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パティシエ シュクレのスイーツコレクション  作者: 冬厳@主夫ロニア
おすすめセット20 ちょっぴりお菓子な? すいーつわーるど(8bitエイプリルストーリー)
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ソーダとイチゴのソフトキャンディ【竜】X

 とある競技場内にて、チーム対抗の陣取り合戦が行われいた。集まった参加者の皆が屈強な人たちの中、一人だけ物静かに参加している少女がいた。名前はフィーロ。人々の想いによって生まれた存在。あどけない笑みを浮かべているその表情とは裏腹に、足元に装着された機械の足に誰しもが驚いていた。竜人のような佇まいだが、概念体であり生物ではないということは参加者全員に伝えていたはずなのだが……やはりそう簡単に納得はしてくれなかったようだ。

「さ、これから大会が始まるけど、皆の力を信じれば絶対に優勝できるよ。安心して」

 チームの手をぎゅっと握りながら優しく言うフィーロに、チーム全体の士気が高まっていった。これならやれる、きっと勝ってみせると意気込むチームメイトを見たフィーロはなんだか嬉しい気持ちになり、彼らの背後から「一緒に頑張ろうね」と小さくエールを送った。


「さーて、間もなく試合が始まるわけだが。簡単にルールの説明をしておこうか。お互いの陣地には旗が立ってる。その旗を相手チームが取れば勝ち。とってもシンプルだろ? それか、制限時間までに参加人数が多かったチームの勝ちだ。戦線離脱や、戦闘不能になった場合はすぐに退場してもらうからそのつもりで。あとは好きに戦っていいからな。んじゃ、説明はここまでで試合を始めようか」

 少し気怠そうな司会者が説明をしている間、フィーロは自分の胸に手を当て「大丈夫」と何度も言い聞かせた。皆と一緒に練習したことをそのままできれば、きっと勝てると信じている。たとえ相手が毎年優勝しているチームであろうと……。

「各チーム、準備はいいかー? そんんじゃー、スタート!」

 電子音が競技場内に響き渡るのと同時に、観客席から大きな声援が飛んだ。その声援の先はもちろん、フィーロ……ではなく、毎年優勝しているチームに向けてだった。

「なんだよ……なんだか落ち着かないな」

「気にしないで。今は目の前に集中しないと」

 フィーロの傍を並走していたチームメイトが不安の声を漏らすと、フィーロはすかさずそのマイナスな思考を打ち消した。

「大丈夫。自信を持って。あなたの力が必要な時なの。作戦通りに……ね」

「は……はい。やってみます」

 少し自信なさそうに俯いたチームメイトに作戦実行を伝えると、フィーロは木々が生い茂るフィールドの中を軽快に飛んで行った。正確には木々の間を軽やかに飛んで移動している。ひょいひょいと木々を伝ってあっという間に敵陣の中へと潜入したフィーロは無防備な選手を見つけ、音もなく降り気絶させた。

「まずは一人。よし、いけるわ」

 意識を失った選手は大会運営によって運び出されていっている中、フィーロはまた木々の間を飛んで移動した。次も同じように仕留めようとしたのだが、今度はうまく仕留めることができず時間がかかってしまった。

「諦めないわ。仕留めるときに仕留めておかないと……!」

 何度か攻防が続いたのち、先に集中力が切れたのは敵陣の方だった。その隙を逃がさなかったフィーロはすぐさま飛びつき相手を気絶させた。

「これで二人目。順調ね」

 軽く髪を整え、次に狙う敵陣を考えるフィーロ。大きな画面にはチームメイトと敵陣が戦っている状況が映し出されていて、それを見たフィーロは自分のいる位置から左程離れていない場所だとわかるとすぐさま援護しようと地を蹴った。

「思いついたら即実行!」

 今はチームメイトの数を減らさずに進んでいきたいという思いから、フィーロは呼吸を乱さずにチームメイトが戦っている場所へ到着した。状況を確認し、一対一であることを再度確認したフィーロはゆっくりとそして素早く敵陣の背後へと周り気絶させた。

