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ここから2026年に改稿を始めたより前の原稿になります。改稿前なので話はつながっていません。続きができ次第、少しずつ編集していきます。
何も言い返せないわたしよりも先に動いたのはウィルエールさん――ではなく、アルベルトさんだった。
彼は、ウィルエールさんが握っていたわたしの手を強引に引き離すと、強引に引き寄せる。思わずバランスを崩し、アルベルトさんへと寄りかかるような体制になってしまった。ウィルエールさんがサッと顔を上げる。
「……いきなりなんなんですか、危ないですね」
ウィルエールがさんが、聞いたことないくらい低い声でアルベルトさんに威嚇している。
アルベルトさんもアルベルトさんで、これでもかというくらい不機嫌な表情でウィルエールさんを睨んでいる。
「いきなりなんだ、は、こっちのセリフだ。フィーになんてことを! あんた、フィーの知り合いみたいだが、やっていいことと悪いことがあるだろうが!」
「フィ、イ、だ、あ~?」
アルベルトさんがわたしの愛称を呼んだからだろうか。ぎりり、とウィルエールさんの方から歯を食いしばる音が聞こえてくる。
ちらり、と見れば、普段は前髪で隠れている目が、隙間から少しだけ見えて――その瞳は怒りに染まっていて、瞳孔が開いているようにも見える。怖い怖い怖い。
「うぃ、ウィルエールさ――、えっと、ウィル。喧嘩は駄目です、わよ。ね、人が集まっても困りますし……」
ウィル、と彼を呼んだのはいつぶりだろうか。――……フィオディーナが幼い頃、ただの友人であった時期はそう呼んでいた。
フィオディーナとカルファ王子の婚約が決まり、ほとんど同時期に彼がわたしの魔術の先生のような立ち位置になってしまってからは、ウィルエール様、と呼んでいた。はず。……うん、そうだ。
今、この場では、彼を昔の様に、愛称で呼ぶのが最善だと判断した。
案の定、ウィルエールさんは一瞬で「女神がそう言うならそうしましょう!」と持ち直した。この切り替えの早さは、流石王宮術士長、と言ったところか。いや、もう元らしいけど。
「……いや、術士長を辞めたことは分かりました、けど……。何故ここに……」
「僕の魔術を持ってすれば、あの海を飛んで超えることも不可能ではないのですよ」
魔法のホウキで空をぴゅーっと飛ぶ、みたいなことをやってのけたってこと……? 長いエンティパイア史上、あの海を生きて超えられたと言われている人間はいないというのに、本当に規格外だな、この人……。
いや、でも、よくわたしが生きてここにいるって分かったな?
そんなことを考えていると、「せっかくの再会ですから、どこかでお茶でもいたしませんか? 立ち話で済ませるには、少々長くなりそうですし」と言いながら、ウィルエールさんがわたしの手を取る。――アルベルトさんがつかんでいる方とは、逆の手を。
「横から入ってきたと思ったら何なんだ、あんた。俺とフィーのデートを邪魔するな」
「デ――」
「デート!?」
ウィルエールさんが何か言う前に、わたしが大きな声で聞き返してしまった。
これデートだったの!? てっきり、休日を取っていないわたしを連れ出してくれただけかと……。
「俺はそのつもりだったが。……フィーは違ったのか?」
少しうるんだような、泣きまねをするかのような表情をされ、事実を伝えるのがなんだか申し訳なくなった。
……いい感じのカフェでランチをして、手をつなぎながらウィンドウショッピング。客観的に見てもデートですね、これ……。




