冬麗の陽気とうらはらにガチギレ王族と拳で和解
少しだけ長文です。2話にするには短かったので。
王太子殿下は壁に打ち付けられ気を失っているハルクさんを呆然と見ていた。
彼はすぐに立ち上がりハルクさんの近くに行こうとするが動揺しているのかソファーの近くにある机に躓いていた。
ハルクさんに腕を伸ばしていたがその指先は震えている。
王太子殿下の背後にうごめく魔物はそれを攻撃の合図とみなし気を失っているハルクさんに襲い掛かろうとするので私は慌てて魔法でその魔物たちを吹き飛ばした。
あっ、王太子の部屋の花瓶割っちゃったよ・・・。弁償かな・・・。謝ったら許してくれるかな。
少しだけズルを考えていたけど、このまま王太子をこの部屋にとどめておくのはダメだと思って、私はその震える指先をギュッと掴むと執務机の奥にあるバルコニーに向かった。
「少し移動しましょう!」
私は王太子をそのまま引っ張り上げると彼も私に身を委ねて立ち上がりそのまま二人で執務室からバルコニーに飛び出した。
私はバルコニーから周囲を軽く見渡すと一部開けた場所を見つけた。
「王太子、あそこは何をする場所ですか?」
「ああ、あそこは私のプライベート演習場だ」
王太子は呆然としながらも私の声かけに反応してくれた。
「じゃあ、あそこまで飛びますよ?」
「え?」
王太子が返事に困っているのを無視して私は全身に強化魔法をかけると王太子をお姫様抱っこしそのままバルコニーからその演習場に向かって飛び降りた。
「!!!!!」
さすがに悲鳴を上げる事は無かったけど、王太子が私の首元に両手を絡ませてギュッと掴んだ。
・・・ちょっとだけ可愛かったけど言うのはやめておこう。色々後で問題になりそうだもの。
さすがに王太子のプライベート演習場に部外者は一人もいなかったので私はこのまま魔物を処理しようと考えた。
私は王太子を片手で抱きしめながら襲い掛かってくる魔物をバッタバッタと倒していった。
魔物一体あたりの強さはそこまでないんだけど数がものすごく多いのよ。
エーベのお兄さんの魔力って底なしなの?
そろそろ王太子の周囲の人が気づいて人員の応援とかこないのかな?
こういう時って「お待たせしました!お手伝いします!」
とか何とか言ってこう、
普段は書類作業ばかりだけどいざとなったら無敵の側近の文官とか!
かっこいい騎士団長とか!
近衛の一番強い人とか!!!
もうとにかくこんな他国のか弱い乙女系王女に一人で戦わせるとか
ちょっとおかしいんじゃない?
私はだんだんとこの状況に怒りが湧いてきてさっきよりも早いペースで魔物をギタンギタンに倒していった。ふぅ。強いって罪ね。
「・・・もう止めて欲しい。」
私の胸元で囁く王太子の言葉に私は気づかずにそのまま魔物を倒していると
ドンッ
「痛ったい!」
王太子は突然私を突き飛ばし距離をとってきた。
「もう止めてくれないか!私はこのままずっと魔物を生み続けるバケモノになるしかないんだ!」
王太子は自分を掻き抱きながら「うぁ~」と叫ぶと魔物を生み出していた黒い魔力が翼に変化し始めた。
うっわ。これちょっとヤバいんじゃね?
私は自分の口元が引きつるのが分かった。本当に目の前で魔王が誕生しちゃうのかな?
私は魔王見届け人になっちゃうのかな?かなりものすごく嫌なんですけど。
「コンラート!アンちゃん!」
そこに私達を心配してきてくれた強力な助っ人が登場ね!!!
って思うじゃない。
私は遠くから走ってくる男性を目を細めて確認すると
「マリウス君の部下のラルさん?ダメダメ!ここは危ないから!」
私が淑女らしくない大声でラルさんがこちらに来るのを阻止しようとしたけれど気にする様子もなくこちらに向かってきた。
私は少し考えた。距離のあるラルさんを止めるのと目の前でちょっとだけ魔王になろうとしている王太子のどちらかに何かをしなければいけない場合はどうすればよいのか。
「うん。こうゆう時は近い方を処理した方がいいね」
私は一人で納得した後、まお・・・王太子に近づいた。
「こちらにこないでくれ!私はこのまま魔力を暴発させてこの身を消滅させることぐらいしかできないんだ!」
えーそんなことをしたらこの周辺一気に吹き飛びますよ。エーベの兄さん・・・。
私は自分の魔力をまといながら王太子に近づき両肩を結構強めに掴んだ。
「貴方はこの国の王太子なんでしょ?そんな身勝手に儚くなってもいい立場じゃないでしょ!」
「でも、私は自分が大切にしている者を傷つけようとしてしまうんだ。だれよりも家族を愛していると自負しているのに・・・。一番傷をつけてしまう立場になるなんて・・・。もう私は必要ないに等しいんだ。幸い私の後を継ぐ息子や仕事のできる弟たちもいる。最後にエーベの顔を見れたし・・・。」
えっ?なに一人で自分に酔って弱音吐いちゃってるの?この立場は意外と孤独って身をもって知っているんでしょ?甘えてるんじゃねぇ~よ。
「さっきから、人が優しく話を聞いていれば弱音ばかり!コンラート!」
「はひっ」
私のドスの聞いた言葉に普段からあまり聞きなれていないのか驚きながらこちらを見た王太子に向かって
「歯ぁ~食いしばれ!」
キョトンとした表情でこちらを見ている王太子に向かって
「甘えてるんじゃねぇ~よ~」
私は思いっ切り魔力を含んだ右手でコンラートの左わき腹に綺麗なストレートを入れた。
「グフッ」
コンラートは予期していなかったのか思いっ切りいい所に入りそれはもう綺麗に宙を舞いました。
ドシンと地面に叩きつけられた音と同時に
「コンラート!!」
ラルさんが王太子の傍に駆け寄りそっと抱き上げた。
「ラルさん!危ないかもですよ!」
王太子の魔力が無意識化で暴走する可能性もあったので声を掛けると、ラルさんはこちらを見ながら苦笑いをし
「こんなに綺麗に意識を刈り取られたら魔力の暴走も起こらないから大丈夫だよ。」
「そうですか。それは良かった。」
「アンちゃん、本当にありがとう」
「そんなラルさんにお礼を言われること無いですよ。」
私は両手で全否定をしていると
「いいや。私の息子の暴走を止めてくれて本当に感謝する」
「ラルさんの息子さん・・・?」
私は倒れている王太子とラルさんを見比べた。
そして空を見上げた。
少し肌寒いなっと思ったのはきっとこの国の気候のせいだけじゃないよね・・・。
・ジラルド・ヒエムス・セプテントリオ
現セプテントリオ王国の国王 通称 ラルさん
最後までお読みいただきありがとうございました。




