第三十話 「仲間の捜索」
俺は空を飛びながら、サーラスティとガルディウスを捜している。
足止めをするのが俺の任務だが、今は勘弁して貰おう。仲間を見つける方が先だ。
サーラスティは、大きなリボンを付けてるから、すぐに見つかると思ったけど……。
全く見つからんな……。
ガルディウスは……、黒いだけで、他に特徴が無いしな……。
サーラスティと一緒にいることを願おう……。
俺は上空から、ひたすら二人を捜し続けた。
すると……。
「クケケケ!」
後ろから、どこかで聞いたことのあるような声が聞こえてきた。
鳥野郎か? 違うよな? あいつ死んだもんな。
そんな事を考えつつ、振り向くと……。
そこには、五体の鳥族がいた。
「おいおい。勘弁してくれよ。お前らなんかに、かまってる暇ないんだよ」
俺は、口ではそう言った。
だが、内心は……。
やべええええええええええええええ!!
どうする!? 空で戦うのとか無理だろ!?
空中戦なんてやったことないし、つーか、人数多すぎだろ!?
なんで五体もいるんだよ!? 俺一人を倒すのに、人数集めすぎだろうが!!
超ビビってた。
「クケケケケケ! 鳥族のくせに、スライムの仲間をしてるってのはお前か? クケケケケ!!」
あ……。やべえ……。
仲間のフリをしていれば良かったんだ……。
さっきも思ったけど、俺はやっぱりバカすぎる……。
「クッケッケッケッ! こんな奴、さっさと殺して、スライム喰いに行こうぜ。クッケッケッケッ!」
あー。笑い方ってか、鳴き声が微妙に違うのか……。
分かりにくいけど……。
いや、そんなのは、どうでもいいんだって!
どうする!? マジで……、マジでどうしたらいい!?
「クケエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」
鳥野郎の一体が、俺に向かって突っ込んできた。
「ちょっ!! まだ、考え中だ、コラッ!!」
俺は、よく分からない怒りの言葉を発しながら、なんとか攻撃を避けようと、翼を操作した。
だが……。
「クケケッ! 遅いっ!!」
鳥野郎は、もの凄い速度で空を舞いながら、俺に向かってきた。
そして……。
「かはっ!」
頭突きのような体当たりが、俺の腹部に直撃。
俺は口から空気を吐き出しながら、吹っ飛ばされてしまった。
俺の空中移動はショボすぎたのだ。
本家の鳥族の空中移動は、俺の比ではなかった……。
「くぅ……!」
俺は腹を押さえながら、地面に向かって落下していく。
ダメージは……、少しだけある。
だが、本当に少しだ。ドバイン師匠の攻撃の方が何倍も痛い。
やっぱり、空中戦は俺には無理だな。
一旦地上に降りよう。
俺は落下しながら、地上を確認した。
少し離れているところで、スライム達が戦ってるのが見えるが、俺の真下は誰もいない。
ただの草原のような湿地が見えただけだ。
よし。味方の邪魔にはならないな。
あいつらが追ってきたら、高速移動でぶっ飛ばす。
もし追ってこなければ、そのまま放置しよう。
そんなことを考えながら、俺は落下を続けた。
「クケッケッケッケッケ! 大したことねーな!! トドメは俺が貰うぜえええええええ!!」
俺が落下中にもかかわらず、一体の鳥野郎が、両腕を広げて突っ込んできた。
やべっ! あの体勢なら、たぶん引っ掻き攻撃が来る。
アレをまともに食らったら、さすがに無事じゃ済まない!
「おらあああああああああああああああああああ!!」
俺は咄嗟に、叫びながら、両腕を前へと突き出した。
別に何があるわけでもない。
ただの威嚇だ。
「クケッ!?」
だが、上手くいった。
鳥野郎は、俺が何かすると思ったのか、空中で急停止して、こちらの様子を窺っている。
「ばーーーーーーか!!」
俺は落下しながら、鳥野郎を煽る。
そんなつもりはなかったのだが、鳥野郎の焦ったような表情を見てると、思わず口から出ていた。
「く……、クケエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」
鳥野郎が怒りをあらわにして、俺を目掛けて突っ込んできた。
だが、もう遅い。
すぐそこに地面がある。
俺は空中で体勢を立て直し、地面に着地したと同時に高速移動を開始する。
「クケッ!?」
鳥野郎は、目の前にいた俺を見失い、地面スレスレで急停止した。
俺は高速で方向転換を繰り返し、鳥野郎の背後へと回る。
そのまま流れるように、背中に手刀を突き刺した。
「ク……ケ……?」
俺が手刀を引き抜くと、鳥野郎は、何が起きたのかサッパリ分かってないような声をあげ、その場で倒れた。
俺は、鳥野郎が倒れるのを確認してから空を見上げる。
残り四体の鳥野郎がいるはずだ。
あれ? 一体しか飛んでないな……。
あとの三体はどこ行った?
