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ぱちぱちシュガーマフィン ビターチョコを添えて【竜】

 ここは竜の住まう世界のとある小さな集落。つい最近まで暖かさと冷たさの両方を楽しめていたというのに、いつの間に入れ替わったのかすっかり寒さが勝った季節へと突入していた。その集落の人たちは冷たい風で振り落とされてしまった落ち葉を掃除しながら、次の季節のイベントの準備を進めていた。

 集落の真ん中には目印として、それなりに大きな木がたっていた。まずはその周りを集中的に掃除をした後、頭から小さな角を生やした竜人が鼻歌を歌いながら飾り付けを楽しんでいた。間もなくやってくる季節のイベント─クリスマスの準備で集落の人たちはわくわくしつつも忙しい日々を過ごしていた。ある人は集落の人が温まれるような食事の準備を、また別の人は楽しんでもらえるよう簡単なゲームを考えたりと各々がイベントに向けて準備を進めていた。

 そんな中、集落の中で一人自宅の屋根の上で寝っ転がっている少年がいた。黄金色の髪は短く切りそろえられ、その間からは黒い角が二本顔を覗かせていた。目つきは刃物のように鋭くどこか自信に満ちているような印象を受ける。そして彼の周りを時折小さな稲光のようなものが走ると、集落の人は何事かと光っている方を何度も振り向く。いくら彼の発しているものとわかっていても、この集落周辺は雷が非常に多くそれと見間違えてしまうほどだった。その度に「もう。ニンブスったら紛らわしいことしないでおくれ」とからかわれる。

 ニンブスと呼ばれた少年は、生まれつき特異体質で体に電気をため込む性質があるとのことだった。元々戦うことには抵抗がない性格だったため、何か有事があればその電気を用いた戦術で敵を圧倒していた。ほかにも剣の扱いにも長けているため、それらを組み合わせた戦い方は集落のみんなを安心させている。そんなニンブスは絶賛サボり中だ。というのも、クリスマスとかそういうイベントよりも体を動かしていたい性分もあってか、こういう平和なイベントには全く興味を示さなかった。

「おいニンブス。空ばっかり眺めてないで手伝ってくれ」

「あ? やなこった」

 口を開いてものの二秒で否定が入ると、助けてほしいと言った竜人は口を尖らせながら「そんなにすぐ断らなくてもいいじゃないか」と不貞腐れながら渋々持ち場へと戻っていくと、それを後目にニンブスは空を漂う白い雲をただ茫然と眺めていた。


 飾り付けがひと段落したころ、空はすっかり暗くなり吐く息が白く見えるほどに冷えていた。竜人たちは防寒具を身にまといながらきれいに飾り付けた大きな木の前を囲っていた。

「よーし。今から点灯式をするぞー! せーのっ!」


 カチッ


 クリスマスイベントの主催者がスイッチを押しても木は光らず、代わりに沈黙が広がった。

「あ、あれぇ。おかしいな。もう一回」


 カチッ


 何度スイッチをいじっても結果は同じだった。やがて困り果てた主催者はその場に膝を落とし、途方に暮れていたそのときだった。誰かが立っている気配を感じた主催者は顔をあげると、そこには不適に笑っているニンブスが立っていた。

「に……ニンブス?」

「これ、触ってみていい?」

「あ、ああ」

 許可を取る前にニンブスは電飾に手を伸ばすと、ニンブスから放たれている稲光が電飾の中へ通じ色鮮やかな光がぱっと広がった。

「おお……光った」

「へへっ。そういうことか。なら、オレに任せな」

 そういうとニンブスは電飾を掴み、加減しながら力を注ぎいれた。力の入れ具合で強く光ったり弱く光ったりと調節の感覚がわかったニンブスは、周りのみんなが楽しそうにしている姿を見て楽しくなってきたのか、高らかに笑った。

「こりゃ悪くねぇ。おう。ほかにも光らせてぇものがあったら持ってこい」

 そういうと、竜人たちはいくつか光らない電飾をニンブスの前に置くと、(念のため)数歩下がった。足元に置かれた動物を模した電飾、植物を模した電飾を見たニンブスは意識を集中させ、手からだけでなく空気を伝いその電飾のみに電気を走らせた。するとちかちかと点滅しながら電飾たちは色彩を取り戻し、寒空の中光輝きだした。自身の色を思い出した動物は今にも駆け出しそうな躍動感を、植物は今にも若芽が香ってきそうな生命力を煌々と照らし出していた。

「すごーい。こんなこともできるんだ」

「あったりめぇだろ? オレを誰だと思ってるんだ?」

 戦うこと以外で、この電気が役にたったことがなかったニンブス。近付けば相手を痺れさせてしまうし、かといってあまり疎遠もよくない。その間がよくわからなくなったニンブスがとった行動は、突き放すことだった。そうすれば、相手はきっとあきらめてくれるだろうと。そうすれば相手を傷つけることもないし、お互いにいいことだらけではないかと。

 しかし、この時は違った。自分が嫌だと思っていたことで、こんなにもみんなを楽しませることができることがわかったニンブスの顔には自然な笑顔が戻っていた。

(へへ。こういうのも悪くねぇな)

 こうして寒空の下、クリスマスパーティは始まりを告げた。これからイベントが終わる日まで、ニンブスの笑顔はこの電飾よりも光り輝くことだろう。

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