冬麗の陽気とはうらはらに途方に暮れる
「アンニーナ様、おいたわしい・・・」
バレリアが私のシンプルな服装を見ながら自分の目元を隠した。
きっと自分の不甲斐なさに涙が出たのだと思う。
「まあ、人生こんな事もあるよね・・・」
あるのかな?あるわけないよこんなこと!
この世界の王族なのに特に意味もなく牢に入ることになった、どーも私です。
何が原因でエーベハルト王子のお兄様の逆鱗に触れたのか分からないけど牢屋に入れられました。
と言っても石畳で窓は天井近くでおまけに鉄格子が嵌められていて隙間から冷たい風が入ってきて・・・。みたいな牢ではないけどね。
他の国だと日当たりのいい場所とか移動しやすい場所とかすごく私が快適に過ごせるように考えてくれた場所なんだけど、今回はなんと棟の上層階です!一番上ではないんだけどね。
でも、外に出て(出れるんですよこれが!!)バルコニーみたいなところから下を見るとビュゥ~と冷たい風が結構な勢いで上がってきました。寒かったです。
あっ心配しないでね。部屋の中は一定の温度で保たれているし、暖炉の形を模した魔道具みたいな物の設置されています。浴槽もトイレも広めのクローゼットもあります。簡易キッチンも!
ただちょっと高い場所に部屋があるだけ。勝手に外に出れないだけ。バレリアが終始「おいたわしや~」っていってるだけだから。まあ、そういう意味ではバレリアしか話し相手がいないから退屈な日々が始まるんだろうな~って思ってました。
「へぇ~。アンニーナちゃんって言うんだ~。よろしくね~」
突然部屋がノックされて扉の前で護衛・・・看守のお仕事をしてくれている騎士みたいな人が声を掛けた後、その人は入ってきた。
一瞬だけエーベハルト王子と見間違えそうになったけど、髪の長さや髪色が微妙に違った。
私はバレリアに入れてもらったお茶を飲もうとしていたのでカップを持ったまま固まってしまった。
するとその人はスタスタと私の前の椅子に座った。
「突然ごめんね。コンラートお兄様に様子を見てくるように言われたんだ。」
「あっ。はぁ~」
私は気の抜けた返事をしながら飲もうとしていたカップを一度下に降ろした。
バレリアはすぐにもう一セットのお茶の準備をし、その男性の前に差し出した。
「あっ、ありがと~。さすがエーベの先輩だった人だね~。仕事ができるタイプだね!」
バレリアは男性の言葉に会釈だけしてその場を離れた。
その対応がとても気に入ったのか
「ちゃんと立場も弁えてすごい方だね」
と言いながら早速バレリアが入れたお茶を飲み始めた。私よりも先に。私がどうぞって言ってないけどね!
「うん。美味しい。ほら、アンニーナちゃんも飲みなよ!」
「はぁ~。では失礼します」
と言いながらいつものバレリアのお茶を頂いた。うん。ほっとするね。
二人ともお茶を楽しんでいたのでその場の空気感は何と言うか変な感じだった。
だってお互い初対面だよ?でも私だって王族の端くれ、腹の探り合いとかやっちゃうからね。
って言っても無言を貫くだけだけど!
お茶のお供にって出されたこの国の名物のお菓子を一口かじった。
想像以上に甘かった・・・。ストレートティーで良かった。
私は驚きながら食べていると
「それ、ちょっと甘いよね。子どもの頃は喜んで食べていたけど、今はちょっと苦手かな。もしそのお菓子を出してもらう時は甘味を控えてもらうように注文してるぐらいだもん」
「そうなんですね・・・。」
私はせっかく口にしたので最後まで食べ切った。めっちゃ甘かったけど。バレリアにお茶のお替りを要求するぐらい。
「うぁ~すご~い。最後まで食べたね。僕てっきり残すと思ったよ。ほら、王族って自由じゃん?」
まあ確かに権力とかありそうだし自由そうに見えるけど、実際はそんなことないかんね!
今だって、貴族用だけど牢屋暮らし突入だからね!
という訳にもいかずそのままバレリアに入れてもらった二杯目のお茶を飲んでいた。
口の中が中和されます。ふぅ~。
「そのお菓子、こんなに甘いのに市民たちが良く購入してるんだ。下手したらストックしてるって聞いたこともある。」
男性がお茶を再び飲んだ後
「この国って外には知られないようにがんばって隠しているけど、時々飢饉が起こるんだよね。まあ、外国に漏れないぐらいの頻度と規模だからそこまで大きな飢饉はまだ起きてないけど。そんな時に、このお菓子すっごく役に立つんだって」
その男性はさっきまで私が食べていたお菓子を一口でペロリと食べると
「うぅ~甘っ。保存食としても役に立つし栄養補給としても役に立つって教えてもらったんだ。ああいう時ってやっぱり体力のないお年寄りや子供から犠牲になっちゃうからね」
「だから、よその国から王族が遊びに来たからって見栄を張って豪華な食事を出すくらいなら何か理由を付けてこういうところに放り込んだ方がいいって思ったのかな?コンラートお兄様は」
男性は私を見て少し苦笑いをしながら
「って色々理由をつけてるけど、この話をまとめるとね?アンニーナちゃん!君、コンラートお兄様にめっちゃ嫌われているってことかな?」
男性は立ち上がり私の方を見ると
「という訳でこの度アンニーナちゃんを監視する役に仰せつかったエーベハルトの従兄のマリウス・セプテントリオだよ。よろしくね!」
マリウスさんは言いたい事だけ言って部屋を出ていってしまった。
私はマリウスさんが出て言った扉をしばらくぼぉ~と眺めていた。
マリウス君は直系王族扱いではないので”ヒエムス”は入っていません。
一応王位継承権がある人だけ名乗れる世界観ですっ!
アンニーナの国は制度が別だから間の名前はないよ!(後だしじゃんけん方式)
最後までお読みいただきありがとうございました。




