09
「これは……魔力切れね。……これも、これも! どれもこれも故障じゃなくて魔力切れなだけですわよ! ちゃんと手入れしてらっしゃるの!?」
もう一人分の記憶が増え、幾分か意識が明瞭になって落ち着きを得たとはいえ、わたし自身、沸点が低い性格はあまり変わらないようだ。何か栄養が足りていないのか、ちょっとしたことにイラッと来て、それを我慢できないままに口から怒鳴り声が出てしまう。もっと抑えなきゃ、と思うのは、大抵口から暴言が出た後である。
埃っぽい冒険者ギルドの倉庫の中で、かっかと怒りながら、わたしは適当に投げ捨てられたようにしまい込まれた術具たちを見ていく。
「修理に時間がかかるはずですわよ! どこも壊れてないんだもの!」
あるはずのない故障の原因の追究だけでも時間がかかっていそうだ。
怒られているマルシは、困ったように頭をかくだけ。
「ここ、魔術に詳しい人間がいないからさ。強い奴には従う、っていう掟が一番に来る辺りで分かると思うんだけど……脳筋しかいなくて」
そう言うマルシは、グルルリアへ食品を卸しに行く商人。転移に少し複雑な術具を使い、たとえ調子が悪くても新しく買う余裕がないから自分で修理しているところを見られて、術具に詳しいと勘違いされたらしい。
自分の扱う術具以外はさっぱりなのに、冒険者ギルドの術具修理を押し付けられ、ほとほと困っていたのだとか。
「術具っていうのは、魔力を込めて、初めて使えるようになるんですの。魔術が誰にでも発動できるって言ったって、使用回数が決まってるんですのよ。その術具に込められた魔力がなくなれば、使えなくなりますわ」
「へー」
感心しているけれど、どこか他人事のようにマルシが相槌をうつ。……さては、この人も覚える気がなさそうね?
「……ここ、術士はいらっしゃらないの? どうやってこの術具たちはここにたどり着いたんですのよ」
「うーん、一応、転移術士はいるけどね。でも、彼らは自分の仕事以外をしたがらないから。ここらへんの術具は、全部、外からの輸入かダンジョンの副産物」
転移術士という職だけで充分稼げる。だから面倒くさい仕事はなるべく引き受けたくない、というのがここの転移術士たちの考えなのだろうか。
「……術士の代わりに術具メンテナンスを受け付けたら、仕事になるかしら」
わたしは顎に指を添えながら、少し考える。ここの倉庫に置かれている術具たちはわたしでもメンテナンスができそうな、一般的に広く普及しているメジャーな術具ばかりだ。魔力を込め、多少直すことくらいならできる。
専門的なものは無理でも、ここにしまい込まれているものの半数以上が直せるなら仕事になるとは思う。あまりにも供給がないので、わたし程度の技術力でも問題なさそう。ブルーオーシャンが過ぎる。
「それはいい考え! そういう人がいると助かるよ~!」
よほど押し付けられたのが堪えていたのだろうか。にこにことマルシが賛同してくれた。
まあ、確かに、自分の専門外のことを頼まれてもね。彼は商人だもの。
――……ん?
そこでわたしは一つの違和感に気が付く。




