ACT4 霊視
斑目桃子と出会ってから数日後の休日。
霊能者&霊感芸人をしている従兄弟を紹介してもらえるという事で、斑目桃子の実家の斑神社で会うことになった。斑神社の祭神は蛇神なそうだ。芸人をしている従兄弟の事を黙っているのと引き換えに、斑目桃子の友人という紹介で、無料で霊視してもらえる流れとなった。
緑豊かな参道を抜けて、祈祷場の待合室に用意されている小上がりの畳が敷き詰められた場所で、霊能者『まだら』こと斑目桂は先に来て待っていた。
端正な美形で長身の大学生だ。芸能事務所に所属して自分を霊感芸人として売り出したくなるのも分からないでもない。濃い紫色のUVカットレンズを入れた眼鏡が独特な印象を醸し出していた。蛇神を祀る社家の血筋のせいか色白で、蛇っぽい雰囲気も漂っていた。
(これは会社勤めより芸能界目指して正解かも。オフィスで絶対浮くやつ……)
これが、水月蒼太の斑目桂への第一印象であった。
初対面の挨拶を終えると、「個人的な悩み事の相談なので」と、斑目桃子は一旦席を外してくれた。ついでにお茶を持って来てくれるそうだ。気がきいてありがたい。
桃子が席を外したので、相談事が言いやすくなった。
「最近、『お前のせいで人がいっぱい死んだんだ』とか『この人殺し!!』と責め立てる、全く心当たりのない音声が何処からか声が聞こえて、煩わしくて困っている」
とストレートに相談してみた。
斑目桂が濃紫色のレンズ越しに蒼太を見つめている。
蒼太は凝視されるのに落ち着かなげに、
(霊視でもしてるのかな? 前世療法とかシーラカンスはイタい奴と思われそうだから、とりま黙っておこう)
などと考えていた。
「……君を悩ます声は、現在の声ではないね」
斑目桂はしばらくして静かに告げた。更に、
「前世が影響している可能性が高い。シーラカンスのような海洋生物が君の後ろに視えるよ。本当にシーラカンスかは分からないが似ているのでシーラカンスと言うね」
「!!」
前世療法で見た事については言ってないのに、言い当てた斑目桂の霊視に、蒼太は絶句したのだった。
「人外が前世持ちはたまにいるよ。ただ君の場合は特殊ケースかも……」
「じゃ、あの責める変な声は、前世絡みなんですね。声を消すにはどうしたらいいですかね?」
蒼太は興奮気味に尋ねた。
ついでにちょっと恥ずかしかったが前世療法CDを使って見た光景も説明した。
「……君の場合は特殊ケースかもと言ったよね。前世の魂に加えて、おそらく現在の肉体が古い〈先祖返り〉を起こしている可能性がありそう……珍し過ぎてよく分からない、対処法」
斑目桂は首をかしげながら、そう告げた。
「先祖返り?」
「先祖返りは人類の先祖の力を使うシャーマニックな呪法と言われてらしいるが……人間は陸に上がって長いが、だから普通は前世と言えば人類の経験の中でになるのがほとんど。君の場合は、人類が海中から陸上に上がるより前まで遡った特殊な古い先祖返りなのかも?
生命が派生した時期まで遡った特殊な古い先祖返りなのでは?それが引き起こされるには何かきっかけがあったのでは。それが分かれば対処法も分かるかも……珍し過ぎるケースなので断言はできないけど」
前世の海洋生物の魂の影響と、あと先祖返り。
結局分からないことが増えただけな気がするが、「きっかけ」を知る為に、CD前世療法をまたしてみることを斑目桂に勧められて、蒼太の初めての霊視を受けた体験は幕を閉じたのであった。
「きっかけが何か分かったら対処法が分かるかも。その時も気軽に相談して」と斑目桂に言ってもらえ、SNSのアカウントを交換した。
(とりあえず言ってなかったシーラカンスを言い当てたし、詐欺師ではないらしい。あのお兄さん。見かけによらず結構良い人かも)
などと失礼な事を考えていたところに、お茶と茶菓子を載せたお盆を持って、桃子が戻ってきた。
大学生の斑目桂のキャンパスライフなど大学の事を聞いたりして、しばらく雑談をしたのであった。




