冬麗(ふゆうらら)の陽気とはうらはらにガチギレ王族に謁見する
「やっぱり寒いぃぃぃぃぃ~」
エーベハルト王子の説明を列車内で聞いていたけど、外に出ると空気が私を攻撃してくる!と思うほど冷たかった。お肌が痛いよぉ~。
でも、こんなに寒いのは初めてだったので少しテンションが上がってました。
寒い~寒い~と言いながらはしゃいでしまった。はい。バレリアには注意されました。
〝そんなお年ではないでしょう〟と。グスン、私はいつまでも少女よ!少女!
「懐かしいですね。この寒さ・・・」
エーベハルト王子は嬉しそうに気管さえ凍えそうな冷たい空気を肺の中に取り込んでいた。
すごいね。私には無理かも。
そしてね、実は会話をするたびに息が白いのでぇ~す!すごくない?鼻が赤くなってるのが実感できるぐらい鼻に熱が持っているのも分かる。
とにかく初めての経験を全身で受け止めるのにとても苦労したよ。楽しいけどね。
「姫、あまり外に居続けると体調を崩す恐れがあるので早く温かい所へ移動してください」
「そうですね。セプテントリオ国の方たちも待機してもらっていて悪いわね」
さすがに傍仕えのハルトの時の様な気安さはこの国の貴族の視線もあるので遠慮してしまった。
ただ、私が遠慮すればするほどエーベハルト王子は落ち込んでいった。
「今はまだ私達の関係に不安を覚えるかもしれませんがこの国にいる間には元の関係に戻したいと思っていますからね」
私はエーベハルト王子の言葉に答えず微笑むことだけに留めた。
何度も自分の中で考えてはいるのだけど答えが見つからないからだと思う。
確かに私は、メリーディエース国で倒れているエーベハルト王子を一目見て恋に落ちた。
この人かも!って思ったんだ。でも、かなり苦しんでいる状態だったから目も合わせる事ができないまま私はその場を離れた。
そして、オッキデンス国でエーベハルト王子だと思った人と親しくなれたと思った。
私は見た目でしか彼を判断することができなかったから「レイ」という名前も信じた。
レイとの時間はやっぱり楽しかったし、オッキデンス国の綺麗な名所を見せてもらって嬉しかった。
でも、それは偽物だった。私は一目ぼれと言いながらも本当のエーベハルト王子ではない王子に恋漕がれてしまったんだ。
一度でも間違えてしまった私にエーベハルト王子の想いを受け入れる資格は本当にあるのだろうか?
やっぱり好きかもっていう感情と自分は裏切っていたんだよなに考えているの?って責める感情がいつも混ざり合って私の心の中を塗りつぶそうとしてくるの。
そんな迷っている私をエーベハルト王子も気が付いているらしくいつものように人懐っこく私に話しかけるけど何となく距離をとってくれているのが分かるの。
そんな優しさ、余計に苦しくなるだけだよ。
セプテントリオ王国の駅のエントランスに着くと、他の国と同様に市民の皆が両国の旗を持って歓迎してくれていた。
そして、エーベハルト王子の久しぶりの帰国に肌寒さを忘れるぐらい熱狂的に歓迎されていた。
車に乗り込むと、久しぶりのアルカイックスマイルに疲れたエーベハルト王子が小さく溜息をついた。
そして、私の方を見ると少し照れくさそうに鼻の先を掻きながら
「ああいう公式の場に王族として出るのは久しぶりだったので少し疲れてしまいました。それをいつも当たり前のようにこなしている姫はやっぱりすごいですね」
と私を見ながら感心していた。
「・・・でも、エーベハルト王子もこちらでずっと過ごすことができたなら、きっと今の私と同じようにこなすことができたはずですよ・・・」
「いいえ、所詮僕は第四王子ですからね。公式の訪問なんて無いに等しいですよ。だって優秀な兄が上に三人もいるんですよ?」
「そういうものなんですかね?」
私はたいてい一人でこなしていたのでその感覚はイマイチ理解できなかった。
どうしても同時に行われたイベントがある場合はエーヴィーが行ってくれてたかな。
「そういうものなんですよ」
エーベハルト王子がニコリと笑いながら答えたので、本当に上三人のお兄様方は優秀なんだろうなと思いながら近づいてくるアーテル城を眺めていた。
アーテル城に到着するとすぐにエーベハルト王子と別行動になった。
普段は別の所に住んでいる王子達のご両親がエーベハルト王子の帰国に合わせて帰ってきているらしいので先に挨拶に行くようにと一番上のお兄様からの伝言らしい。
そして
「プロヴェンツァーレ王女様は、先にコンラート王太子様との謁見がございますのでよろしくお願いします」
と頭を下げながら言われた。
私は「はい」と言った後、その人について行った。
豪華な謁見室には既に何人かのセプテントリオの貴族たちが待機していた。
皆私を見ると佇まいを直し頭を下げた。バレリアと私の護衛たちは外で待機となる。
「コンラート王太子様、プロヴァンツァーレ国王女 アンニーナ・プロヴェンツァーレ様がご入室いたしました」
別室で待機していたコンラート王太子に側近の誰かが声を掛けた。
すると、すぐに似たような容姿の男性三人とその後に何人かが入室してきた。
私はさすがに圧迫感があるなと思いながらも立ち上がりコンラート王太子にカーテシーをした。
「この度はセプテントリオ王国への入国の許可を頂き誠にありがとうございました。私プロヴァンツァーレ王国 第一王女 アンニーナ・プロヴェンツァーレと申します。以後よろしくおねがいします」
と挨拶をすると
「初めまして、私はエーベハルトの一番上の兄のコンラート・ヒエムス・セプテントリオだよ。そして両隣に立っているのはこっちが二番目の兄のラインハルト・ヒエムス・セプテントリオ、反対側が三番目の兄のブルクハルト・ヒエムス・セプテントリオだよ」
コンラート王太子は薄く微笑みながらエーベハルト王子の残りの兄の紹介もしてくれた。
「よろしくね。アンニーナ姫」
「おっ!よろしくな」
二番目の兄は穏やかな方で三番目の兄は豪快な人なのかな・・・?
「さて、アンニーナ王女早速だけど・・・」
コンラート王太子は表情を変えないまま
「このまま君には貴族牢に入ってもらうことにする。侍女は一人だけつけることを許可しよう」
「はい?」
「以上で謁見を終了する。なおプロヴァンツァーレの者たちは城への入城は基本禁止、近くに民間の宿を手配しているからそちらに移るように伝えよ!」
「「「ははっ」」」 臣下であろうその場にいた貴族たちが一斉に返事をした。
私は驚きながらも少しだけ冷静になり
うん、一番上の兄は一番嫌われると面倒な方だったんだなって思った。
最後までお読みいただきありがとうございました。




