あかねさす木漏れ日が闇に覆われる 後編
大型の魔物とのデートをダラダラとしているのも嫌なので、私は周囲を壊さない程度の魔力量をガンガン魔物にぶつけていた。ダメージを負っているのは目に見えて分かるんだけど決定打にかけているような気がする。
「えぇ~ん、エーヴィー助けてよぉ~」
多分私一人だと五分五分なんだと思う、もう一人私レベルの人が来てくれたら助かるんだけど・・・。
私の悩みに魔物は気が付いてくれるはずもなくガンガン襲ってくる。
「って言うかオッキデンスって魔物を間引いてないのかな?小型の数が多いのは仕方がないけど、大型がここら辺に出没するってちょっと安全面心配なんですけどぉ~」
私は一人だったので愚痴を言い始めた。
誰も聞いてないから・・・いいよね?
私はブツブツ文句を言いながら大型の魔物を少しずつ弱らせていた。
そろそろ魔物も命の危機を感じ始めたらしく死に物狂いでこちらに向かってくる。
私はギリギリの所を何度か避けそのまま後ろに後退しようとした時、石がひっかかりバランスを崩した。
「しまった!」
私は焦りながら体のバランスを保とうとしたが魔物の攻撃の方が少し早かった。
思わず目を瞑ると
「姫!」
聞いたことのない声が私を呼んだ。
一瞬刺客かと思ったが、余程の手練れじゃないと私をヤッたとしてもあの魔物には負けるからとりあえず味方判定にした。
すると、バランスを崩していた体をぐっと支え立ち上がることができた。
私はその人にお礼を言うために振り向き
「ありが・・・」
言葉をかけるつもりだったが目の前にいる人はさっきまで隣にいた人のはずなのに・・・
「とりあえず説明は後で、先にコイツをやっつけましょう」
と言われたので頷くしかなかった。
「OK、じゃあ、貴方は足元をメインに攻撃してくれる?私はもう片方の腕を潰すわ」
「お~怖っ。姫って本当に武闘派なんですね」
「いやいや、王族ならこれくらいできないと居残りじゃないの?」
「まっ、確かにそうですね。じゃあ、行きましょう」
初めて会う青年なのに怖いぐらい息がピッタリだった。
私の苦手な個所を補うように攻撃してくれる。
そして、私も彼の苦手なところをなぜか理解していた。
「姫、これで最後に!」
「そうね。ハルトは左から回って。私は逆から行くわ」
「了解!」
二人の最後の攻撃でついに大型の魔物は戦う意思を失いそのまま倒れこんだ。
「どうします?」
「私が最後までするわ。」
私は大型の魔物の息の根をきっちり止めた。
彼は私の次にその魔物の生死確認をし、こちらを向いてうなずいた。
少し離れたところにレイがいたので私はそちらに向かって駆け寄った。
無事でよかったって思う気持ちと確認しなきゃいけない現実を突きつけられた。
レイを守るために全身に張った自分の魔力を全て回収する。
そして、その魔力を空中で解放した。
すると、本当のレイの姿が現れた・・・。
「フォンユ王子でしたか・・・」
全然分からなかった。本当にレイが自分の大切な人だと思っていたのに。
私は一体誰に何を想っていたんだろう。
そう思うと虚しさと悲しさで胸が苦しくなった。
「アンちゃん・・・」
声はレイのままなんだね。とかつまらない事を考えてしまう。
レイが私の手を取ろうとしたとき、ぐっと体が後ろに引っ張られた。
その青年は、ミンユ王子とフォンユ王子を先に馬車に帰した。
私は振り向くのが怖かった。でも、このまま逃げるわけにはいかない。真実を確かめなきゃね。
振り返りその青年を改めて確認する。彼は嬉しそうに私を見ている。
「姫・・・。」
「貴方が本物なのね・・・。ハルト」
私がその青年をハルトと呼ぶと少し悲しそうな表情をしながら「はい」と答えた。
「で、本当の名前を教えてくれますか?」
「アンニーナ・プロヴェンツァーレ王女。この姿でお会いするのは二回目なのですが改めてご挨拶させてください。私はセプテントリオ国第四王子のエーベハルト・ヒエムス・セプテントリオと申します」
「セプテントリオ王国の王子様だったのね。ハルト」
「はい。そうです。姫」
「随分とお待たせしました。そして、今まで黙っていてごめんなさい」
ハルトは私の前まで来ると頭を下げた。
「そこらへんの話は後でゆっくり聞くとして」
「私は・・・」
「本当に貴方の事が好きなのかしら・・・」
分かんなくなっちゃった。と苦笑いをしながらハルトに伝えると
「姫・・・。これからゆっくり分かってもらいます。貴方の傍仕えのハルトではなく、エーベハルトとして・・・必ず・・・」
気が付けばハルトは私を抱きしめながら、私に言い聞かせるように、自分自身に言い聞かせるように決意をもって話していた。
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