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転生したら滅亡寸前の少弐冬尚だった件 〜無能大名と舐められていたので、現代知識で南蛮貿易を独占して九州の覇者になります〜  作者: 不死鳥 冬


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第3話:南蛮商人、泡に溺れる

「デウスよ、これは一体何の冗談だ?」


ガレオン船の船長室。


立派な髭を蓄えたポルトガル人商人、カピタン・モールのジョアンは、目の前の「ちんちくりんの少年」を見て露骨に鼻で笑った。


通詞(通訳)を介して聞こえる言葉は、完全に見下しきっている。


それもそのはずだ。


俺の格好は、泥にまみれたボロボロの直垂(着物)。


付き添う栄門にいたっては、緊張のあまり借りてきた猫のようにガタガタと震えている。


「大友の領地へ向かう途中で狼煙が見えたから寄ってみれば、出迎えたのは没落大名のガキか。我々は忙しいのだ。用がないなら帰れ」


冷たく言い放つジョアン。


しかし、俺は動じない。


前世のブラック企業で鍛え上げた営業スマイルを浮かべ、懐から「それ」を取り出して机に置いた。


長崎の廃屋で作った、柑橘の香りが漂う特製の石鹸だ。


「ジョアン船長。長旅でお疲れのあなた方に、我が領地からの最高の贈り物です。……そこにいる奴隷の足を洗ってみてください」


ジョアンは怪訝そうな顔をしたが、俺の堂々とした態度に圧されたのか、顎で部下に指示を出した。


船室の隅にいた、浅黒い肌の東南アジア系の水夫が前に呼び出される。


その足は、何ヶ月も洗っていない垢と泥、そして船底の油汚れで黒くドロドロに汚れていた。


栄門が用意したタライの水に、水夫が足を浸す。


俺は石鹸を手に取り、水夫の足に擦りつけた。


「おい、何をする気だ……ん? なんだこれは!?」


ジョアンの目が点になった。


水を加えて揉み込んだ瞬間、見たこともないキメの細かい「白い泡」がモコモコと湧き出たのだ。


当時の日本にある洗浄剤といえば小豆の粉や米ぬか、ヨーロッパの石鹸も硬くて泡立ちが悪いものばかり。


現代の配合比率で作られたこの石鹸の泡立ちは、彼らにとって異次元の光景だった。


さらに船室に広がる、爽やかなミカンの香り。


「オー、デウス(神よ)……!」汚れがみるみる落ち、水夫の足は本来の肌の色を取り戻していく。


それだけでなく、船室の悪臭さえも柑橘の香りで上書きされていく。


水夫は「気持ちいい、信じられない!」と涙を流して喜んだ。


「これ、これはまさか『サボン(石鹸)』か!? しかし、なぜこれほど泡立つ? なぜこんな素晴らしい香りがするんだ!?」


「我が少弐家に伝わる秘伝の製法です。船長、何ヶ月も風呂に入れない船乗りたちが、これをどれほど欲しがるか……あなたなら分かりますよね?」


俺はニヤリと笑い、ジョアンの目を真っ直ぐ見据えた。


「これを大友や島津には渡さず、あなたの船団で独占販売させてあげてもいい。……ただし、代金は金銀ではない。『鉄砲』と『硝石』で支払ってもらいます」ジョアンの目の色が変わった。商人の本能が、この「白い塊」がヨーロッパや明国(中国)でどれほどの暴利を生むかを理解したのだ。


「……面白い。その条件、乗ろう。手持ちの鉄砲五十挺、そして硝石十樽をすべて出そう。ただし、その石鹸を今あるだけすべて置いていけ!」


「毎度あり。次の取引までに、この長崎をさらに発展させてお待ちしておりますよ」


こうして、歴史上最大の「死んだふり」の裏で、少弐家は最初の軍資金と最新兵器を手に入れた。


船から運び出される大量の鉄砲と黒い硝石の樽を眺めながら、栄門は口をあんぐりと開けて固まっていた。


「わ、若殿……本当に、泡だけで鉄砲が……」


「言っただろう、栄門。これからは金の時代だ」


これで龍造寺の熊をハメるための「牙」は揃いつつある。


俺の戦国下剋上は、ここから一気に加速する。

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