ホワイトチョコで作ったエッグケーキ【神】
神々に夜を告げる役割を持つ天使─ライラは真っ白なクロークを身に着け、クロークと同色の翼を広げながら空中散歩を楽しんでいた。時折マントがなびき、裏地が見えるのだがその裏地はまるで漆黒の夜空とその空に瞬く星のような金刺繍が施されていた。とても気持ちの良い空だと思ったライラは、自宅で本を読むのもいいけど、なんだか心がそうではないと言っているのような気がして思い切って外へ出てみたら、なんとも心地の良い気候に思わず胸が弾んだ。
「ああ。気持ちに素直になってよかったわ」
くすくすと笑いながら空中散歩を楽しんでいると、とある大きな町の上空でホバリングをしたライラ。何かが気になったのか高度を下げてよく見てみると、町の子供たちが可愛らしいウサギの耳をつけながら遊んでいるのが見えた。
「あら。もうそんな季節なのね」
町はイースターというイベントで大盛り上がりだった。あっちではエッグハント、こっちでは大人たちがイースターにちなんだお菓子や食事を楽しんでいた。
「せっかくだし、わたしもまぜてもらおうかしら」
町で遊んでいる子供たちがちょっぴり羨ましくなったライラはゆっくり降下し、音もなく着地。そして、子供たちに一緒に参加してもいいか尋ねると、子供たちは迷わずに首を縦に動かしてくれた。
「あら。嬉しいわ。たくさん遊びましょうね」
こうしてライラは子供たちと一緒に芝迷路の中に隠されたイースターエッグハントを楽しんだ。上空からみた芝迷路はとっても簡単に見えたのだが、いざ地上に降りて中に入るのとでは雲泥の差だった。
「あら? ここは……さっき来た道よね? あらら?? おかしいわね?? えーっと……」
ぐるぐると同じ道を回ったり、逆走を繰り返しながらなんとか出口にたどり着いたライラの顔はほっとした様子だった。
「よかったわ。なんとか出口にたどり着けたわ。今度はもっと早く出口にたどり着いてみせるわ!」
イースターエッグを集めながらゴールへ向かうというルールの下、何度か遊んだあとはイースターエッグの配置を変えてみたりして遊んでいくと、空はあっという間にオレンジ色に染まっていった。
「あ……そろそろママのところに帰らないと」
「あたしも……お姉ちゃん。今日は遊んでくれてありがとね」
「たのしかったよ!」
子供たちからお礼の言葉を受け取ったライラは感激のあまり、目を潤ませた。そして子供たちの目の高さに合わせ一人ひとり頭を撫でながらお礼を言うと子供たちと別れた。
「たっぷり休んでね。また、明日という日が訪れますように」
最後の一人が見えなくなるまで見送ったあと、ライラはすっかり静まり返った町を名残惜しそうに見つめながら地を蹴った。やがて小さくなっていく芝迷路を見たライラはあのとき、素直になれた自分に礼を言った。
その日の夜。ライラはお気に入りのもこももルームウェアに着替え、ふわふわのクッションに体を預けていた。今日も一日、素敵だったなぁと天井を仰いでいると夜を司る天使は大きなあくびを一つ。
「ちょっとはしゃぎすぎたかしら?」
普段、あんなにはしゃぐことなんてないのに今日に限ってはつい夢中になって遊んでしまったのは、きっと子供たちと一緒だったからなのかなと思い、ライラはクッションから体を起こしキッチンへと向かった。慣れた手つきで何かを作り戻ってきたとき、手にはやや大きめのマグカップが握られていた。そしてそのマグカップからとろけてしまいそうな甘い香りが漂っていた。
「ちょっと甘めにしすぎたかしら? でも、今日はこのくらいがちょうどいいかもしれないわ」
エッグノック(カスタード風ホットドリンク)を作ったライラは、ふわふわの泡に包まれた液体を一口含むと、口の周りにホイップの髭を生やしながらその甘さに思わず頬を緩めた。
「新しい明日を迎えるために、まずはゆっくり眠らないとね。夜はそうやって陰ながら人々をサポートしているのよ」
まったりこっくりとしたエッグノックに酔いしれながら、ライラはふと窓の外を見た。すると、夜空にはこれまた見事な満月が浮かんでいた。
「あら。イースターバニーが月に帰る時間かしら? うふふ」
極上の飲み物に極上の月。これ以上ない贅沢に心をときめかせながらライラは今という夜を楽しんだ。やがて空っぽになったマグカップをシンクに置き、眠る支度を済ませ大きなふわふわベッドに潜り込んだライラは仄かに香る太陽の香りに鼻をくすぐられた。
「真っ暗な夜が明けると、新しい明日が始まるの。わたしの大好きな瞬間よ」
また新しい朝を迎えるため、ライラはゆっくりと瞳を閉じた。明日は一体どんな素敵な出来事があるのか期待に胸躍らせながら。




