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わたしがこちらに来て二か月少しが経った。修理店を始めてから、丁度二か月くらいだろうか。
今日も今日とて、せっせと術具に魔力を込めていたのだが――。
「なあ、フィー。俺さ、フィーがこっちに来てから、ずっと術具に魔力を込めてるだけの生活をしている気がするんだが……気のせいか?」
「気のせいじゃありませんわね」
わたしはアルベルトの質問に答える。
術具に魔力を込め、修理するのがわたしの仕事。仕事中毒者というわけではないが、他にすることがないのだから仕方がない。
朝起きて、身支度をしてフィオディーナ修理店と使えない術具が置かれた倉庫の掃除、それから共用語の勉強をする。その後、昼食を食べてから術具の整備を始めて、夕方くらいには魔力が尽きるから、気分転換と運動不足解消の散歩を軽くしてから夕食を食べ、湯浴みをしてから寝る。
わたしの二か月はずっとこんな感じだ。
今日は倉庫に眠っていた術具たちの修理の終わりがようやく見えてきたので、サクッと終わらせたいところ。……まあ、魔力が少ないから、サクッと終わらないんだけど。
カウンター越しに頬杖をしながら、わたしを眺めていたアルベルトだったが、カウンターの内側に入ってきて、わたしの手を取り上げるようにつかむ。
「休もう」
強い一言だった。
「休むとおっしゃっても……何するんですのよ」
やることがないのに休んだってどうしようもないでしょうに。それに、そもそもエンティパイアにいた頃は、王子の婚約者としてふさわしくあるための教育をされていた傍らで、トゥーリカに勝つための独学をずっと行ってきた。一日のスケジュールが分刻みでカツカツだった頃に比べれば、今の一日は実にのんびりとしている。スローライフと言っても過言ではない。
「働きづめは良くないぞ? せっかくあの『死者の海』を超えられたんだ。他の国とか言ってみたいと思わないのか?」
「『死者の海』とはまた懐かしい言い回しをするんですのね」
『死者の海』とは、エンティパイアを囲う海のこと。ずっと昔、エンティパイアの人間が、海を越え、外を目指すことを諦めていなかった時代の呼び方で。
今はもうすっかり外との交流を断念してしまったから、わたしの祖父母世代でもそんな呼び方をしない。どこで知ったのよ、そんな言い方。マルシにでも教わったのかしら。
「……どこかに行ってみたいという感情がないわけではないですけれど……言葉が通じませんもの。旅行はもう少し先になりそうですわ」
多少は勉強をしているものの、翻訳効果のあるイヤーカフ型の術具なしでは会話がままならない。でも、これは借り物でありこのギルドの備品なのだから、遊びに行くからと外へは持ち出せないだろう。
「そこでこれだ」
そう言ってアルベルトは腰に付けたポーチから、小さな箱を取り出した。
わたしに押し付けるように渡してくるので、小箱とアルベルトへ、視線を何度か往復させる。
観念してそれを受け取り、箱を開けてみると――中には、小花が連なるようなデザインをしたイヤーカフが入っていた。




