コンラート・ヒエムス・セプテントリオ 後編
エーベがこの国を離れてさらに数年の月日が経ったある日
「王太子殿下!この資料をご覧ください」
いつもは私のそばで作業をしている側近の一人が資料を持って部屋に入ってきた。
「珍しいね?急にどうしたんだい?」
「はい、実は魔物の発生件数がここ数カ月爆発的に増えております」
「魔物の?」
私は側近から渡された資料を眺めた。確かにここ数カ月の魔物の増え方が異常だった。
「この半年で去年の一年間の総出現数を上回っています」
側近が指を刺したグラフを確認した。確かに説明した内容と一致している。
「原因は分かっているの?」
「いいえ、原因不明です。ただ、いつもは国境の付近で発生しているのですがこれらの魔物は王都の近くの森で増えているみたいなんですよね」
「そうなのか。住民は大丈夫なのか?」
「はい。我が国の市民は基本的に強いですからある程度の魔物だと討伐できます。しかしどうしても数が多くなると打ち漏らしも発生しているので軍より警備隊を組みまして見回りを始めています」
「そうか、それは心強いね。それでも私に報告があるということは何か問題があるのかな?」
側近は私の言葉に少しだけ顔色を変えながら
「私は何も聞かされていません。ただ、この報告書を確認した後国王の執務室に来るようにと言われております」
「国王が私を呼んでいるのかい?」
「はい、さようでございます」
私は、分かったと言うとさっきもらった資料を紙のファイルに挟み国王が普段仕事をしている執務室に向かった。私に報告してくれた側近と私の従者と護衛艦も私を守るように一緒に部屋に向かっていった。
「コンラートかよく来たね。そこにお座り」
国王が慌ててやってきた私を見るとすぐに執務室のソファーに座らせた。
すると国王は近くにいた側近を全て下がらせて私と二人きりになった。
「コンラートの側近も下がらせてしまって悪かったね。本当はプライベートの時間に話すことができれば良かったんだけどどうしても時間を取ることが出来なくてね」
多分国王は勤務中以外で王妃と離れる事が嫌なんだろうなと思った。
「・・・。違うからね。お父さんはこう見えても色々忙しいんだからね」
私の考えていることを理解したのか視線をずらしながら言い訳をしていた。
「今日私をここへ呼んだのは魔物の件についてですか?」
私はさっそく本題を尋ねることにした。お互い忙しいのは間違いではないので少しでも問題は減らしていきたいからだ。
その言葉に今まで穏やかだった雰囲気が一気に緊張感に見舞われた。
国王の様子がおかしいのか?
「ああ、コンラートの言う通り魔物の件について話さなければいけないんだ」
国王の言葉に私は先ほど貰ったばかりの資料を改めて確認しながらどのように対策をしていくべきか考え始めた。やはり軍を少しは動かした方が良いのだろうか・・・。
「エーベはあちらの国で健やかに過ごしているのかね」
「ええ、もちろんです。こちら側の者もエーベの近くに付けていますし毎月彼から楽しく過ごしていると手紙も届きます。」
「それは良かった。」
「国王、このまま魔物が増えていくと市民にも影響が出てくる可能性があります。軍を動かす許可を頂きたいのですが。」
「コンラートはエーベの祝福の内容を覚えているかい?」
「はい勿論ですよ。大切な人を守るために与えてしまうものですよね」
「それよりも、軍についての許可を・・・」
国王も私と同じで効率を重視するタイプなのにどうしたんだろうか。話の腰ばかり折ってくるな。
「コンラートは不思議に思わないかい?」
「何をですか?」
「他国ではここまで魔物が増えているという報告が無い事に」
「えっ?」
私は国王の言葉を聞きながら最後の方に書かれていた他国の魔物の被害状況について確認すると確かに自国ほど魔物が発生しているということはなさそうだが・・・。
「父上・・・。もしかしてこれはどういう事なのかご存じなのですか?」
日に日に増えていく魔物。突然エーベの祝福に付いて話す国王。私の中で何かが積もっていく思い。
それらをまとめると導き出される答えは一つだった。
私は資料をそっと机に置き国王を見た。国王は小さく参ったなと呟きながら
「そうだよ。これらの魔物の増加はコンラートの祝福によるものだ」
自分が魔物を生み出すなんて恐ろしい・・・。私は魔王なのか・・・。
それから国王が色々とこれからの対策や魔物が増える原因などを彼自身がもっている資料を元に説明してくれたが私の頭の中には入ってこなかった。
「一番大切なのは、コンラートの心の安寧だよ。エーベを思う気持ちも大切だけど自分自身の心も大切にしなさい。」
その言葉は国王ではなく父親としての私へのアドバイスだった。
最後までお読みいただきありがとうございました。




