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わたしは思わずイヤーカフをまじまじと見てしまう。チャームもついていて、デザイン性が高いイヤーカフだが、ただのイヤーカフではない。
今わたしがつけている、翻訳効果のあるイヤーカフ型の術具と同じものだ。
「……も、貰えませんわよ、こんな……」
この術具がいくらするのかは分からないが、少なくとも術具であって、その上デザインも凝っていたのなら、それなりの値段はするだろう。少なくとも今のわたしの手持ちでは、到底手が届かないに違いない。
「ちなみに俺のもある」
そう言ったアルベルトの手には、シンプルなデザインのイヤーカフ型の術具があった。
「前から少し不便だと思ったんだよな。フィーは備品だからって、この店内でしか使わないし。見かけたときに声かけて、仕事の進捗とか聞きたくてもできなかったりするだろ?」
「うっ……」
「っていうのは建前。本音としては、もっとフィーと自由に話がしたかったからさ。食事をよくマルシと一緒に取ってるけど、言葉が通じるなら俺だってかまわないわけだろ?」
確かに、マルシと一緒にご飯を食べることが多いのは、ひとえに彼に翻訳を頼んでいるからだ。術具なしだと、この辺りではパン屋でしか食料を調達することができないので、非常に不便なのである。
もう少しお金に余裕ができたら自分の術具を買って、それまでは勉強でなんとかしのごうと思っていたのに……。
「もう買っちまったし、フィーに貰ってもらえないなら、そのまま質屋行きだな。当然、買ったときよりは安く買い取られるだろうから、マイナスでしかない」
「な……あ、貴方が――」
勝手に買ったんでしょうが、と言いそうになってわたしは慌てて口をふさぐ。普通に逆ギレしそうになってしまった、危ないあぶない……。
わたしに責任転嫁をするような言い方ではあるが、ようはわたしが断りにくくするための方便だろう。そんな表情をアルベルトはしている。
「……はぁ、分かりましたわよ。ありがたく使わせていただきますわ」
わたしがやけになって言うと、「そうしてくれると嬉しい」とアルベルトが笑った。
その笑顔を見て、素直に受け取る可愛げがあったほうが、トゥーリカみたいに愛されるコツなのかしら、と一瞬考えてしまい、その思考にイラッとしてしまった。
……良くない、よくない。
どうにも沸点が低いの、何ともならないなあ。
わたしは気持ちを切り替え、さっきまでつけていたイヤーカフを外し、たった今アルベルトからもらったイヤーカフに付け替える。
「似合ってる」
わたしが何か言う前に、アルベルトが笑顔で感想を言ってくる。
その様子がなんだか手慣れている気がして、またイラッと来てしまい、「それはどうも、嬉しい言葉ですわ」と返した声音が、ちょっと低いものとなってしまうのだった。




