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アルベルトが連れてきてくれたのは、オープン席が広い、おしゃれなカフェだった。
天気もいいし、オープン席側からは海も見えるしで、オープン席で食事をしたら、さぞ気分がいいだろう。
ただ――妙にカップル客が多い。
いや、おしゃれでいい景色が見えるオープン席が一杯あるカフェとか、デートには最適なのかもしれないけど。でも、これって、アルベルトとこの店に入ったら、周りから、わたしたちもカップルだと思われるんじゃ……。
「ほら、行こうぜ」
アルベルトは気にしていないのか、店のドアを開け、わたしを先に入れてくれる。さりげないエスコートが完璧だ。普段はこういうこと、やらないような言動しているくせに……。
妙な苛立ちとドキドキが混ざったような感情に胸を支配されながらも、わたしは店の中へと入る。……店内席にもやっぱりカップル客が多い――。
「フィー?」
――店内に入りながら、店の中の様子をうかがっていたけれど、わたしは思わず足を止めてしまった。どうにも体がこわばる。
「いらっしゃいませ。お客様、二名で――……、お客様?」
「……あれ、は……」
わたしの視線の先には、一組のカップル。いや――夫婦。一目見て、夫婦だと分かるのは、その一組の男女が、ウエディングドレスとタキシードと思わしき、白い衣装に身を包んでいたからだ。
客席に座る男女に新婦が話しかけ、新郎が持つ、百輪はありそうな大きな白いバラの花束から一本引き抜き、それを女性の方に渡している。
「……? ……ああ! あれは結婚式の催しですね。この辺りではよく行われる習わしで、式場で誓いを交わした新郎新婦この街を歩き回って、カップルの多い店に入り、ブーケの花を一輪プレゼントするんです。幸せのおすそ分け、ってことですね。冒険者の島と名高いランスベルヒ島ですが、エステローヒは結婚式でも有名なんです」
わたしたちを出迎えてくれた店員さんが、わたしに丁寧な説明をしてくれる。
珍しい光景を不思議に思った観光客だと勘違いされたのだろうか。言葉が通じなくても、これだけ新郎新婦にくぎ付けになっていれば、察するものがあるのだろう。
――でも、違う。そうじゃない。
心臓が、ばくばくと暴れる。先程までの、むかつくけど、どこか心地いい早鐘ではない。頭が痛い。すっと、血の気が遠のいていく感覚がする。ちゃんと自前の二足で立っているのに、浮遊感があって、代わりに現実感がない。
わたし、わたしは――。
「フィー?」
――アルベルトさんが、わたしを心配して声をかけてくれる。けれど、その名前には違和感があった。
それはこの体の持ち主の名前であって――わたしのものではない、と。




