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ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに! リアルでは女の子達と配信はじめます  作者: グミ食べたい
第4章 吟遊詩人クエスト編

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第68話 それぞれのデートイベント

 翌15日目、俺達はまた応接室へと集まった。

 三回目の予想順位を確認するためだ。

 この五日間の努力が、順位にどう反映されるのかも気になる。

 だが、それ以上に昨日の「キャサリンイベント」のことが頭から離れなかった。

 あれは俺だけの特別イベントだったのか、それともみんなも遭遇していたのか。

 ゲームなら、全員に同時発生していてもおかしくはない。

 真実を知るには、聞いてみるしかない。


「みんな、昨日のイベントはどうだった?」


 俺は敢えて抽象的に聞いた。

 もしキャサリンのイベントが俺だけだった場合、こちらから情報を漏らすことになるからだ。


「デートイベントのことか?」


 すぐに反応してくれたのはメイだった。

 メイは昨日のイベントを「デートイベント」と捉えているのか。

 ……待てよ。昨日のアレを経験して、「デートイベント」と言うのか?

 むしろ、キャサリンと出会うための前振りだった気がするのだが……。

 もしかして、メイはキャサリンと出会っていないのか?


「そのデートはどうだった?」

「そんなの行くわけないだろ。イングリッドより上位にいるのは、あと二人。トップがもう見えてきてるのに、こんなところで無駄な時間は使っていられない。デートは断って、練習に専念したに決まっているだろ。おかげで、大幅に能力が上がったし、特技も覚えられた。ショウはどうせ鼻の下を伸ばしてエルシーとデートに行ってたんだろ? 悪いが、ますます差が広がったんじゃないのか?」


 前回の予想順位3位。俺達の中でトップを走っている余裕だろうか。メイは自分から昨日のことについて話してくれた。


 それにしても、あの甘い誘いを断ったのか……。

 もしかすると、メイの中身はゲームキャラ同様女性なのかもしれない。普通なら、あの誘いは断りづらい。

 しかし、デートを断ると能力が上がるとは想定外だ。

 昨日のイベントで、エルシーの能力は上がっていない。もし断るのが正解だったなら、メイとの差は、さらに開いたことになる。


「メイさん、あの誘いを断ったんですか!?」


 驚きの声を上げたのはミコトさんだった。

 その反応で、ミコトさんもまた同様にデートの誘いを受けていたことがわかった。

 どうやら、デートの誘いを受けるまでは共通のイベントで、そこでデートに行くかどうかで分岐するようだ。

 そして、今の言葉からすると、ミコトさんはデートに行く方を選んだようだ。


「なんだ、ミコトはデートに行ったのか?」

「当たり前です! カレンは大切な友達です! 誘われて行かないわけがないじゃないですか!」


 ふむ。俺と同じかと思ったけど、俺とミコトさんでは、ちょっとニュアンスが違うような気もする。彼女の場合、友情としての情が強いようだ。

 ならその流れに乗るのが利口というものだ。


「俺もミコトさんと同じで誘いには乗ったよ。仲を深めておくことも大事だと思ったからね」

「ですよね! さすがショウさん、わかってます!」


 良かった。下心があってデートの誘いに乗ったとは思われなかったようだ。

 ……いや、実際に下心はなかったんだよ! 本当だよ!


「なんだ、二人ともデートに行ったのかよ……。それで、そっちも能力アップしたり特技覚えたりしたのか?」

「それはないですけど……でも、応援技を覚えたんですよ」


 えっ、なにそれ?

 メイが驚いた顔をしていたが、それ以上に俺の方がびっくりしてミコトさんの方に顔を向けた。

 混乱している俺が何か言う前に、先にメイが口を開く。


「応援技だって? それはなんだ?」

「カレンとデートに行ったら、その途中でキャサリンに出会ったんです。でも、そこでキャサリンにひどいことを言われて、カレンがその場から飛び出してしまって……。私はすぐ追いかけて慰めて……。それで、デートの続きをすることになったんです。そしたら、カレンがパフォーマンスをする際、私が応援することでカレンの能力がアップする特別な技を覚えたんですよ!」


 なんと……。あそこでエルシーを追いかけていたら、デートイベントの続きができていたのか。しかも、バフ技まで習得できるとは……。

 もしかして、俺の選択は失敗だったのだろうか?


