甘々南瓜のふわふわ饅頭【神】
「おっ料理、おっ料理~♪」
鼻歌を歌いながら包丁を動かす少女。まな板の上には新鮮な野菜が置かれ、少女の鮮やかな包丁さばきであっという間に均等に切られていく。切られた野菜はぐつぐつ煮える鍋の中へと入れられ湯通しが行われた。
「今日は寒いので、野菜たっぷりの豚汁なんかいいですねぇ」
鍋に入れらていたのは大振りの大根だった。下茹でをした大根をザルにあけ、今度は適度に脂がのった豚肉を薄く引いた油の上に並べた。油が跳ねる音が聞こえると、今度は菜箸で軽く痛めながら既に下処理を終えた野菜たちを硬い順に入れていった。にんじん、大根、それとアクを除いたれんこん。一通り野菜に火が通った頃を見計らい、油揚げやお豆腐を適当な大きさに千切りながら入れていく。全体的に油が馴染んでしんなりしてきたところに少女特製のだしを投入。それから水を加え、くつくつと煮ていく。自家製の味噌をたっぷりと溶き入れ、最後に隠し味のショウガをほんの少し入れた。
「うん。あとはもう少ししたら完成です」
続いて少女は残った大根の葉っぱを細かく切り、ごま油を敷いた鉄鍋の上へぱっと広げた。手早く水分を飛ばし、煎りごまとちりめんじゃこを加え更に混ぜていく。水分が飛んだ頃を見計らい、小皿に盛り粗熱をとっていく。
「大根の葉っぱのしっとりふりかけの完成♪ これがご飯にあうんやわぁ」
「ウケモチー! ごはんの準備もできたでー」
「おおきにー! こっちももうすぐできあがるよー」
ウケモチと呼ばれた少女は、普段自らの手で料理をしないのだが今日はなんだか自分の手で料理がしたいという気持ちが高まり、こうして台所に立って調理をしていた。秋も深まる今、旬のものが多いこの季節でしか味わえないご馳走を友人と一緒に卓を囲みたかったのだ。こうして出来上がったウケモチ特製の豚汁と大根の葉っぱのふりかけと、友人が作った炊き立てのご飯と紅鮭のバターホイル焼きを卓の上に並べると、ウケモチは目を輝かせながら眺めていた。
「このホイル焼きいうんの、美味しそうやなぁ」
「食べる直前にお醤油を垂らすのがポイントよ。それも少量」
そういうと友人は醤油差しを手に取り、ほんの数滴紅鮭の上にぽたぽたと垂らした。バターの香りと醤油が混ざり合い食卓は既に美味しい匂いに満たされていた。更には紅鮭の上にのっているレモンの爽やかな香りも交じりウケモチの顔はもう既にとろけそうだった。
「冷めないうちに早くいただきましょ」
「そうですね。いただきましょ」
おひつから山盛りのごはんを盛りつけた茶碗を受け取り、ウケモチはもう我慢できずに紅鮭のホイル焼きに手を伸ばした。ふっくらジューシーな身だけでも幸せを感じられる程に美味だった。付け合わせのキノコも紅鮭の旨味とバター醤油の味を吸っていてこれまた幸せを感じる味だった。声にならない歓喜の声をあげるウケモチに、友人はウケモチが作った大根の葉のふりかけをごはんの上にたっぷりとかけ、零さないよう口に運んだ。瞬間、ごま油の風味とちりめんじゃこの風味が口いっぱいに広がり、また大根の葉の適度なシャキシャキ感がなんとも心地よかった。お互いがお互いの料理を口いっぱいに頬張り、幸せを感じている中二人は同時に豚汁を口にした。豚肉の旨味と野菜の旨味が溶け合い、ショウガのぴりりとした風味が絶妙にマッチし、二人は至福の溜息を吐いた。ショウガの効果でだんだんと体がぽかぽかしてきた二人は、これからの季節にぴったりな食材は何かを話し合い始めた。
「山菜、栗、柿、サツマイモ。それに、みかんとかもええね」
「カボチャ、ナス、それに新米……まだまだありそうやわぁ」
言い出したらきりがない位、秋の味覚を言い合っているとおひつに入っていた山盛りのごはんはあっという間に空っぽになっていた。
「あら。もうないなってしもたか」
「ほんまや。美味しかったから気づかず食べてもうたね」
ないものはしょうがないと二人は割り切り、熱い緑茶で一息つくとウケモチが目を輝かせながら友人に提案した。
「なぁなぁ。明日、美味しい食材を探しに行かへん?」
「え? あ、明日? なんや急やな。でもまぁ、時間あるしええよ」
「やったぁ! そんでな、明日は秋の味覚をうんと使った晩御飯にしよ思うてん」
「あぁ……それ、ええな。よっしゃ! 明日食材探しに行こか」
「行こ行こ! あ、お弁当も持って行こか」
「あ、ええね。遠足気分も味わえそうやわ」
「やろやろ? あーもう楽しみやわぁ。秋の味覚を探すってだけでもワクワクなんに」
「それじゃあ、明日の準備して今日は早めに休もうな」
「そやね。じゃ、後片付けはうちやるわ。お弁当の準備進めてもろてええか?」
「任せとき!」
役割分担を決め、明日の準備を着々と進めていく二人の目はワクワクとドキドキで輝いていた。




