ACT9 ”エンシャンツ”
蒼太が上層階へとエレベーターに乗り込んだ高層ビルは、オーナーが不老不死にのめり込んでいる某大富豪であった。莫大な資産と権力を所有し傍若無人に等しい程に自分の意見を通してきたが、「老い」だけは自由にできなかった。そして「老い」がもたらすであろう「死」も……。
そんな彼に、とある「組織」が近づいてきた。彼らは、「自分達が不死に近い不老長寿の技術を持っている」と告げ、自分達に従うように命令してきたのであった。
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月と地球の成分が似通っている事から、古代に隕石が地球に衝突し分裂した破片が月との説があるらしい。
水は生命の源。月には水がある事は既に確認されており、地球からなのか、地球と同様に彗星等なんらかが飛来した折に外宇宙からもたらされた可能性も考えられるらしい……。
……外宇宙から飛来したのは彗星だけではなかった。
地球人類より遥かに進化した文明と生命体が超古代より存在していた。人類なるものが存在しなかった遥かな昔に、たまたま地球を見つけて、遊び場の別荘地のように来訪していたのであった。彼らは人型よりは海洋生物に近い形態をしていた。
彼らは自分達を「エンシャント(古代物)」の複数形てある「エンシャンツ」と名乗っていた。
人類の祖先とも言われる、シーラカンスやハイギョ類が海中から陸上に上がる際に、4本のヒレが足のように変化し、後に四肢動物になり、そこから人類を含めて多様な生物に分岐したと考えられている説があるらしいが、分岐の中にはあえて海中に留まり、人類とは別の進化を遂げたものが人知れずいたのであった。
(半魚人と思われる種族はここに属しているのでは)
というのが、霊視の折の雑談時での斑目桂や蒼太の推理である。
最近の研究で知られてきているが紫外線は皮膚遺伝子にダメージをもたらし、光老化をもたらすと言われている。
あるいは寿命や老化を司る寿命の回数券「テロメア」と言われるものにも関わるのかもしれない……。深海で暮らす半魚人の方が人類より長寿の可能性がある……。
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”不老不死”の細胞レベルの研究は、人類の間で1950年代からヒーラー細胞という無限に分裂する細胞を使って続けられていた……。♦︎
♦︎参照『若返りの科学』(医学博士 藤田紘一郎)
ヒーラー細胞はいつまでも老化することなく成長し、栄養と酵素があって居住空間さえあれば分裂を繰り返す。ヒーラー細胞がいつまでも老化することなく成長し続けるのは、テロメラーゼという酵素によるそうだ。
テロメラーゼはテロメアに新しい塩基配合を追加して、正常な細胞分裂で失われる染色体の末端部分を補充する働きを持つ酵素なのです。テロメラーゼは淡水湖や小川に棲息する原虫であるテトラヒメナという微小繊毛虫から最初に発見された。ヒトではほとんどがん細胞だけがそれをつくり、正常な体細胞にはないことがわかっているそうである……。
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もしかしたら、半魚人は人類とは別の進化を遂げ、人類より遥かに高度な脳の進化を遂げた高IQもいるかもしれない……。
もしそうなら、その存在が、陸上を我が物顔で使用している人類に対して好意的であれば幸いである……。
実は半魚人かなり長寿なのであった。
深海で紫外線の悪影響はなくて光老化が少なく長寿気味な上に、エンシャンツが長寿遺伝子やテロメアに加工を加える知識技術を有しており、更に長寿にしたのであった。
エンシャンツと半魚人達の利害と目標は一致していた。
自分達が住みやすいように、地球を昔のような環境に戻す事である。「水の惑星」と呼ばれる由縁の超古代の地球環境に……。
大富豪は死を逃れられ、不老不死が得られるなら、現在の地球環境が激変しても構わないと思ったのであった。そして大富豪と同じ、「死の恐怖」に怯える他の権力者や大富豪達も……。




