七変化のこんぺいとう【神】
夕暮れ時の空を楽し気に見ている少女がいた。ふわふわのドレープスカートに艶やかな新緑の髪。ダージリンティーのような琥珀色の瞳の先にはうっすらと瞬いている星を見ていた。
彼女の名前はセーラ。毎朝一回、占いの結果からあれやこれや話を想像することが大好きで、時間があればこうして空を見上げ、星々の声に耳を傾けることが好きなおっとりした星詠みの少女である。セーラの隣にはこれまた大きな天体観測用の機器が置かれ、こちこちと時を刻みながら静寂に音色を添えていた。
「星の調べ 夢の香り 風の口笛 夜のゆりかご 朝の息吹」
思ったことを口にしたセーラ。
星の調べってどんな音がするのかな? きらきら? さらさら? それともしゃんしゃん?
夢の香りってどんなかおりなのかな? シトラス? バニラ? それともフローラル?
風の口笛ってどんな音がするのかな? ぴーぴー? ぴゅーぴゅー? それともすーすー?
夜のゆりかごってどんな感じなのかな? ゆっくりゆれるのかな? おおきく? それともちいさく?
朝の息吹ってどんな心地なのかな? 優しい風? それとも少しあばれんぼう?
自分が思ったことに対して想像をしてみるセーラ。そこから色々な発想が生まれ、またそこから色々な可能性の枝が伸びていくのがなんだか楽しくて、セーラはきらきらと瞬く星々を見つめ、問いかけた。
「お星さまお星さま。いつか、わたしにも夢の香りがどんなものなのかが分かる日きますか?
しばらく星々をじっと見つめ、何か答えが届いたのかセーラは小さく頷きくすくすと笑った。
「そうですか。では、その日を楽しみにしておきます。それまでは、わたしが思う夢の香りというものをたくさん想像してみましょう。それもまた楽しいですからね」
夢の香りが気になったセーラは天体観測用の機器を抱えながら自宅へと入っていった。
コチ コチ コチ コチ
「わたしにはコチコチと聞こえますが……あなたにはどんな風に聞こえるのかしら? 今度、お茶でも飲みながらお話してみたいですわ」
それは誰に向けられた言葉なのかはわからないが、セーラはこの言葉を理解してくれる人が近くにいると信じているようだ。その証拠に、純粋な闇空に浮かぶ星のように煌めきをたたえた瞳がこちらをまっすぐに見ていた。




