ちょっぴり焦げたプリン風味ラングドシャ【神】
寒さがひと段落し、もう少しで春が訪れようとしているそんな季節。人間の目には見えないところでは、小さな小さな住人が春を迎える準備をしていた。
「えーっと。これはこっちで、これは……ああ、あっちだった」
たんぽぽ色の髪色の妖精─ライネッタは春に咲く花たちを起こしながら次の季節に目を出す花たちのお世話をしていた。ライネッタが住んでいるこの辺り一帯すべて一人で管理をしているというのだから、もしこの話を人間が聞いたらきっと驚くだろう。ライネッタももし、人間とお話ができたらどんなお話をしようかと胸を躍らせていた。あれを話そうか、それともこれを話そうかと考えながら、いつか人間とお話ができる話題をできるだけいっぱいストックしていると、どこからか吹いた風がライネッタのふわふわの髪を撫でた。その風に気が付き、辺りを見ますと予定よりも作業が進んでいることにはっとなった。
「んーっと、だいぶ落ち着いたわね。ふぅ」
気持ち的に余裕が生まれたライネッタは自作の椅子に腰かけながら、雲一つない空を仰いだ。もうすぐ春がやってくるのかと思うと、なんだかわくわくが止まらないライネッタは「あっ!」と声をあげた。急いで自分の家へと飛んで行き、折り畳みの机とティーセットを持ち出した。机を展開し、お気に入りのチェック柄のクロスを広げ、お気に入りのティーセットを並べた。
「こんなに天気がいいんだもの。お茶だってしたくなるわ」
うきうき気分でお茶の準備をしていると、ライネッタの楽しそうな気分を感じた友達がライネッタに声をかけた。
「ごきげんよう。ライネッタ」
「あら、こんにちは。ブルーム」
ライネッタのお姉さんのような存在のブルームは花の妖精で、手には植物の蔦が巻き付いた杖を持ちヒマワリと同じ色の髪のてっぺんには花冠をしている。若草色のドレスのは色とりどりの花の蕾がつけられていて、まるで四季を表しているかのよう。彼女の役目は蕾に活力を与え、花を咲かせるという役目を担っている。咲かせたたくさんの花々を見て、たくさんの人を笑顔にし、その生まれた明るい気持ちが彼女により強い力を与える。春には彼女の力が最大限に発揮できる季節とあって、彼女は張り切っていた。
「今年もたくさんの花を咲かせる予定なのだけど、ちょっと一息入れようとしたとき、あなたの嬉しそうな声が聞こえてね。よかったらご一緒してもいいかしら?」
「もちろん! 今、お茶を淹れているからもう少し待っててね」
「今日はどんなお茶かしら? 楽しみだわ」
ブルームは席につき、クロスの上に置かれたマーガレットのクッキーを口にしながら待っていると香ばしい香りのお茶が運ばれてきた。この香りは……。
「今日はたんぽぽの紅茶かしら?」
「ぴんぽーん! だいせーかい!」
「あら嬉しいわ。では、いただきます」
ティーカップを受け取ったブルームは一口含むと、たんぽぽの爽やかな香りと香味にふうと息を吐いた。
「わたしも紅茶をよく淹れるのだけど、こうも上手くはできないわ。とっても美味しいわ。今度、レシピを教わりたいわ」
「えへへ。そういってくれると嬉しいな。レシピは帰るときまでに準備しておくね」
「ありがとう。それにしても……今日はとっても素敵な天気ね」
「うん。もうすぐ春がくるね」
「そうね。私たちのお仕事の季節ね」
「えへへ。張り切ってお仕事しちゃう!」
「もし、ライネッタだけでは間に合いそうになかったらいつでも呼んでね。すぐに駆け付けるわ」
そういうと、ブルームは紫色の蕾をライネッタに手渡した。
「これは?」
「これは私と直接お話ができるお花なの。もし、困ったことがあったらこれで呼んでちょうだい」
「あ、ありがとう! ブルーム、大好き!」
「あらあら。どうしたのかしら。今日は何かあったのかしら?」
「ううん。何もないけど、なんだか嬉しい!」
「うふふ。私もなんだか嬉しいわ」
こうして妖精二人のお茶会は夕方まで続いた。その間、ライネッタとブルームはお互いの話を聞きながら、さくさくのクッキーを片手に笑い声が途絶えなかった。
二人の笑い声に誘われたのか、ライネッタが頑張って起こしていた花の蕾が小さく花開いた。




