チョコチョコパラダイス♪しっとりガトーショコラ【竜】
竜が多く住まう土地─竜の大地にて大きな採掘場がある。ここには多くの化石が眠っているという話が多く、今日もここで太古の生物の化石を掘り当てたいという人で賑わっていた。ある者は個人で、またある者はギルドからの依頼で来た者と様々だった。
「今日はこの辺で採掘してみるかな」
がっちりとした体格の男性がツルハシを大きく振りかぶり、大きな岩に突き立てた。ガギンという音をたてながら少しずつ削れていく岩を見た男性は「何が出るかな」とまるで子供のように呟いていた。やがて岩の半分が削れた頃、男性は小休止のためにツルハシを振るのを止め持ってきた水を一口含んでいると背後から何やら物音がした。それは小さな地震のような音だった。何事かと男性が振り返ると、そこには何もなくさっきと同じ半分削れた岩があっただけだった。おかしいなと思いながらまた水を含もうと水筒を傾けると、またしても同じ地震のような音が聞こえた。
「なんだ……さすがに何かあるだろ?」
男性が水筒を適当に置き、音のした方へと歩くと音はぴたりと止んでいた。それから男性はしばらく何もしないでいると、確かに男性の目の前にある岩─半分まで削った岩から物音が発生していた。そしてその物音は感覚が短くなっていき、しまいには震えだした。
「な……ななななんだ?!」
あまりの異様な光景に男性は訳が分からなくなり、素っ頓狂な声をあげた。その素っ頓狂な声が止んですぐ、大きな岩のてっぺんからヒビが入ってしばらくして中から少女が現れた。その少女は眠たそうに眼をこすりながら辺りを見回すと、「うーん」と言いながら大きく伸びをした。
「お……お前は……一体何者だ?」
男性が少女に問うと、少女は「私?」とばかりに首をかしげると少し時間が経ってから自身を「フォシィ」と名乗った。ブルーベリーヨーグルトのようなロングヘアーにそこから生えるスカイブルーの角、汚れが一つもない純白のフリルをたっぷりと使用したドレス、腰には同じ色をしたコルセットを巻いていた。そしてコルセットの背後から見える尾は見た目の可愛らしさからは想像もできない程黒く、また巨大だった。太ももまであるロングブーツもまた純白で統一されており、どこかのお嬢様かと見間違えてしまうほどだった。しかし、あの大きな岩の中から出てきたのだ。それは違うのかもしれないと男性は頭を振った。そうだと実感したのは、フォシィと名乗った少女に手に握られている得物だった。まるで骨を削って作った鎌のような無骨なデザインではあるが、切っ先から溢れる何とも言えない禍々しさを放っていた。
「ここ、どこ? ……どのくらい眠っていたのかな……??」
首を傾げながらフォシィは呟いた。だけど、その問に答えられる者は誰もいなかった。しばらく沈黙が続いたあと、「ま、いっか」といいながらゆっくりと立ち上がり目の前に広がる光景に目を輝かさせていた。
「わぁ……フォシィの知らない世界がいっぱい」
「フォシィ……? だっけ? あんた、いったい何者なんだ??」
「? うーん……頭がぼーってしてよく思い出せないなぁ。人間さん? でもね、全部壊さなきゃってことは覚えてるの」
「え?」
満面の笑顔で言うフォシィの言葉に戸惑った男性の首に何かが突き立った。それは、さっきフォシィが持っていた骨でできた鎌のようなものだった。その切っ先が男性の首に深々と突き刺さると、男性は口をぱくぱくさせながらその場に倒れた。
「人間さん。壊れちゃった? もっと、もっとフォシィは壊すの。ただそれだけ」
倒れた男性に目もくれず、フォシィは次なる獲物を求め地を蹴った。フォシィが得物を振りかざす度に、フォシィが獲物を仕留める度に、フォシィの感情が高ぶる度にフォシィは段々と目が覚めてきたのか眠たげだった目がぱっちりと見開いていた。
「ねぇ、もっと壊していい? 人間さん?」
その問いに答えるものは全て言葉を発することができない状態であるため、辺りにはただ静寂だけが広がっていた。それを肯定とみなしたのか、フォシィはまた明るい元気な笑顔で「そうだよね」と一言呟くと、真っ赤な夕焼けに照らされながら次の獲物を破壊するため、歩き始めた。その顔は遊びに行ってもいいよと言われた子供のような無邪気さが漂っていた。




