↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/105

25話 清掃おじさん、猫と戦う

 目的の27階層に到着すると、神崎さんが俺を静止した。


「いますね」

「ブラッドパンサーですか?」

「⋯⋯はい。⋯⋯いや、これは——」

「え?」

「2体います」

「2体ですか?」

「ブラッドパンサーと⋯⋯もう1体います」


 神崎さんの表情が変わる。


「魔素反応が大きいですね⋯⋯」

「どれくらいですか?」

「A級はありますね⋯⋯」

「⋯⋯」


 A級モンスターがここに⋯⋯。博多第一ダンジョンでドラゴンが出た時と言い、春日第二ダンジョンで崩落が起きた時と言い、最近どうなっているんだ?


「田中さん」

「はい」

「予定変更です」


 神崎さんが剣を抜く。


「一旦俺が様子を見ます」

「手伝わなくていいんですか?」

「まず俺が確認します。行けそうだったら呼ぶので、それまで田中さんは下がっててください」

「分かりました」


 素直に下がる。俺は神崎さんを信用している。


 魔素を目に込め、暗い通路の奥を見る。

 その先に見えたのは、赤い二つの目。ブラッドパンサーだ。

 そして、その奥から——さらに大きな何かが現れた。


「⋯⋯でっっっか」


 見た印象は狼だ。体長4メートルはあるだろうか。灰色の毛に被われている巨大な狼だ。


「グレイヴウルフ——A級下位です。————『領域』」


 神崎さんが神妙な雰囲気を出す。俺も緊張で唾を飲み込んだ。


 神崎さんのスキル発動とほぼ同時に、ブラッドパンサーが勢いよく飛び出した。

 ハイオークとは比較にならない速度だが、神崎さんは慌てることなく横へ躱し、そのまますれ違いざまに剣を振るう。


 しかし、ブラッドパンサーも空中で器用に身体を捻り、神崎さんの攻撃を紙一重で回避した。


「おお——!」


 今度は向こうも速い。

 神崎さんとブラッドパンサーが何度も交差する。その隙を狙ってグレイヴウルフが突っ込む。


「!」


 神崎さんが横へ飛ぶ。

 巨大な爪が床を砕いた。それでも、神崎さんは冷静だった。


「田中さん」

「はい」

「ブラッドパンサー、やってみます?」

「⋯⋯俺が?」

「はい」


 神崎さんがグレイヴウルフから目を離さず言う。


「俺はこっちをやります」

「大丈夫なんですか?」

「誰に言ってます?」

「⋯⋯」


 そうだった。


「孤高の王——ソロ・キングですもんね!」

「だからそれやめてください」


 余裕ありそうだな。


「分かりました」


 前へ出ると、ブラッドパンサーが俺を見る。


「危険だと思ったら俺が止めます」

「はい」

「好きにやってみてください」

「好きにって⋯⋯」


 ブラッドパンサーが消えた。


「速っ!」


 一瞬で横に来たブラッドパンサーの爪が来る。


「うおっ!」


 ギリギリで回避する。危なかった——!

 そう思ったのも束の間、ブラッドパンサーがまた来る。

 

 目に魔素を込めていたため、動きは見えた。反撃のため、拳を構える。右から爪で攻撃してきたタイミングに合わせて——殴る!

 やった!と思ったが——そこにブラッドパンサーがいなかった。


「え?」

「田中さん!」


 後ろから神崎さんの声が聞こえた。

 すかさず振り向くと、いつの間にか後ろに回り込んできたブラッドパンサーの爪が目の前まで迫っていた。細かいことは考えず、本能に任せて力いっぱい後ろに跳んで逃げる。


 オーガを殴り飛ばした時のように地面が割れ、俺は数十メートル後ろまで一気に逃げていた。

 心臓がどくんどくんと脈打っているのが分かる。


「あ、危なかった——!」


 レッドドラゴンとは全然違う。あいつは大きくて殴りやすかった。

 オーガ達とも違う。あいつらも大きかったし、何より鈍重だった。


 こいつは——。


「速くて軽やかで当たらない⋯⋯!」


 息を整えている間に、ブラッドパンサーが距離を詰める。視界に入ったブラッドパンサーが壁を蹴った瞬間、今度は俺の左側から一気に距離を詰めてきた。反射的に拳を振るったものの、当たる直前で身を翻されてしまう。


「くそっ、速いな⋯⋯!」

 

 レッドドラゴンとはまるで勝手が違う。あいつは巨大だったから、向かってきたところを殴ればそれで済んだ。しかし、こいつはいくら力があっても、そもそも拳を当てさせてくれない。


 試しに、先日習ったことを実践しながらやってみる。

 ——しかし、当たらない当たらない。身体能力と目に魔素を込めることで、ブラッドパンサーの攻撃を見てから避けることはできる。しかし、こちらの攻撃も見てから振るため当たらないのだ。


「⋯⋯」


 くそっ⋯⋯!考えれば考えるほど身体が固くなる。


「田中さん!」

「はい!」


 グレイヴウルフの攻撃を避けながら、神崎さんが叫ぶ。


「探索者みたいに戦わなくていい!」

「え?」

「あなたの動きで!」


 俺の——動き。その言葉を反芻しているうちに、ブラッドパンサーが来る。


「⋯⋯」


 俺の動き。つまり、俺の身体に染み付いた動作。

 それは——狭い通路で動く時。重量物を運ぶ時。血で滑る床を歩く時。瓦礫を持ち上げる時。進行方向にいる作業員などにぶつからないように動く時。邪魔にならないように危険なものを避ける時。

 そんな時々の動作。——つまり、それは。

評価、ブックマーク、感想など励みになります。

モチベーションになりますので、よろしくお願いします。


また、作者Xにて更新通知を行っております。

新作の通知なども行いますので、ぜひフォローお願いします。

@MokaSufure

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。