辺りを見渡してみたが、鳥野郎の姿はない。
目の前に一体転がってるだけだ。
変だな……?
そう思い、もう一度、空を見上げた。
すると、鳥野郎に向かって、大量の魔法が撃たれていた。
どうやらスライム軍が、鳥野郎に向けて魔法を撃ったらしい。
先ほどまで空を飛んでいた鳥野郎が、魔法から逃げるように去っていくのが見えた。
さすがに大量の魔法が相手だと、鳥野郎も突っ込めなかったようだ。
残りの三体も、ああやって逃げたのだろう。
さて、俺の危機は去ったわけだが……。
もしかして、今仕留めた鳥野郎から、魂の欠片が手に入るのではないだろうか?
まあ、すでに鳥族になっているから、必要はないんだが……。
そう言えば、牛顔も俺一人で倒したな……。
あいつからも魂の欠片が手に入ったかもな……。
そんなことを考えつつ、しばらく待ってみた。
だが……、魂の欠片は出てこなかった……。
何故だ? 一対一で戦って倒したと思うのだが……。
俺の考えは、間違っているのだろうか?
よく分からないが、一向に出て来る気配がないので、俺は再度サーラスティ達を捜すために、空に向かって飛び立った。
――
サーラスティ達を捜し続けて、結構経ってしまった……。
上空から、地上をくまなく捜しているのだが、未だに見つけられない……。
捜しながら、戦場の端の方まで来てしまった。
この辺りでは、小規模な戦いが多く行なわれているみたいだ。
あちらこちらで、民兵らしきスライム達が、三体くらいの鳥獣族を囲んで、戦ってるのが見える。
もちろん、その周辺には足止めをしているスライム達もいる。
見つからないな……。戦場から離れてるのか?
いや、二人の性格を考えると、そうは思えないな。
サーラスティはともかく、ガルディウスは絶対に戦場から逃げないはずだ。そういう性格をしてる。
一旦、前線基地の方へ戻ってみるべきか?
いや……、そろそろ最悪の状況を考えるべきかも知れない……。
もしかしたら……、既に鳥獣族に食べられた可能性が……。
いやいやいやいや! そんなことは無いはずだ!
あの二人が、簡単にやれるはずがない!!
そんなことを考えていると、大きなリボンを付けた、真っ赤な色のスライムが視界に映った。
サーラスティを、やっと見つけられたのだ。
「サーラスティ!! 無事か!?」
俺はサーラスティの方へと向かう。
サーラスティは、今、休憩中なのだろうか?
一人でポツンと、戦いから離れた場所にいた。
「あら? パントロ? ふふん! やっぱり来たのね!」
「え? やっぱり? いや、つーか、こんな所で何してんだよ?」
「ふふん! もちろん、みんなの手助けよ! ちゃーんと、足止めだってしてるわよ!」
いや、俺が言いたいのは、そうじゃなくて……。
「なんで一人で行動してるんだよ? ボルドが倒れてたんだぞ!」
「え? ボルドが? でも、その言い方なら生きてるのよね?」
「あ、ああ……。確かに生きてるけど……」
「なら、安心じゃない!」
いや、安心って……。
なんか、すげえ、あっさりしてるな……。
仲間の危機だったのに……。
「あ、そうだ! ガルディウスはどうした? 一緒じゃないのか?」
「ガルディウスなら、あっちよ」
サーラスティが見た先、遠くの方に黒い点が見えた……。
もしかして、あの黒い点が、ガルディウスだろうか?
ピョンピョンと跳びはねながら、他のスライム達と一緒に、鳥獣族を引きつけているのが見える。
そんなに多くの鳥獣族ではないので、今のところ、危険は無さそうだが……。
「なんで、バラバラに動いてんだ?」
「ふふん! 色々とあったのよ!」
いや、色々って……。
簡単に説明して貰った。
何でも、俺が一人で敵陣に突っ込んでから、ガルディウスが、もの凄くやる気を出したらしい。
ガルディウスには、俺が活躍しているように見えたようだ。
そこで、ガルディウスが、自分も……、と、単独で敵陣に突っ込んでいったらしい。
サーラスティは、ガルディウスをを止めるどころか、自分までやる気を出し、同じように、敵陣に突っ込んで行き、敵を足止めし続けていたそうだ。
そんな中、足止め部隊が、大量の敵を引き連れて移動したらしく、それについてくる形で、サーラスティは、ここまでやってきたらしい。
おそらく、ガルディウスも似たような感じで、ここまでやって来たのであろう。
要するに、二人のテンションが上がって、勝手に動き回った結果、ここまでやって来た。
そう言うことらしい……。
単独で動くのとかやめろよ……。
仲間がいるんだから、一緒に行動しろよ……。
いや、人のこと言える立場じゃないか……。
「まあいいわ。パントロが戻ってきたなら、一旦、戻りましょう」
「戻る? 戻るって、どこに?」
「もちろん、前線基地よ!」
そうだな……、ボルドのことも気になるし、一旦戻るか。
後方支援組も、たぶん基地にいるだろうし……。
よし、そうするか。
「それじゃあ、ガルディウスを迎えに……」
「迎えになんて、行かなくていいわよ」
「え?」
「ふふん! あれをやるから、見てなさい!」
あれをやる? アレってなんだ?
