幕間 タタルドの作戦
タタルド視点です。お気を付け下さい。
「タタルド、来たぞ……」
俺の寝床である洞穴に、ポッポがやって来た。
「やっと来たか……。ん? 一人か?」
ポッポは一人だ。
まさか……。
「いや、外で待ってる」
「そうか……」
どうやら俺の要望通り、何人か連れてきてくれたようだ。
「外に出てくれ」
「ああ、そうだな」
この洞穴は、あまり広くない。
何人連れてきたか知らないが、全員は入れないのだろう。
―
俺とポッポが外に出ると、そこには八人の鳥獣族達が待っていた。
だが、そこには予想外の人物も居た。
「ピーリー様!?」
「よお! タタルド!」
そう、ピーリー様が来ていたのだ。
「な、なんでピーリー様が……?」
「あ? 方翼のパントロとやるんだろ? 俺様が来ないで誰が来るんだよ?」
ピーリー様は自信満々にそう言った。
「お、おい! ポッポ!!」
「あ、ああ……」
俺はポッポを連れて、洞穴へと戻った。
「なんであの人が来てるんだよ!?」
「いや……、それがさ……、あの人、爪を治癒してもらったらしくてさ……」
治癒……?
「え!? ってことは、あのババアの所に行ったのか!?」
「ああ、そうらしい……」
鳥獣族には、治癒魔法の天才がいる。
獣耳族の年寄りで、数百年生きてるって噂もあるほどのババアだ。
だが、そいつは性格がクソ悪くて有名で、自分が気に入った者にしか治癒を施さない。
しかも、かなりの対価を要求してくるらしい。
「おいおい……、爪なんて数ヶ月もしたら回復するだろ?」
「そうなんだけどさ、タタルド……、お前の作戦に参加するって言って聞かないんだよ……」
なんだそれ……。
いや……、これで良かったのかも知れない。
バカだけどクソ強いピーリー様が来たのなら、百人力……、いや、千人力だ。
「おい! 俺様を放って、勝手に話を進めるなよ!!」
洞穴の外から、ピーリー様の声が聞こえてきた。
「よ、よし……、取り敢えず、現状は分かった……。外に出るか……」
「ああ……」
外に出た俺は、ポッポが連れてきた仲間達と挨拶を交わした。
獣族の戦士が三人。
次期鳥獣王候補のピーリー様。
獣族キツネ種の、セチュラとパンパス。
鳥族の戦士が四人。
カルン。マカット。キイド。ルヅイ。
全員、俺と同じ鳥族タカ種だ。
獣耳族の戦士が一人。
獣耳族ウサギ耳種。
戦鬼との異名もある、アショウ。
それぞれと挨拶を交わしながら、色々と聞いて分かったことがある。
ピーリー様は言うまでもないが、方翼のパントロとの再戦が目的だ。
獣族のセチュラとパンパスは兄弟で、先の戦いで兄を殺されたらしい。
兄の名前はクルペオ。
獣族の中でも、魔法が得意で有名だったヤツだ。
ピーリー様が、方翼のパントロと戦ったときに死体を確認したらしい。
そう、クルペオは、方翼のパントロに殺られたのだ……。
鳥族の四人とは面識がある。
四人は、トッパーと一緒に訓練をしてきた仲間達だ。
数年前の、植物族との戦いの時にも同じ部隊に配属されていた。
戦友であるトッパーの仇を討つために来たのだろう。
そして、獣耳族のアショウ。
こいつは先の戦いで、方翼のパントロにぶっ飛ばされたらしい。
しかも、ポポルカという親友を失ったそうだ。
死体は確認されていないが、おそらく先の戦いで死んだと思われる。
全員、方翼のパントロに恨みがある奴ばかりだ。
「まずは情報だな」
挨拶が終わった俺は、仕入れた情報をみんなに伝えることにした。
「ん? 新しい情報があるのか?」
ポッポがそう聞いてきた。
「ああ。とんでも無い事が起きた。方翼のパントロ、アイツがスライムの王になった」
「なんだと!?」
誰よりも先に、ピーリー様が反応した。
「二日前、スライムの街で、方翼のパントロが演説を行ないました。その時に仕入れた情報です。内容はバカバカしいもので、大魔王になるとかなんとか……」
「ふっふっふっ……。ハッハッハッハッハッ!! さすが方翼のパントロ! 俺様のライバルに相応しい!!」
やっぱりこの人バカだな。
方翼のパントロが王になったって事は、アイツの周りに護衛がつくって事だ……。
せっかく人数を集めたのに、戦力が分散されてしまう事に気付いてない……。
「てことは……、護衛がつくのか……」
ポッポがそう言ってくれたのだが……。
「ふん! 護衛なんぞ蹴散らせばいいだろ!」
ピーリー様はそう言った。
やっぱりバカだ……。
そんな簡単に近づけるはずが無いだろ……。
「と、取り敢えず、方翼のパントロをどうやって殺るか、作戦を考えましょう」
俺はそう言い、作戦会議を始めた。
――
二日後。
偵察に出ていた、鳥族の戦士カルンが戻ってきた。
「お、おい!! 方翼のパントロが、護衛を連れてスライムの街から出たぞ!!」
「なに!?」
おかしい……。
アイツがスライムの王になって、まだ数日だ……。
こんなに早く、一体どこに……。
「湿地帯に向かってるようだ! どうする!?」
「なるほど……、そう言うことか……」
湿地帯には、スライム軍が常駐している。
おそらく、スライム軍の連中に顔見せにでも行くのだろう……。
「護衛の数は?」
「えっと……、確か、五人だ。スライムが三人、獣耳族の奴が二人だった!」
五人……?
