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ウィルエールが術具の修理を手伝ってくれるようになってから、数日が経った。いや、手伝ってくれるどころか、わたしが手伝いであってウィルエールが主体になって修理してくれているのだけど。
このインヴェールノには術具を取り扱える術士がいなかったため、ウィルエールはあっという間に馴染んで、皆から重宝されるようになった。もっと早く術士を雇えばよかったのに……と思っていたのだが、ここは冒険者のための島。魔術を使える人間は攻撃系の魔術を極めて冒険者として活躍することを夢見ているので、術具を作って稼ぐという、堅実に生きる道を選ぶ人間はいないのだという。
閑話休題。
ウィルエールが一緒に働いてくれるようになってからは、呼び方が変わった以外には、特別、変化したことはない……と、思う。
ウィルエールから名前を呼ばれるのはなんだか気恥ずかしくて、わたしから距離を取るようにしているから、距離感が変わらないのかもしれない。彼は何も悪くないが、恥ずかしいんだもの……。
「……はぁ」
店を閉めて、日課の散歩をしている途中で、わたしは広場のベンチに腰を下ろして、ぼーっと空を見上げていた。夕焼けが綺麗だ。
宿も同じところを取っているらしいウィルエールとは、帰ったらまた顔を合わせることになってしまう。別にウィルエールのことは嫌いじゃないし、本気で顔を合わせたくないというわけでもないんだけど、こう、ずっと緊張していたり、ドキドキさせられるのは……なんというか、少しだけ疲れる。
頭では、もう宿に戻りたいな、と思っているのに、体が付いてこない。
……エンティパイアにいた頃も、こんなことが、時々あった。
考え過ぎて疲れてしまって、体は何も疲労感がないのに、動きたくなくなる。
そういうときに限って、目ざとくウィルエールがわたしを見つけて、声をかけてくれていた。……あれ、今思うと本当にウィルエールって、あのときからわたしのこと……。
いや、今は考えないって決めて空を見上げていたのに! 最近はちょっと暇になるとすぐこれだもの!
頭を横に振って、脳内からウィルエールを追い出そうとしていると、ザリ、と地面と靴が擦れる、大きな音が聞こえてきた。
今考えていたこのタイミングで!? と驚いて音のする方を見ると、そこにいたのはウィルエールではなく、アルベルトだった。
「フィー? こんなところで何してるんだ?」
「……散歩の休憩、かしら?」
わたしに声をかけてくれたのが、アルベルトであることに、ほっとしながら、わたしは答える。……なぜか、少しだけ、ほんの少しだけ、残念だな、なんて考えが頭をよぎった。




