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幕間 集団戦闘の特訓

 サーラスティ視点です。お気を付け下さい。

 集団戦闘の特訓が始まった。


 師匠を囲むようにして、パントロ、ガルディウス、ボルドが、一斉に飛びかかる。

 あたしは、それを見ながら、指示を飛ばす。


「リン! ユカ! 魔法の準備!」

「う、うん!」

「ふぁ、ふぁぃ……」


 相変わらず、ユカリスは荒っぽいのが苦手みたいね。

 魔法の才能は、あたし達の中じゃ断トツなのにどうしてかしら?


『フレイムボール!』


 リンジーの魔法が完成し、師匠へと向かって飛んでいった。


 あ、まずい!

 ガルディウスが、魔法に気付いていない!


「ガル! 右に避けて!」

「ちっ!!」


 ガルディウスが舌打ちをしながら、あたしの指示通りに右に避ける。


「ふんっ!!」


 師匠は、邪魔な物を片手で払うようにして、炎の玉をたたき落とした。


 まさか!? 師匠は、あんな簡単に魔法を払ったりできるの!?

 でも、パントロが良い位置にいるわ! すぐに体当たりの指示を――。


「おりゃああああああああああああああ!!」


 あたしが指示を出すより早く、パントロが師匠に向かって体当たりを放った。


 さすがパントロね。よく分かってるじゃない。


「ユカ! 魔法はまだ!?」

「は、はい! 『ウォーターボール!』」


 ユカリスの放った水の玉が師匠を襲う。


 でも、これも無駄でしょうね。

 なら!


 あたしは魔力を操作しながら、師匠の死角へと移動する。

 そして……。


『アースボール!!』


 土で出来た玉を師匠を目掛けて飛ばす!


「ボル! 体当たり!!」


 ボルドの位置が、かなり良かったので、咄嗟に体当たりの指示を飛ばした。


「合点!! どっせええええええええええええええええええい!!」


 ボルドの体当たりが、師匠の横っ腹に突き刺さった。

 次の瞬間、ユカリスと、あたしが放った魔法が師匠に直撃した!


 やった! あたし達の魔法のダメージは大したことないかも知れないけど、これを繰り返せば……。


「ふん!」


 師匠は、ダメージを全く感じさせることなく、前衛の三人に向かって突きや蹴りを繰り出している。

 パントロ、ガルディウス、ボルド、頑張って注意を引きつけておいて!


「ユカ! アレをお願い!」

「ふえぇ……、じ、時間掛かるよぉ?」

「いいから、準備してよ!」

「ふぁ、ふぁい!」


 ユカリスの魔法の準備が出来るまで、あたしも師匠の注意を引きつけないと……。


「リン! 魔法を撃てるだけ撃って!」

「う、うん!!」


 あたしはリンジーに指示を出してから、師匠の懐へと飛び込む。


 パントロが近くに来た。


「サーラスティ!? 何してるっ!? 飛び込んでどうするんだよ!?」

「ふふん! 良いから、見てなさいって!!」

「あぶねっ!!」


 パントロとあたしの間に、師匠の蹴りが飛んできた。

 あたしは華麗に避けながら、師匠の注意を引きつける。


「師匠!! これでも食らいなさい!! 『フレイムボール!』」


 近距離から放った、あたしの炎の玉は目の前の師匠に直撃した。


「ナイス!!」


 パントロが、あたしを褒めるような言葉をくれた。

 ふふっ。どうしてかしら? 笑みがこぼれちゃうわ。


「ガル! 死角へ!」

「わかってる! オレを誰だと思ってんだよ!!」


 ガルディウスは良い動きをしてるのだけど、どうも正面に立ちたがるのよね……。

 ほんと、困ったヤツだわ……。


 後ろから、次々と魔法が飛んできた。

 あたしは、師匠から少し距離をとって、魔法を避ける。


「むむ!?」


 ボルドが危なっかしいわね。

 師匠の攻撃に注意が向きすぎて、魔法に反応できてない。

 少し指示を出した方が良いかもしれないわね。


「ボル! 左に避けて!」

「承知!」

「ガル! あんたは死角へって、言ってるでしょ!!」

「くそっ! 分かってんだよ!! でもっ! 師匠の攻撃がっ!」

「おりゃああああああああああ!!」


 パントロの体当たりが師匠の背中に当たった。


「ガル! 今よ!」

「ちっ! パントロに借りを作るとはなっ!」


 まったく。何が借りよ。


「サーちゃん!」


 ユカリスの声だわ!

