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アルベルトの方は今しがた依頼を達成してきたところのようで、少しばかり防具が汚れている。でも、怪我はなさそうだ。
「お疲れ様。今日も冒険者は大変ね」
「そうでもないぜ? 好きでやってるからな」
わたしの隣にドカリとアルベルトが座る。挨拶をしたらすぐに冒険者ギルドの方に戻るものだとばかり思っていたから、少し驚いた。
「――で、何があったんだ?」
「何って……」
夕方、わたしが軽く散歩していることはアルベルトも知っている。だから、ここで休憩しているのもそこまでおかしくないはず。……でも、もしかしたら、わたしがここのベンチに座っているところを、割と前から見ていたのなら、悩みがあって帰れないと思っていたのかもしれない。そこそこ長時間、ぼけっと空を見ていたから……。別に、悩みってほどのものでもないんだけど。
「俺でよければ力に――」
――きゅるる。
アルベルトの言葉を遮るかのように、わたしのお腹が鳴った。そこまで大きな音でもなかったけれど、アルベルトが黙ったところを見るに、彼の耳にはしっかり届いたのだろう。
「なんだ、腹が減って帰るまでの力がなかったか?」
からかうように笑うアルベルト。
確かにお腹は減ったけど、そこまでじゃないって……!
「夕飯前にちょっと軽く食べていくか?」
アルベルトが立ち上がる。少し迷ったけれど、わたしはその提案にのることにした。最近はウィルエールが主体となって術具の修理を請け負ってくれることが多いから、魔力の消耗も少なく、食事量を減らしていたのだが、多分、減らし過ぎてこの結果なのだと思うから。ちょっと何か食べるくらいなら、そこまで問題はないだろう。
そう思って、先を歩くアルベルトの後をついて行ったのだが……。
「ああ、いいタイミングだな。ここのパン屋、この時間帯に新しいやつを焼いてくれんだよ」
そう言ってアルベルトが案内してくれたのは、パン屋の屋台だった。今の時間帯、わたしはただ散歩をしているだけだけど、夜行性の魔物を討伐しに行く冒険者が動き出す時間でもあるようで、その冒険者向けにパンを焼いてくれるらしい。
ものすごく……ものすごく、いい匂いするけど……! これってもしかしなくても、食べ歩き、ってことよね……!?
前世では食べ歩きくらいは普通にしていたけれど、今世は貴族令嬢。食べ歩きどころか、手づかみで物を食べるなんて、という世界で生きてきたので、少しばかり抵抗がある。
絶対に避けたいわけじゃないんだけど……! でも、なんか、妙に悪いことをしている気分になると言うか……!




