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ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに! リアルでは女の子達と配信はじめます  作者: グミ食べたい
第4章 吟遊詩人クエスト編

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第69話 1位

 クマサンの思いもよらぬ告白に、俺だけでなく、ミコトさんとメイも驚いた顔をしてクマサンを見つめた。


「デートに誘われてないってことは、昨日はイベントなしで普通に過ごしたのか?」

「いや、そういうわけじゃない。朝からキャサリンが部屋に押しかけてきたんだ」

「――――!? キャサリンが!?」


 クマサンだけイベントなしかと思いきや、逆にクマサンだけ特殊イベントだったのか?


「それでキャサリンは何をしに? 俺の時みたいに本心を話してくれたとか?」

「いや……怒られた」

「怒られたって、どういうこと?」

「人気順位が低すぎる、何をしているんだ、って」


 ああ、そういえばイングリッドは3位、カレンは8位、エルシーも9位と順調に順位を上げている。

 それに対してクマサンのウェンディは16位。まだ低迷していたっけ。


「それで、どうなったの?」

「午前中はキャサリンから鬼のような指導を受け、午後はキャサリンと路上ライブ。さらに夜にはキャサリンのコンサートに強引に出演させられた……」

「な、なるほど……」


 話を聞く限り、クマサンだけは選択肢なしの強制イベントだったようだ。

 一人だけキャサリンと会っていないことを気にしたのか、メイがまず反応する。


「もしかして、その結果、能力アップしたり、特技を覚えたりしたとか?」

「能力は上がったけど、特技は覚えてないな」


 その答えに、メイはどこかほっとした顔をした。


「じゃあ、応援技を覚えたりとかですか?」

「いや、それもない」


 ミコトさんの問いに、クマサンは首を振る。

 俺はしばし考え込む。


 これは、ウェンディの順位が低いことによる罰ゲームなのだろうか?


 ……いや、違う。


 キャサリンの本心を知る前なら、そう思ったかもしれない。

 でも今は違う。俺は彼女のことを理解している。

 キャサリンがウェンディの邪魔になるようなことは、絶対にやらない。


「クマサン、きっとそれは能力と知名度を上げるためのイベントだったんだよ。ウェンディの順位が低いから、キャサリンがそれを見かねて手助けに来てくれたに違いない。あの子はそういう女の子だからね」

「……なるほど、そういうことか。ショウからキャサリンのことを聞いた今なら、確かにそう思える」


 どうやら、みんな昨日のイベントで吟遊詩人総選挙に向けて大きな力を得ていたようだ。

 ……あれ? もしかして、俺だけ何もパワーアップしてなくないか?

 冷静になって考えると、急に焦りがこみ上げてきた。

 これで最終的にキャサリンに負けたりしたら、彼女に合わせる顔がないぞ……。


「おしゃべりはここまでだ。予想順位発表がきたぞ」


 メイの声で我に返る。気づけば目の前に「15日目終了時点の吟遊詩人総選挙予想順位」の文字が浮かんでいた。

 俺達は静かに順位発表を見守った。


 今回のそれぞれの順位は、

『10位 ウェンディ』

『6位 エルシー』

『5位 カレン』

『2位 イングリッド』

と、全員トップ10入りを果たした。

 ウェンディが大きく順位を上げたのは、俺が想像した通り、キャサリンとのイベントの影響があってのことだろう。

 きっと、面倒を見たキャサリンも喜んでいるに違いない。

 なお、1位は言うまでもなくキャサリンだった。


 翌16日目、俺はミコトさんとのジョイントライブを中音楽劇場で開催した。

 初めての中音楽劇場だったが、二人の知名度もあり客席は満席となった。


 そして19日目には、エルシー単独で中音楽劇場でライブを行うことになった。


 ステージに立ったエルシーは、一瞬だけ客席を見渡す。

 かつては人前に立つだけで緊張していた彼女だが、今は違った。

 最初の一音が響いた瞬間、劇場の空気が変わる。ざわめきが静まり、誰もがその歌声に耳を傾けていた。


 ――すごい。


 俺は思わず息を呑む。

 これが、本当にあのエルシーなのか。

 以前のエルシーとは明らかに違う。

 歌声にも演奏にも、観客を惹きつける力が宿っていた。


 ライブが終わる頃には、劇場は大きな拍手に包まれていた。

 エルシーは一人でも中音楽劇場を満席にするほどの成長を見せていた。


 彼女のステージを見ていて、俺の胸は熱くなる。

 特技も応援技も覚えられなかったが、エルシーは確実に強くなっている。


 一方、クマサンは相変わらず公園で子供達相手の無料パフォーマンスを続けながら、貴族達のパーティにも顔を出しているようだった。

 独自路線の戦い方だが、その貴族との繋がりは少し羨ましい。

 対して俺とエルシーは、貴族とのコネがなく、コネクションが要る大音楽劇場は、普通には使えない。例の無料チケットを使えば一度だけ可能だが、使いどころは、慎重に見極めたい。

 だけど、そんな大音楽劇場をすでに使える者がいた。

 メイのイングリッドだ。

 貴族達にもしっかり売り込み、確かなコネクションを築いていた。メイの動きを見ていると、貴族達だけでなく、裏社会とも繋がりを作っているようで、その手腕にはただ驚かされる。

 実際、メイのイングリッドは20日目に大音楽劇場で単独ライブを開催していた。

 いまだ中音楽劇場しか使えないエルシー。

 すでに大音楽劇場でライブを成功させているイングリッド。

 その差に、悔しさがこみ上げた。


 そして、20日目の夜。四回目の順位発表が行われた。


『7位 ウェンディ』

『5位 エルシー』

『3位 カレン』


 みんな確実に順位を上げていた。

 総選挙当日に向けて順調な伸びを見せ、ジョイントライブなどで協力してきた俺とミコトさんはグータッチを交わして互いの健闘をたたえ合った。

 だが、驚きはすぐにきた。


『2位 キャサリン』


 絶対王者だったキャサリンがその座からついに陥落したのだ。

 そしてすぐに新たな暫定王者の名が表示される。


『1位 イングリッド』


 20日目終了時点で、メイはついにトップに立った。


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