 魔法の準備が出来たのね!!


「ユカ!」

『ウォーター……!』


 ユカリスの頭上に魔法が創り出されていく。

 水が生まれ、高速で回転を始める。

 そして、その高速回転している水の周りに、また水が生まれ、高速回転を始める。

 同じようにどんどんと繰り返され、大きな、大きな、水で出来た竜巻が作られた。


「全員、退避!!」


 あたしの号令と共に、全員が師匠から距離を取った。


『ハリケーン!!』


 ユカリスが魔法名を言い終わると同時に、水の竜巻は、師匠へ向けてスライドするように移動していく。

 師匠は、魔法を避けようと右へ左へと、方向を変えるが、水の竜巻は師匠を追いかける。


「いいぞ!! いっけええ!!」


 パントロが楽しそうな声で、竜巻を応援している。


「くぅぅぅぅ……」


 ユカリスの表情が優れない……。

 この魔法、竜巻の移動にユカリスの魔力を使うらしく、ユカリスには結構な負担が掛かっている。


 サポートしなきゃね。


「リン! 魔法!」

「あ、うん! そうだね!」


『ウォーターボール!』

『アースボール!』


 あたし達は、師匠が逃げられないように、魔法を使って足止めを狙う。

 でも……、師匠の動きが捕らえられない……。

 何度も、何度も、魔法を撃ったけど、全部避けられてしまった。


 このままじゃ、ユカリスの魔法が消えちゃう。

 ど、どうしたら……。


「おりゃああああああああああああああああああああああ!!」


 いつの間にか、パントロが師匠に接近して、死角から体当たりを放った。


「……くっ!!」


 師匠の顔が歪んだ!


「今よ! ユカ!!」

「ぅぅぅぅうううう!!」


 水の竜巻が、師匠へ向かって、猛スピードで移動する。

 師匠は、パントロの体当たりが効いたのか、動けていない。


「パン!! 離れて!!」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 パントロが、あたしの指示を無視して、師匠へ体当たりを放った。


 何やってんのよ!! パントロ!!

 離れないと、ユカリスの魔法が!!


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 はっ!! 違う!?

 師匠が動けないのは、パントロの体当たりが効いたからじゃなくて、パントロに注意が向いているせい!?


 あたしがこんな事を考えた瞬間、水の竜巻が、師匠とパントロの二人を飲み込んだ。


「ぱ、パントロおおおおおおおおお!?」

「ちっ! 何やってんだよ! あのバカ!」

「ぱ、パントロくん……」

「パントロ殿……」


 あたしを含めて、みんな一斉にパントロの安否を気にした。

 師匠はきっと大丈夫。だって鳥獣族だもの。死ぬことはないわ。

 でも、パントロは……。


「ふえええええええ!! サーちゃん! ど、どうしよぉ……、わたしの魔法で、ぱ、パントロちゃんが……」


 ユカリスが半泣き状態で、あたしにくっついて来た。

 あたしだって、どうしたらいいか、分からないわよ……。

 水の竜巻が消えるまで、祈るようにして待つしかないわ……。


「ユカ! 落ち着いて。きっと大丈夫。きっと……」


 あたしは、自分に言い聞かせるようにしながら、ユカリスを慰めていた。

 すると……。


「ふん!!」


 師匠の声が聞こえたと思った瞬間、水の竜巻が、跡形もなく吹っ飛ばされた。

 それはもう見事に吹っ飛ばされた。

 吹き飛ばされた水が、雨のようにしてポツポツと降ってきた……。


「そ、そんな……」

「師匠はバケモンかよ……」

「さすがであるな……」

「師匠! すごいです!」

「ふぇぇぇぇぇぇ」


 全員、いえ……、リンジー以外のみんなは、戦意を喪失しているように見えた……。

 もちろん、あたしも……。


「おりゃああああああああああああああああああああああああ!!」


 上空からパントロの声が聞こえ、あたしは咄嗟に上を向いた。


「ドバイン師しょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 上空から落下速度を利用して、師匠の肩口へ、パントロの体当たりが炸裂。

