5|クロ
どしん、どしん。
大きな足音のぬしが、木々のあいだからすがたを見せました。
大きなくまのような体に、からすのような黒い羽。
「きゃっ」
あおいは、思わず声を上げて、ヌールの後ろにかくれました。
でもヌールは、あおいの手をぎゅっとにぎると、まっすぐその生きものを見つめました。
「きみは、だあれ?」
生きものは、うれしそうに目を細めました。
「ぼくはクロ。黒いからクロ。あおいのことを、さがしていたんだ」
あおいは、こわごわとヌールの後ろから、顔をのぞかせました。
「わたしを? どうして?」
「ぼくたち、自分と同じ色の子どものねがいごとをたくさんかなえて、大人になるんだ」
「同じ色?」
クロはこくんとうなずきました。
「そうさ。ぼくのなかまは、みーんな、ずうっと前に大人になったよ。でもぼくは、何百年も、子どものまんま」
あおいは、目を丸くしました。
「何百年も?」
「だって、このせかいに、黒い子が、一人もいなかったんだもの」
あおいは、町で見た、いろいろな色のかみや目を思い出しました。
黒いかみと目は、あおいのほかに一人もいませんでした。
クロは、うれしそうにあおいを見つめました。
「やっと会えた。あおいのねがいごとを、なんでもかなえるよ」
あおいは、目をかがやかせました。
そして、ヌールと顔を見合わせます。
「ねえヌール、何をおねがいしよう」
「そうだなあ……」
二人はしばらく考えて、それから声をそろえて言いました。
「すなのおしろの中に、入ってみたい!」
クロは、にっこりわらいました。
「じゃあ、まほうのことばを言って」
「まほうのことば?」
あおいには、何のことか分かりません。
すると、クロが言いました。
「水たまりのむこうで、あおいが歌っていたじゃない」
あおいは、あっと思い出しました。
そして、いつもの歌を口ずさみます。
「くーろ、くーろ、かなえてちょうだい♪ すなのおしろに、入れるようにしてちょうだい♪」
「ヤッラー!」
クロのかけ声と同時に、すなのおしろが、むくむくと大きくなっていきました。
まども、とうも、あおいたちよりずっと大きくなって――
気がつくと、三人は、本当のおしろの中に立っていました。
「わあ、本当におしろだ!」
すなのつぶでできた、かべも、ゆかも、ちょっとざらざらしています。
「ぼくたちが作ったおしろだね」
ヌールが、うれしそうに、かべをなでました。
「うん! わたしたちのおしろ!」
三人は、自分たちで作ったおしろの中を、たんけんするように、かけ回りました。