『ウォーターボール!』
サーラスティが空に向けて、魔法で作った水の玉を撃った。
『ウォーターボール!』
サーラスティはもう一発、水の玉を空へ向けて撃つ。
一体何をしてるのだろうか?
『バースト!!』
サーラスティが空に向けて撃った二つの水の玉が、上空で弾けるように爆発した。
辺り一帯に、雨のように水が降ってきた。
え? 今の魔法って……
鳥野郎とかが使ってた、爆散する魔法だよな?
「あれ? サーラスティって、あの魔法使えたの? 初めて見たんだけど……」
「ふふん! あたしだって、日々成長してるのよ!」
自信満々に言われた。
「いや、それは分かるけどさ……」
「ふふん! 今のは、バーストって名前の魔法で、撃った魔法を爆発させる魔法なのよ!」
それは知ってる。
何度も見た……。
「う、うん。それは分かるけど、あんな魔法、いつ覚えたんだ? つーか、初級魔法じゃないよな?」
「ふふん! 特訓で神官様に教えて貰ったのよ! パントロ一人が強くなってると思わない事ね!」
詳しく聞くと、どうやら俺が鳥族に転生した後に、サーラスティは、さっきの魔法を覚えたようだ。
俺は鳥族に転生後、一人で特訓をやっていた。
その間、サーラスティ達は、カイザーの監視の下、狩りを主な特訓にしていたらしいのだが、その課程で様々な魔法を教えて貰ったらしい。
ユカリスなんて、中級魔法と呼ばれている魔法を、ほぼ全て使えるようになってるらしい。
「マジかよ……。みんな強くなりすぎじゃね?」
「ふふん! パントロだって、凄く強くなってるじゃない!」
俺の場合、鳥族の身体のおかげだからな……。
「呼んだか?」
「うお!?」
いつの間にか、俺の後ろにガルディウスが居た。
ビックリして、思わず飛び退いてしまった。
「ふふん! 一旦引き上げるわよ!」
「ちっ……、これからって時に……、引き上げる理由は?」
「ふふん! 水の補給と、みんなが無事かどうか確認するのよ!」
「あっ? そんなの……、いや、分かった……」
驚いてる俺を無視して、二人で会話を始めやがった。
「え? 何? なんでガルディウスがここにいるの? あれ?」
俺が驚いていると、サーラスティが説明してくれた。
先ほどサーラスティが撃った魔法が、集合の合図になっていたそうだ。
これは狩りの時に決めた合図らしく、当然俺は知らない。
二つの水の玉が爆散、その後、雨のようになって水が降ってくる。
ただの水なので、もちろん誰も怪我をしない。
何も知らないヤツからすれば、魔法を無駄撃ちしてるように見えるし、魔法を撃ったことに気付いてないヤツは、ただ雨が降ってきただけだと思うだけだ。
実際に俺も、サーラスティが何をやってるのか、分からなかった。
ただ魔法を空に向けて撃ち、それを爆発させただけだと思ってた。
だが、仲間内だと集合の合図だと分かるのだ。
現に、こうしてガルディウスが、ここに戻ってきているのだから。
「なるほど……。なんで俺には教えてくれないんだよ……」
仲間はずれにされてるのか……?
「あら? 言ってなかったかしら? ふふん! でも、パントロには必要ないでしょ」
「なっ!!」
俺には必要ないって、どういう意味だ?
俺は仲間じゃないと……、そう言うことか……?
「だってパントロは、あたしが念じれば、すぐに来てくれるもの」
は?
「え? 念じる? ちょ、意味が分からないんだけど?」
「さっきだって、そろそろ戻ってきなさいって思ってたら、すぐに来たじゃない」
「はあ?」
「ふふん! 愛の力ね!!」
ダメだ……。
サーラスティが何を言ってるのか、理解不能だ……。
はあ……、集合の合図は教えて貰ったし、もういいや……。
適当に返事をしておこう……。
「そ、そうか……。愛の力か……」
なんだよ愛の力って……。
自分で言ってみても、意味が分からん……。
「ふふん! さあ、一旦戻るわよ!」
「サッサと戻るぞ」
「お、おう……」
俺達は一旦、前線基地に戻ることにした。