 その瞬間、パントロはボールのように跳ねながら、こちらに向かって転がってきた。


「ぐぐぐぐうううううううううううううううううううう!!」


 師匠が苦悶の表情をしている!?

 ま、まさか!?


「いってえええええええええええええええええええ!!」


 パントロが、落下のダメージを受けたようで、叫んでる……。


「がああああああああああああああああああああ!!」


 と思ったら、師匠まで叫びだした……。


「はぁはぁはぁ……やった!! 魔撃を当ててやったぞ!!」


 魔撃!? パントロの必殺技よね!?


「ぱ、パントロ!? あんた一体!?」


 あたしはパントロに近づき、何が起きたのか確かめようとした。

 けど、急に師匠の叫び声が止まった。


 あたしは、咄嗟に師匠の方へと振り向く。

 すると……。


「……はぁはぁ……はぁはぁ……参った」


 師匠は満身創痍らしく、険しい表情をしながらポツリと呟いた。


 師匠? 今……。


「おっしゃあああああああああああああああ!!」


 パントロが、歓喜の叫びをあげた。

 みんなは、一瞬、何が起きたのかと、目を合わせ、そして……。


「「「やったああああああああああああああああああ」」」


 一斉に声をあげた。


 あたしは……。

 ホッとして、それどころじゃなかった……。


「やった! やったぞ!! サーラスティ!!」


 パントロが、のんきにあたしに喜びを伝えてきた。


 あたしは、作戦を改めて考えていた……。

 味方を巻き込んで、これで良かったのかと……。

 特訓なのに、実戦じゃないのに、味方を失いかけた……。

 リーダーとして、これで本当に良かったのか……。


「サーラスティ、どうした? 勝ったんだぞ!? もっと喜ぼうよ!!」


 パントロは純粋だ。

 自分が死にかけたのも忘れて、勝利したことを純粋に喜んでいる。


「サーラスティ様? リーダー様? あなたのおかげで、俺達のチームが勝ったんですよ?」


 たまに、パントロはあたしを様付けする。

 気持ちが良いからスルーしているけど、どういうつもりなのかしら?


「あ、あんたねえ……、さっきに死にそうになったじゃない! これ、特訓よ? 分かってんの?」

「お、おう……。分かってるけどさ、ほら、アレじゃん? なんていうか……、その……、みんなで勝ち取った初めての勝利じゃん? 嬉しいだろ?」


 みんなで勝ち取った……。

 確かにそうね。

 あたしはリーダーとして、勝利を得た。それでいいわよね。

 作戦のミスがあったなら、実戦でそうならないように、作戦を立て直せば良いわよね!


「ふふん! 嬉しいに決まってるじゃない!」

「おお! だよな! 嬉しいよな!!」

「ふふん! 次からは、もっと指示を出すから、ちゃんとあたしについてくるのよ?」

「おうよ!!」


 あたし達の、初めての集団戦闘の特訓は、勝利で終わった。

 パントロが最後にやってくれなきゃ、あたし達は負けてたかも知れない。

 でも、あたし達は勝った。


 だから、今は目一杯、喜ぼうと思う。


「勝ったわね」

「おう! 勝ったな!」

「ふふっ。あたし達って強いんじゃない?」

「そうかもな!!」

「やったあああああああああああああああああああ!!」

「いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 鍛錬場に、あたしと、パントロ、そして、みんなの歓喜の声が響き渡った。



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