再び呪いを掛けた王子様 後編
・コンラート・ヒエムス・セプテントリオ 第一王子 王太子 通称:ラート兄上
・ラインハルト・ヒエムス・セプテントリオ 第二王子 通称:ライ兄上
・ブルクハルト・ヒエムス・セプテントリオ 第三王子 通称:ブルク兄上
引き続きエーベハルト(ハルト)視点です。
「えっ?今なんて言ったの?」
僕は従妹のレイラが何気なく話した内容に固まった。
「だから、マリウス兄様が塔の監視をコンラートお兄様からお願いされたって頭を抱えていたのよ!あそこに人が入るなんて何十年ぶり?なんでしょ?」
目の前の少女がお気に入りのお菓子を口に含めながら天気の話をするように教えてくれた。
マリウス・セプテントリオとレイラ・セプテントリオは父上の弟、つまり王弟の子ども達だ。
今の所王位継承権のない二人の名前と姓の間に『ヒエムス』という名は含まれない。
まあ、ラート兄上ほど王にふさわしい人物は今の所現れていないし、あんな面倒な立場を喜んでやっているのもラート兄上だけだと思う。
ただし、どの王族の下に付くかは別問題になってくる。僕達は人に対する執着心が強いがその影響は貴族にもみられるところがあった。
久しぶりにこの国に帰ってきた僕の下にさえ付きたいという変わった貴族もいる。
スペア以下の僕のどこがいいのかは本当に分からない。
その流れで、マリウス兄さんはラート兄上についてるし、この目の前でお菓子を美味しそうに食べているマリウス兄さんの妹レイラは僕の下に付いている変わり者の令嬢だ。
僕がこの国に帰ってきてから毎日ご機嫌伺いという名でお菓子を食べに来ている。
恋愛感情?僕はもちろんないが、レイラも無いと思っている。
どうして僕に付くのか、他の兄上の方が将来有望だと説明してみるが
「だって、エーベハルト兄様の方がなんだか面白そうなんだもん」
と言ってきたぐらいだ。
「面白いだけで将来を左右させていいのか?」
「う~ん。だって好きになった人を束縛するなんてすごいじゃない!私もそんな人の出会ってみたい~。同じぐらい束縛してあげるのに」
ウンウンと自分の言葉に納得しながら目を輝かせていた。
まあ、こういうところはこの国の王族なんだよなって思う。
「じゃあ、マリウス兄さんが毎日あの塔に行ってるってことなんだ」
「うん、そうよ~。初日から楽しそうに帰ってきたよ。美人さんなのかな?」
レイラには何も情報が入ってないらしい。確かに他国の第一王女を軟禁してますなんて変に国民にしれると面倒だもんな。しかし、レイラの言葉が気になった。
「マリウス兄さんは、楽しそうに帰ってきたのかい?」
「会話が楽しかったみたい。頭抱えて悩んでいたなんて思えないよね」
ぼくは自由に会えないのに、第三者のマリウス兄さんは楽しそうに会話しているんだ。ふぅ~ん。
「ねえ、エーベハルト兄様・・・ちょっと魔力が漏れてるかも・・・。」
レイラの表情が曇ってきた。しまった、ついマリウス兄さんに嫉妬してしまったかもしれない。
「今日は、もう戻った方がいいんじゃない?明日も遊びにきてくれるんでしょ?」
僕はやんわりと帰るように伝えると
「そっそうね。また、明日も遊びに来るからよろしくね~」
レイラは空気を読んですぐに部屋を出て言った。
一人になった部屋で僕はアンニーナの事を思い出した。
オッキデンス国であの愚かな王子達はアンニーナを混乱させたことは許せないけど、それがきっかけで僕の事を好きだという思いを自覚してくれたのに、きっかけを与えたあの王子に騙されてしまった事を未だに後悔し自分の気持ちに疑問を持ってしまったのは予想外だったな。
それだけ、僕の事を想ってくれていたのは嬉しかったけどね。
そんな気持ちが揺れ動いている時にマリウス兄さんがアンニーナと接触しているなんて・・・。
せめてお義姉さんを大切にしているラート兄上だったらまだ気持ちに余裕が持てたと思うんだけど。
「マリウス兄さんか・・・」
アンニーナを信じている気持ちを上書きするようにマリウス兄さんへのどす黒い裏切られた思いが募っていった。駄目だ・・・このままだとマリウス兄さんに攻撃してしまいそうだ。
「どうして、他の兄上じゃなかったんだ」
ライ兄上もブルク兄上も僕より魔力量は多いはず。もし攻撃してしまっても跳ね返してくれるだろう。
「でも、マリウス兄さんだとどうなるんだろう」
魔力量なんて機密情報に近い、兄弟ですら仲がいいからお互い教える事ができているんだと思う。
「ラート兄上はマリウス兄さんの魔力を把握しているからわざと僕に当て付けるように行かせたんだよね?」
僕は、マリウス兄さんが攻撃を受けてないように願い。
ラート兄上は全てを把握してマリウス兄さんにその命を出したことを祈った。
翌日
「エーベハルトお兄様!マリウス兄様が倒れました!侍医によると胸元辺りから呪いのような文様が現れているっておっしゃってまして・・・。何かご存じではないですか?」
いつも元気なレイラが青白い顔をしながら僕の方を見ていた。
僕は呼吸を落ち着かせてからレイラに聞いた。
「レイラは誰の近くにいたいの?」
レイラは一瞬目を見開きスカートをギュッと握りしめた後、前に来て跪いてから頭を上げ僕を見上げた。
「レイラ・セプテントリオはエーベハルトお兄様の傍にいたいです」
それは僕に忠誠を誓うという意味だった。僕はレイラの手をとってそっと立ち上がらせると
「うん。僕がマリウス兄さんに嫉妬して呪ったんだよ。」
レイラはその言葉を聞いて「そうでしたか」とだけ答えた。
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