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「貴方がどう思っていようと、女神がデートだと認識していなければ無意味でしょう。……ということで、早く手を離していただけますか?」
ぐい、とウィルエールさんの方に軽く引っ張られる。でも、アルベルトさんの力が強いから、ほとんど体が動くことはない。……腕が引かれて痛いだけ。筋力は圧倒的にアルベルトさんの方が上みたい。
「寝言は寝てからほざけ。邪魔者はお前だ、さっさと失せろ」
そのアルベルトさんに抱き寄せられれば、強い力の方にわたしの体は動く。……もっとも、ウィルエールさんはわたしを手放してくれないけど。
大岡裁きの子争いよろしく、両サイドから引っ張られるような状態である。ウィルエールさんとアルベルトさん、両者の間で見えない火花がバチバチと散っている気がする。
どっちも引く気を見せず、両者手を離さない状況に、流石のわたしも堪忍袋の緒が切れた。
「――ッ、あーもー! わたし帰ります! そんなにわたしと話したいなら、二人とも平等に出直してきて!」
わたしが怒鳴ると、二人とも「えっ」と声を上げて、手を離した。ウィルエールさんに捕まれた腕も、アルベルトさんに抱きかかえられた肩も、痛くて仕方がない。もっと早く放してよ、もう!
体は怒鳴り慣れているのか、喉を傷めず、腹からするりと声が出てくる。嫌な慣れだな……。
「ウィルは先約がいるなら諦めるのが常識よ! アルベルト、は、力でなんでも解決しようとしない!」
勢いでアルベルトさん、と言いそうになったが、ぎりぎりでこらえる。わたしが怒っていることにうろたえている彼は気が付かないだろう。
今回の件はウィルエールさんが悪いとは思うけれど、わたしのこの肩の痛みの原因はアルベルトさんのせいなので、黙って許すのもなんか癪。絶対あざとかになってるって、これ。
わたしは二人を置いて、小道を出る。わたしが怒っているからか、二人は追いかけてくることはない。
ウィルエールさんも、もう少し状況を考えてくれれば、ちゃんと出迎えて話をすることもできたし、明日だったらアルベルトさんとのお出かけも終わっているから、今日を最後まで楽しめることができたのに。
あーもー、タイミング悪すぎ!
結局、わたしは言葉が通じないながらも、なんとかフィオディーナの記憶とボディランゲージを使っていつもの街へと帰ってきたのだった。……あれだけアルベルトと離れるのが不安だったのに、勢いで一人帰ってこられるとは、怒りとは恐ろしいものである。




