マリウスとレイラの兄弟喧嘩
セプテントリオの番外編です。
セプテントリオ王国の王弟の子どもマリウスとレイラがアンニーナを歓迎する夕食会が終了した後のお話
レイラ視点です。
「お前は!どうして!そんなに短絡的な考えしかできないんだ!」
プロヴァンツァーレ国の次期女王でエーベお兄様の将来の奥様になるアンニーナ様に少しだけ反抗的な態度をとったことに対してマリウス兄さんは激怒していた。
「そんなに怒らなくてもいいでしょ!」
※※※
アンニーナ様を歓迎する少し豪華な夕食会が終わった後、会話もなく二人で部屋に戻っていった。
私達の両親は叔父様と少し話があるということでそのまま遊戯室へ向かっていった。
先にマリウス兄さんの部屋に着いたのでそのままおやすみなさいと言って別れるつもりだったけど珍しく「少し話をしよう」と言ってきたので大人しくマリウス兄さんの部屋にお邪魔した。
マリウス兄さんの部屋は王族の一員なのにとてもシンプルな部屋だった。豪華な飾りつけもなく兄さんが本当に使いやすい物ばかりを集めているんだろうなと思った。
とりあえず座ってと言われたので近くにあるソファーに座った。
マリウス兄さんはすぐに私の好きな紅茶を用意してくれた。いつもなら自分のメイドに用意してもらうけど今日はアンニーナ様がこのお城に滞在しているのでその対応に駆り出されているみたいだった。
「レイラはこのジャムが入っている紅茶が好きだったよね」
私の好みを覚えていてくれたのはちょっと嬉しかった。
二人でお茶を楽しんでいると、マリウス兄さんが話し出した。
「姫様を会場に案内している時、レイラは一体何を話していたんだい?」
私は、ススーっと視線を外しながら引き続きお茶を楽しんでいた。
「僕が出会ったときは確か、エーベ殿下との小さい頃のお話をしていたよね?」
「少しだけよ」
「姫様はご不快な表情はしていなかったけどレイラの話を聞き流していたぞ」
「少し長く話をしただけだもん」
「エーベ殿下とお前の話って本当に小さい頃だろ?そんなにしつこく話す内容もなかったんじゃないか?」
「・・・そんなことないもん」
私は頬を少し膨らませながら拗ねていた。
私はエーベお兄様が帰国すると聞いてもしかすると昔の約束を覚えていてくれたのかもって思っていた。
「エーベお兄様が大きくなったら私をお嫁さんにしてくれるかもって言ってたもん」
「・・・。それはまだ二人とも幼い時の事だろう。それに、エーベ殿下は『僕に愛する人が見つけられなかった時、もう一度考えてみるよ』って言われてたじゃないか」
そうだった、あの時マリウス兄さんも同じ席にいたんだった。
叔母様とお母様は仲が良いからニコニコと私達の話を聞いてくれていたからちょっとは期待していたのに。
マリウス兄さんは何か嫌な考えを思い浮かんだらしく恐る恐るこちらを見ながら
「おい、まさかその話を姫様にしてないだろうな・・・。」
「えっ?少しだけ・・・ね。実は・・・って」
そう、私はエーベお兄様とのエピソードが尽きてしまったので最後にその話をしていたのだ。
それを聞いたマリウス兄さんは立ち上がると冒頭の言葉を私に投げつけた。
「だって!」
私もマリウス兄さんに対抗するように声を少しだけ大きくして
「マリウス兄さんが倒れた時、お父様もお母様も兄さんの命を少しだけ諦めたんだよ?」
「それが許せなくて・・・悔しくて」
王族から呪いを受けるという事は受けた側が何かしらの罰を受けなければいけない状況だったと判断される。マリウス兄さんは一番コンラート殿下に忠誠を尽くしていたのに「仕方がないね」で済まされようとするのが許せなかった。
私はそれを考えると感情を抑えられずに涙がポロポロと溢れてきた。
「ふぇ~。お兄ちゃんがいなくなるなんて考えたくなかったんだもん」
「レッレイラ!?」
私が幼い子供の様に泣き出したので慌ててハンカチ片手に隣にすわりそっと私の目元を抑えた。
幼すぎる自分の行動に恥ずかしくなりながらも涙は止まらないからどうしようもなかった。
「わ~。どうしよっ。ごめんね。泣かないでおくれよ。僕の事を想ってくれたのは嬉しいけど。僕も内心ヒヤヒヤしたんだからね」
「ごめんなざいぃ~」
私は泣きながらマリウス兄さんに抱き着いた。
マリウス兄さんは私を支えながら背中をポンポンと叩き、私の気持ちが落ち着くまで待っていてくれた。
私が泣き止むのを確かめると、マリウス兄さんは少し優しい口調で
「あの案内の時にレイラがきちんと姫様の案内ができていればエーベ殿下と一緒にプロヴァンツァーレ国に行けたかもしれなかったんだぞ?」
「うっうん、それはお母様からお話はもらっていたけど・・・。アンニーナ様の侍女として働くのはちょっと違うと思ったの」
「そうなのか?」
私の答えが意外だったらしくマリウス兄さんは驚いていた。
「確かにマリウス兄さんが呪いで倒れた時はエーベお兄様の下に付いてでも解術出来る方法が見つけられたらって思いで忠誠?的な事は言ったけど、今はそこまでエーベお兄様の下で働きたいとは思わないのよね」
私の言葉を聞いてマリウス兄さんはこめかめを抑えながら
「・・・。レイラ、お前『忠誠』って意味を理解しているのか?」
「だって、私達にも選ぶ権利ってあると思うんだよね?」
「それに今頃、お父様とお母様が叔父さんとその事について話し合いをしてくれるって言ってたし。」
「あ~!だから今日父上は溜息を付きながら夕食会に向かってたんだな」
マリウス兄さんは何かを思い出したように叫んでいた。
「まっ、そういう事です。」
私はそういうとソファーから立ち上がり部屋を出ようとした。
「レイラ」
そんな私に声を掛けるマリウス兄さん
「もちろんペナルティもあるわよ。今度、お母様主催のお見合いをするんだ。」
「・・・そうか。」
この国の王族は基本的に恋愛結婚で成り立っている。それを諦め多分親が決めた相手と結婚することになると思う。
「いいのか?」
心配そうに私の見つめるマリウス兄さん、きっと自分が呪いを受けなければこんな結果にならなかったと思ったのでしょうね。
「うん、直系王族の『忠誠』を無かったことにするんだもん。国外追放とかより全然軽いと思ってる」
「そっか・・・。」
「じゃあ、明日はお母様とお見合いの打ち合わせがあるからそろそろ自分の部屋に戻るね」
「ああ、分かった。おやすみ」
「おやすみなさい。マリウスお兄ちゃん」
子どもの頃の呼び方で夜の挨拶をした私はそのまま部屋を出ていった。
最後までお読みいただきありがとうございました。




