方知っているからそう思ってしまうだけだろうか。

 まあでも、他にわたしみたいな転生者がいるわけでもないだろうし。断言はできないが、現在のランスベルヒにそれらしい人はいなかった。


「女神、これらはいるのかい? いらないなら処分してしまっても?」


 まあ、直すなり捨てるなり自由にしていい、と言われている術具だし、使わないなら直さない方がいいだろう。捨てるのにわざわざ直すなんて意味がない。


「そうですわねえ。この熱風が出るものは使おうかしら」


 熱風が出る術具は、どう考えてもドライヤーに近そうだし使うとしよう。あとは別にいらない。


「じゃあ、それ以外の残りは処分しようか。そうしたらこれで溜まっていた術具はすべて処理できたかな」


「そうですわね。そうしたら修理の依頼を待つか、それこそギルド長に許可を取って術具の販売をするのもいいかもしれませんわね。わたしも手伝いますわ」


 手伝う、といってもわたしの店なのだが、まあ、手伝う、が正しくなってしまうのは仕方ない。

 時間が余る上に作れる技術者がいるのだから、売らない手はないだろう。修理店、という名からはみでている気がするが。


「ありがとう、女神! ああでも、それじゃあ今日はもう店じまいにして――女神、デートしないかい? 許可取りは、後でぼくがしておくよ」


 ……ええ?

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