↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/101

30話 清掃おじさん、招集される

 水野さんと二人で出かけてから三日後。

 俺は博多ダンジョン環境サービスの事務所で、午後から使う道具の確認をしていた。


「主任、スクレーパーの替え刃、これで最後です」

「本当?倉庫になかった?」

「昨日、高橋が箱ごと補充したって言ってたんですけどね」


 佐々木が首を傾げる。

 ⋯⋯嫌な予感がした。


「高橋」

「はい!」

「昨日補充した替え刃、どこに置いた?」

「倉庫です!」

「どこ?」

「入口入って右の棚です!」

「そこ防護マスクの棚だぞ」

「⋯⋯あ」


 高橋が固まった。


「お前、まさか⋯⋯」

「すみません!棚間違えました!」

「⋯⋯はぁ。取ってこい」

「はい!」


 高橋が倉庫へ走っていく。

 その後ろ姿を見送りながら、山下が笑った。


「元気ですねぇ」

「元気なのはいいんだけどな。道具の場所間違えるのは勘弁してほしい」

「でも最近、結構使えるようになってきたじゃないですか」

「最初に比べたらな」


 入社してまだ一年目。

 失敗するのも仕事のうちだ。


 俺だって若い頃は散々先輩に迷惑をかけた。


 19年もやっていれば、その辺は気長に考えられるようになる。


「そういえば主任」

「ん?」

「この前、水野夏希とデートしたんですって?」

「⋯⋯何で知ってるの?」

「高橋が言ってました」


 倉庫の奥から何かが落ちる音がした。


「高橋!」

「すみません!」


 あいつ、マジでどこから仕入れてんだよ。何?俺のストーカー?

 大きな大きな溜息を吐き、山下に説明する。


「デートじゃないよ。ただ飯食ってドライブしただけ」

「それを世間ではデートって言うんじゃないですか?」

「違うって。水野さんもそんなつもりないから」

「本人に聞いたんです?」

「聞くわけないだろ。自意識過剰すぎてキモいって思われるだろ⋯⋯」


 41歳のおじさんが24歳の女性に「この前のあれってデートだったの?」などと確認する姿を想像しただけで背筋が凍る。もはや逮捕一歩手前だ。


 山下は何か言いたそうだったが、俺は無視して午後の予定表を確認した。


 今日の現場は博多第三ダンジョン。15階までの定期清掃だ。

 博多第一ダンジョンはレッドドラゴンの一件以来、一部区画がまだ調査対象になっている。その影響もあって、最近は第三ダンジョンへ入ることが増えていた。


「主任、ありました!」


 高橋が替え刃の箱を抱えて戻ってくる。


「よし。じゃあ積み込むぞ」

「はい!」


 いつもの仕事だ。

 少なくとも、その時の俺はそう思っていた。


◆


 異変が起きたのは、俺たちが会社を出る少し前だった。

 事務所内に突然、警報音が鳴り響いた。


「⋯⋯⋯何だ?」


 会社の業務端末に、探索者協会から緊急通知が届いている。

 山下がすぐに画面を確認した。


「博多第三ダンジョン、緊急閉鎖⋯⋯?」

「第三?」


 今日行く予定だった場所だ。


 通知には、現在ダンジョン内にいる清掃業者や一般探索者は協会職員の指示に従って退避するよう書かれていた。


「俺たちは?」

「入場禁止です。清掃作業も全部中止」

「そりゃそうか」


 何が起きたのかまでは書かれていない。

 ただ、ダンジョンが緊急閉鎖されること自体は珍しいものの、前例がないわけではない。


 大規模な崩落、異常な魔素濃度、強力なモンスターの発見。——理由はいくつか考えられる。


「せっかく準備したのになぁ」


 高橋が残念そうに言う。


「事故に巻き込まれたりしなかっただけ良いだろ」

「それはそうですけど」

「部長に確認して、別の現場に回れるか聞こう」


 そう言ったところで、俺のスマートフォンが鳴った。


 画面に表示された名前を見て、少し驚く。

 ——神崎修司。


「もしもし」

『田中さん、今どこですか?』


 いつもの神崎さんより、声が硬い。


「会社です。ちょうど博多第三に行くところだったんですけど、緊急閉鎖の通知が来て」

『まだ入ってないんですね。良かった』

「何かあったんですか?」

『俺も詳しくは分かりません。ただ、探協から緊急招集が来ました』


 A級探索者に緊急招集。

 それだけで、単なる設備トラブルではないことが分かる。


『VIVIDにも招集がかかってます。他にも福岡のA級とB級上位が集められてるようです』

「そ、そんな事が?」

『かなり大きい何かが起きてます』


 神崎さんがそう言った直後、事務所の固定電話が鳴った。

 山下が出る。


「はい、博多ダンジョン環境サービスです。⋯⋯はい。田中ですか?いますけど」


 山下が俺を見る。


「主任、福岡探協からです」

「⋯⋯え?福岡探協から、俺に?」

「はい」


 めちゃくちゃ嫌な予感しかしない。


「神崎さん、探協から会社にも電話来ました」

『やっぱりですか』

「何で俺まで⋯⋯」

『分かってるでしょう』


 分かりたくない。


『田中さん』

「はい」

『たぶん、今回は俺たちだけじゃ対処できない可能性があります』


 その言葉で、さすがに気持ちが切り替わった。


「分かりました。俺も協会に確認します」

『お願いします。現地で』

「はい」


 神崎さんからの電話を切り、山下から受話器を受け取った。


評価、ブックマーク、感想など励みになります。

モチベーションになりますので、よろしくお願いします。


また、作者Xにて更新通知を行っております。

新作の通知なども行いますので、ぜひフォローお願いします。

@MokaSufure

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。