たったの五人だと……?
これは好機かも知れない。
「湿地帯に先回りしましょう!」
俺はピーリー様に向かって進言する。
一昨日の作戦会議の時、ピーリー様が俺達の隊長になったのだ。
まあ、基本的にバカなお人だから、命令を出したりするのは、俺の役目だが……。
「ん? 湿地帯で迎え撃つのか? 作戦はどうする?」
ピーリー様は少し悩むようにして、そう聞いてきた。
そう、俺達は作戦を立てた。
だが、それは方翼のパントロが街にいることが前提の作戦だ。
それに、作戦決行日は明日を予定していたし、何より、護衛が少ない今なら絶対にアイツを殺れる。
「作戦は立て直しましょう! 街から出て、護衛も少ないのです! 今は絶好の好機ですよ!」
「おもしれえ! 俺様が惨めな思いをした湿地帯で、アイツを殺るってことだな!」
「はい!」
そこから、新たな作戦を考え直した。
そして……。
―
「よし。行くか」
「「「「おお!!」」」
ピーリー様の号令の下、俺達は移動を始めた。
偵察によると、護衛の数は五人。
スライムが三人と、獣耳族に転生した二人だ。
こちらの戦力は、獣族の戦士が三人、鳥族の戦士が四人、獣耳族の戦士が一人。
そして、俺とポッポを併せた、計十人。
作戦は簡単だ。
湿地帯へと先回りし、パントロ一行が常駐しているスライム軍と合流する前に奇襲をかける。
たったこれだけだ。
スライムの三人は問題ない。獣耳族のアショウが一人で対処できるはずだ。
獣耳族の二人は、鳥族の四人で足止めをする。
残りのピーリー様、セチュラ、パンパス、そして俺の四人で、方翼のパントロを討つ。
念のため、ポッポは離れた場所で隠れながら様子を窺う。
何かあった場合、すぐさま鳥獣領へと戻ることになっている。
急に決めた作戦なので、穴はあるだろう。
だが、今はチャンスだ。
護衛の数は少なく、戦える場所もある。
ここでやらなきゃ、いつまで経ってもトッパーの仇を討てない。
俺は絶対に、トッパーの仇を討つ。
――――
俺は今、ホークアイを使い、上空から地上の様子を窺っている。
「来たな……」
湿地帯に、奴らが乗っているサイがやって来た。
この先には、常駐しているスライム軍がいるが、そこまで行かせるつもりはない。
「よし……、行くか……」
俺は真っ逆さまに急降下しながら、地上の様子を確認する。
湿地帯に入った奴らのサイを、全員で取り囲んだのが見える。
パントロは先ほどまで、何故か空を見上げていたが、急に囲まれたことに驚いているようだ。
サイは急停止し、乗っていた奴らは全員飛び降りた。
「パントロおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
かなり上空にいるのに、ピーリー様の叫びが聞こえてきた。
ピーリー様が、パントロに向かって突っ込んでいくのが見える。
次々と、作戦通りのことが起きている。
獣耳族の二人を引き剥がすように、鳥族の四人が攻撃をしながら距離を取った。
二人はそれに釣られるように、この場から離れていく。
スライムの三人の方も問題無さそうだ。
獣耳族のアショウが魔法を使い、三人をまとめて吹き飛ばした。
アショウは、三人を追いかけるように走っていく。
この場には、もう方翼のパントロしか居ない。
俺は急降下を続ける。
そして……。
今だ!!
ピーリー様の攻撃を避けるために、パントロが後ろへと飛び退いた。
「クッケエエエエエエエエエエエエエエ!!」
俺はその隙を逃さずに、急降下した勢いのまま、引っ掻き攻撃を繰り出した。
「うぉ!?」
だが、パントロは少し驚いただけで、俺の攻撃を避けやがった。
俺は翼を羽ばたかせながら、急停止する。
「うおらあああああああああああああ!!」
ピーリー様が、パントロに向かって突っ込む。
セチュラとパンパスは、パントロを囲むように移動をしている。
「ちょっ!? チーター野郎!! 待てって言ってるだろ!!」
パントロが、ピーリー様の連続攻撃を避けながら、何か喚いている。
「うるせええええええええええええ!! 死ねええええええええええええええええ!!」
ピーリー様の様子が少し変だ。激怒しているように見える。
パントロの姿を見て、負けたことを思い出したのかも知れない。
「いい加減にしろ!!」
そう言いながら、パントロはピーリー様に掌底を放つ。
「ぐぁっ!」
ピーリー様は掌底をまともに食らい、後ろへ吹っ飛ばされてしまった。
おかしい……。
方翼のパントロは怪我をしているはず……。
なぜ、こんなにも動ける……。
俺がそんなことを考えていると、ピーリー様はすぐさま起き上がった。
そしてそのまま、突っ込んでいこうとしているのが見えた。
「ピーリー様! 少し落ち着いて下さい!!」
「ふぅうううううううううううううううう!!」
俺の言葉を聞いて、ピーリー様は少し止まってくれた。




