ACT8 ビル上層階
エレベーターが最上層階に着いて、扉が開いた。
何か敵でも待ち構えているかとドキドキしたが、エントランスホールは人影もなく無人であった。蒼太は何となくコソコソと、高そうな石材が敷き詰められた廊下を進んでいった。
進んだ先の方は吹き抜けになっていて、下層階の方では観光客らしい人達がおのぼりさん的な行動をしているのが見えた。まるで蟻が蠢いているような気分に襲われた。
最上階層を更に進んで行くと、ガラス張りの巨大な会議室が見えた。黒フードの者達やスーツ姿の人間達が集まっているのが見えた。
蒼太は自分が不法侵入になるのか不安を感じ、バレないようにと死角になる位置に陣取って観察する事にした。
遠目にも仕立ての良さそうな服を身につけ、それなりの地位にあるような威厳を備えた中高年の者達の集まりに見える。
ただ、その中にたまに若そうな者もまじっていた。
(何の会議だろう?)
会議と言えば、前世療法CDで出て来た、ピラミッドに似た物の前で、異形の者達が人類の行く末会議をしていた光景が思い出されるが。
「あの人⁉︎……」
遠目だから断言はできないが、ガラス張りの会議室の中に、この前会った霊能者の斑目桂によく似た男がいたような気がする……。
蒼太は胸の中に湧き起こってくる不安を打ち消すように、
(ここ芸能プロダクション事務所で、営業会議をしているのかしら……)
などと思った。
(黒フードは、黒子のリサーチ調査員とか……)
そう自分に言い聞かせて、蒼太はとりあえずもう帰る事にしたのであった。静かにエントランスホールに戻り、エレベーターで一階に辿り着くとホッとしたのであった。
このビルは全域が見えない監視カメラで見張られ、蒼太の侵入もすでに知られていた事にも気づかず……。
* * *
ガラス張りの会議室にいた斑目桂は、隣に座っている赤目の、陽にあたった事があまりないような抜けるように青白い肌の青年と視線を交わしていた。
「このビルの最上階層に入れるのは、監視カメラのシステムに『仲間』と認証される者だけなのだが」
「あの少年は僕の霊視を受けに来た事がありますね。僕にお任せください」
赤目の青年に対して、斑目桂は恭しく対応したのであった。