「大丈夫?」

「ああ……フィーロさん。ありがとうございます。おかげで助かりました」

「いいのよ。さ、呼吸を整えたら次へ進むわよ」

「はい!」

 今年初参加のフィーロ達のチームは、入場時こそ冷ややかな視線だったが今となっては逆転しフィーロ達を応援する声の方が多かった。その声援に力をもらったフィーロは確実に勝ちに行くため、また地を蹴り敵将がいる場所へと向かった。



                    ─不屈(トラブル)



 何度も敵陣の罠に引っ掛かりそうになるも、着実に敵陣を追い詰めているフィーロチーム。会場の熱気も最高潮に達している中、フィーロはその声に嬉しさを感じつつも思考は冷静だった。ここで焦ってはいけないと何度も自分を落ち着かせ、そしてチームメイトを落ち着かせながら先へ進んでいくとフィーロの隣で小さな爆発が起きた。

「ぎゃあ!」

「……っ! 大丈夫?」

「だ……だいじょう……ぶ……です……」

 閃光弾の罠に引っ掛かり、一時的に視界が塞がれている状態だった。特に目立った被害がなかったことに安心したフィーロなのだが、この後視界が戻ったチームメイトはぼそりと呟いた。

「ぼくたち……本当に勝てるのでしょうか」

 たった一発の閃光弾でここまで士気がガタ落ちするものとは思っていなかったフィーロは、チームメイトに声をかけ、励ました。大丈夫、きっと勝てるからと何度も声を送るもそのチームメイトの目からは既に戦意が喪失していた。

「そんな……この後まだ罠があるかもしれないのに。突っ込めっていうんですか? ぼくは……こわいです」

「……大丈夫。落ち着いて」

 フィーロは優しく声をかけ続けていたのだが、そのチームメイトの目に再び戦意が灯ることはなかった。しまいには泣き言を言い始め、その場に屈してしまった。そんなチームメイトを見たフィーロはつかつかとチームメイトに歩み寄り胸倉を掴んだ。

「ひっ」

 少女のように見えるが力は大人顔負けなのは、練習中何度も見てきたはずなのにそれすらもすっかり頭から抜けてしまったチームメイトは情けない声をあげた。

「諦めなければきっと勝利は掴めるわ。それが例え0.0000001%だとしても……ゼロじゃない。だから、諦めないで」

 氷のように冷たい視線、言葉。フィーロはチームメイトを励ましたつもりなのだが、現実はチームメイトの戦意を確実に消しにかかっていただけだった。次第にぐずりだしたチームメイトを下ろし、フィーロは背を向け駆けた。それはチームを勝利に導くためであり、チームメイトを見捨てたわけではない。そのことはチームメイトもわかっているはずなのだが……チームメイトは涙が止まらなかった。


 結果は勝利。これまで数多くの戦いを経た者でされ、フィーロのトリッキーな動きについていくことができず、気絶させられた。こうして無事に勝利を手に入れることができ、フィーロはほくほく顔で控室に戻るとそこには真逆の顔をしたチームメイトが座っていた。

「みんな。お疲れさま。無事に勝つことができたわ」

 空気を読んでいるのか否か、フィーロの発言についに一人のチームメイトが声を荒げた。

「あんた、周りの被害については無関心なんだな。ただ勝てばいいだけってか?」

「ど……どういう??」

「それはおれも思ってた。あんたはおれたちがどんだけ傷つこうが気にしてなかったもんな。現に、おれたちと合流してからも、あんたは敵リーダーと応戦しておれたちがやられていてもお構いなしだったもんな」

「そ……そんなことは……」

「ないって言いきれるか? あんたは実力はあるかもしれない。だが、もう少し周りを見るということもした方がいい。でないと、いずれあんた一人だけになるぜ?」

 次々に控室を出ていくチームメイト。一人取り残されてしまったフィーロは何がなんだか整理が追い付いていなかった。だんだんと状況を理解し始めたとき、フィーロの目には涙が浮かんでいた。

「わたしは……そんなつもり……ないのに……ごめんなさい……」

 ただ勝利を掴もうとしただけ。なのだが、その勝利を掴むまでに数多くの犠牲が伴っていることに気が付くのが遅かったフィーロは、一人控室で泣き崩れていた。

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