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ジュレグレープの八仙花ゼリー【魔】

 大きな大きな花畑で鼻歌を歌いながら花を摘んでいる少女がいた。薄めたピーチティーのショートヘアーにぱっちりした瞳、頬は健康的な桃色に映えていた。髪色と同じ色のペザントブラウスにふっくらとしたプリーツスカートを純白のソックスと合わせ、濃い紅茶色の靴を履いている。

「できた♪」

 少女は嬉しそうに笑みながらできたばかりの花冠を自分の頭にそっと載せた。花冠とは少し違うかもしれないが、植物の茎を上手く絡ませちょうど頭の両サイドに満開の花を編んだもの。わかりやすくいえば、花のカチューシャのようなものだろうか。少女は満足そうに何度も頷きながら花のカチューシャを揺らしながら歩き始めた。

 少女の名前はコロネ。名のない場所で今日も草花を愛で、慈しみ、そしてここへ迷い込んだ者を植物の餌にするため罠を張る少女の姿をした悪魔である。今こうして草花と戯れているのも、コロネだから大丈夫なもので、生身の人間がその草花に触れようものなら有毒な草花の中で眠るように一生終える。もしくは、蔦や蔓に囚われ悲惨な一生を終えるかのどちらかだった。そのどちらも数多く目にしてきたコロネは、今日も誰かここへこないか今か今かと待ち望んでいる。


 ある日、コロネが花を摘んでいると今までに見たことのない花が咲いていた。

「? なんだろうこのお花」

 コロネが触れると、その花はまるで挨拶をするかのように小さく揺れ小さな花弁を散らした。この辺り……いや、コロネが住んでいるこの辺りでは見たことのない花弁が集まった花がなぜ咲いているのか、コロネはさっぱりだったが見たことのないお花にコロネはとても嬉しそうだった。

「とっても可愛いお花♪」

 茎はしっかりとしてて花は紫色や青色、はたまた赤色と様々な顔を見せていた。

「同じ場所に咲いているのにお花の色が違う……なんでだろうなんでだろう」

 コロネの興味は尽きることなかった。こっちでは青、隣では赤、はたまた赤と青が混じっていたりとそれだけでコロネの胸は小さく確実に弾んでいた。その不思議な花に魅了されたコロネはさっそく花のカチューシャを作ろうと手を伸ばしたのだが、ふと手が止まった。

「……」

 もし、ここでこの花を手折ってしまって二度と咲かなかったら……そんな考えが頭を過りコロネは躊躇した。ここで咲いてくれたことにはきっと意味があるものなのだとコロネは自身にそう言い聞かせ、手折るのをやめじっくりと見つめた。

「あなたはとっても可愛くて、とってもおしゃれさんなのね♪」

 くすくすと笑いながらその花と対話をしていると、どこからかここへ迷い込んだ人たちの気配を感じた。まだ無害な草木の上を歩いてくる音に気が付いたコロネは顔をあげ、気配がする方に意識を集中させた。

「……」

 聞こえるのは風が通り抜ける音だけの広場に、コロネはゆっくりと立ち上がりいつも通り誘惑をして罠にはめようとしたところ、さっきまでお話をしてた花がまた小さく揺れた。

「……うん。今日は……そうする♪」

 コロネは花から何かを感じたのか、ここへ迷い込んだ者たちを出口へ導くよう草木たちに働きかけると、自分はまたそのお花との会話を楽しもうと地面に頬杖をついた。

「今日は、あなたとお話していたい気分♪」

 そういってコロネは小さく揺れる花とのお話を大切にした。小さな小さなお友達ができたような気がしたコロネは、いつも以上に笑いながらお花に語り掛けていた。


 その花の花言葉は「心変わり」。

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