はっととろける天使のりんごカヌレ【神】
神の世界の一角にて、天使たちが集う場所がある。そこには「秩序」を重んじている場所であり、それが規則であるとばかりに誰もかれもがその規則に乗っ取り生活している。その規則のためなら、どんな相手であろうと救いという名の浄化で滅してしまう。
手に孔雀のような扇を持った青年─ジュアンもその一人。アクアブルーのショートヘアーに純白の翼を背中から生やし、天使にしては珍しい異国の装いをしている。翼と同じ色の衣に藍色の履物は、彼が異国へ向かった際、一目惚れして購入したものだとか。その珍しさにジュアンは虜となり、今ジュアンが手にしている扇もその異国で一目惚れし、購入したもの。扇を手に取った瞬間、ジュアンの力が呼応するかのように扇が白く輝きジュアンが持っている浄化の力が更に増幅させた。これにより、ジュアンの元々の指名である魔を浄化するというものに一層の磨きがかかった。これ以降、ジュアンは時折異国に赴いては新作の衣や履物がないかを確認するという楽しみができた。
「今日もいい天気ですね」
心地良い快晴の下、ジュアンは大きく伸び春の気配を含んだ新鮮な空気を胸いっぱい吸い込んだ。ふうと長めに息を吐き、自分の気持ちを整えるとふと目につく存在があった。それは、少し離れた神殿にて漂っていて、特に力のないものであればただのマナかで済むのだが、ジュアンは違った。
「これは……救ってあげなければいけませんね」
小走りでその漂っているものに近づくと、ジュアンは腰から扇を広げて優しく仰いだ。すると、さっきまで漂っていたものは扇の風によってどこかへ吹き飛ばされたかのように消えていった。
「うん。浄化完了。これで救うことができましたね」
ジュアンは悪魔や魔族、霊などは生まれ持った罪を背負っている憐れな存在だと認識しており、見つけ次第問答無用で助けたいという気持ちを全面的に出しながら浄化を行う。これが唯一の方法だと信じて疑わない純粋な思いから行っているのだが……これがただ遊びに来ている霊や待ち合わせをしていたというだけなのにジュアンの手によって浄化されたものも少なくない。なので、ひょんなことがきっかけで意気投合した天使と悪魔がいて、ジュアンに見つかってしまったら最後という案件も報告されている。それについても、ジュアンはただ純粋に救いたかったとだけと報告書に記入し提出。何度か呼び出しを受け、話を聞いてもジュアンは真っすぐな瞳でそう答えるので上官もそれ以上は言うことができず、了承してしまう。
話が終わり、ジュアンが退室した部屋にこっそりと入ってくる浄化された霊の知り合いたちは口を揃えて「彼は迷惑だ」と上官に伝えるとその場からすぐに消えた。確かにこうも報告が多いとさすがにと思っている上官も、彼が持っている浄化の力を他の方向へ生かせないか山積みの報告を前に頭を抱えていた。