「ショウさんも、もちろん同じですよね?」


 ミコトさんは、当然のように同意を求めてきた。

 さて、困ったぞ。

 ここは頷いて、俺にも応援技とやらがあると思わせておく方が有利だろう。

 わざわざ手札がブタだと明かしては、勝てる可能性の戦いも負け戦になる。勝負においてブラフは大事だ。


「ああ、俺も――」


 言いかけて、ふとエルシーが走り去った後のキャサリンの表情が脳裏をよぎった。

 そうか、みんなはキャサリンの本心を知らないのか。そして、このままみんなの中では、キャサリンは嫌われ者としてこの世界で生きていく――そんなの、俺はいやだ!


「――いや、俺はそこでエルシーをすぐに追いかけなかった。キャサリンの話を聞いていたんだ」

「えっ、そうなんですか!?」


 ミコトさんが目を丸くして俺を見てくる。

 俺達にとって一番優先すべきは自分達がプロデュースする女の子だ。ミコトさんは、すぐにエルシーを追いかけなかった俺の行動に落胆したのかもしれない。

 ……これは、ミコトさんからの評価を下げることになってしまったかもしれないな。

 でも、しょうがない。これが俺って奴なんだから。


「ああ。キャサリンの辛そうな顔を見たら、放っておけなくてね」

「……辛そうな顔……私、気づきませんでした……」


 ミコトさんが何か呟いていたが、俺に向けた言葉ではなさそうだったので、話を続けることにした。


「キャサリンが六姉妹を挑発していたのは、彼女達を本気にさせるためだったんだ。本当はみんな、お互いに遠慮して総選挙に出ないつもりだったらしい。それを見かねて、キャサリンは自分が憎まれ役になることで、六姉妹をやる気にさせたんだ。あいつは意地悪なんかじゃない。むしろ、誰よりも六姉妹の才能を信じている」

「そんな背景があったのか……。ショウに教えてもらえなかったら、ずっとキャサリンのことを嫌なやつだと思っていただろうな」


 メイは素直に驚いていた。

 良かった、キャサリンのことをちゃんと知ってもらえた。

 誰かのために頑張っている人が、誤解されたままなのはやっぱり嫌だ。


「……そうなんですよね。これがショウさんなんですよね」


 またしてもミコトさんは何か呟いていた。

 俺が耳を傾ける前に、彼女は微笑みながら首を横に振った。


「ミコトさん、何か言った?」

「いいえ、ただの独り言です」


 ミコトさんは穏やかな笑みを浮かべて目を閉じた。

 そしてゆっくりと目を開くと、その瞳はまるで星が瞬くように輝いていた。

 ……なんだろう、この感じ。とりあえず、俺のは評価が下がらずにすんだのは、なんとなくわかった。

 俺はほっと胸を撫で下ろす。


「でも、みんな。今のキャサリンの話、六姉妹には内緒にしておいてくれよ。もし彼女達が真実を知ってしまったら、また姉妹揃って遠慮してしまって、キャサリンの苦労が台無しになりかねない。真実を伝えるのなら、すべてが終わった後だ」

「わかってるって」

「大丈夫です。私もそこまでバカじゃないです」


 この調子なら、吟遊詩人総選挙が終わった後、六姉妹とキャサリンは再び仲良くなれるだろう。

 エルシーの強化はできなかったけど、それでも彼女達の友情を取り戻すことに貢献できるなら、それは悪くない。このクエストとしては失敗の行動かもしれないけど、このゲームにおいては、俺の行動は間違ってなかったと思える。


 ――と、そこで俺は、あることに気づいた。

 さっきから一人、まったく喋っていない人物がいる。


「そういえば、クマサンはどうだったの?」


 身体は一番大きいのに、なぜか存在感がなくなっているように感じられる。


「……俺だけ誘われてない」

「え?」


 クマサンの呟きの意図が理解できず、思わず疑問の声が漏れた。


「ウェンディからデートに誘われてないんだ……」

「――――!?」


 それは衝撃の告白だった。

 メイもミコトも、その先の行動で分岐したものの、パートナーからデートに誘われるまでは同じだった。

 だからてっきり、全プレイヤー共通イベントだと思っていたのに、クマサンは違うって言うのか!?


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