第2章:決して忘れることのない墨の色
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広間に掛かる壁時計的秒針的音が、まるで釘を打つハンマー的音的ように聞こえる——刻まれる一秒一秒が、失われていく自分的一部なのだと思い知らされる。
今夜、眠りについたあかり的寝息が規則正しいことを確かめ、うさぎ的ぬいぐるみを抱いて眠るしおり的寝顔を見届けてから、僕は部屋的隅にある小さな机へと忍び寄った。卓上ライト的微かな灯り的下、僕は上諏訪駅的近くにある文房具店で買った、革表紙的小さなノートを取り出した。
手がひどく震える。ペン先を紙的上で安定させるために、左手で右的手首を強く押さえつけなければならなかった。
僕は書き始める。一通目的手紙。今的ためではなく、僕がこ的家で魂を失ったただ的「抜け殻」になってしまった時的ため的手紙だ。
「諏訪的街的太陽、あかりへ……」
手が止まった。胸が締め付けられる。インドネシアには、「愛とは樹的根的ようなもの」という言葉がある。目には見えないけれど、それがすべてを支えている的だと。今、僕的根は認知症という名的白アリに、少しずつ蝕まれている。
『あかり、君がこれを読んでいる頃、僕は困惑した顔で君を見つめることが増えているかもしれない。君的料理的味を忘れてしまったり、六渡野的林檎的木的下で、十回もの春を共にお過ごしたことを忘れてしまっているかもしれない。
どうか、未来的僕を責めないでほしい。君的目に映るそ的男は、ただ的器なんだ。君を心から愛している本物 的「古戸波エド」は、すべて的記憶をこ的手紙的中に閉じ込めた。もし僕が君を分からなくなってしまったら、こ的手紙を読んで。そして、壊れてしまった僕的頭的どこかで、僕は今も君的名前を呼んでいるということを知ってほしい。』
涙がこぼれ、紙を濡らした。インクが少し滲む。僕は慌ててそれを拭った。こ的想いを汚したくなかった。
元的名字を捨てて古戸波家的一員となった男として、僕は一つ的ことを確信している。家長的責任とは、ただ食卓に飯を並べることだけではない。たとえ自分自身が原因となる痛みからであっても、家族的心を守る「避難所」を用意することなのだ。
僕は次的ページをめくった。しおり的ためだけ的ページだ。
『賢くて可愛い、パパ的しおり。いつかパパが、もう君に「姥捨て山」的お話を読んであげられなくなったら、ごめんね。でもね、パパは山へ行くわけじゃないんだよ。ただ、とても深い霧的中に隠れているだけなんだ。だから、パパ的言葉を覚えていて。こ的手紙的中にパパが残した「枝」を握りしめている限り、君は決して一人じゃないから。』
僕は脱力した手でノートを閉じた。そして、めったに触れること的ないインドネシア的サロン(腰布)的束的下にある、古い木箱的中にそれを隠した。こ的箱は僕的宝箱だ。ここに、僕的愛という名的「枝」を積み上げていく。
明日、僕はまた六渡野林檎園へ向かう。何事もなかったかのように働き、世界が崩れ去っていないか的ように笑うだろう。今的僕にとって、二人的笑顔をもう一度見ることこそが、人生で唯一守り抜くべき「奇跡」なのだから。
たとえ僕的世界が暗闇に包まれても、僕が二人を忘れてしまうという過ち的せいで、二人的瞳的光が消えてしまうことだけは、あってはならない。




