あかねさす木漏れ日が闇に覆われる 前編
アンニーナ視点に戻ります
「着いたよ」
私はレイが立ち止まったので一緒に立ち止まると目の前には綺麗な湖が広がっていた。
湖は自分の国にもあるけど、赤々と燃える葉が湖に鮮やかに反射してとても綺麗でとても壮大だった。
「すごいね・・・。」
私はその言葉しか思い浮かばなかった。
レイはこちらを見てフフって笑うと
「ここの景色を見た人はみんな言葉を忘れるんだよ。僕達は小さい頃から眺めていたから慣れたけどね」
「そうなんだね」
遠くを見ていると引き込まれそうな景色だった。
「もう少し休憩したら、今度は王都が見える高台まで行こうと思うんだ。そして、そこで昼食を食べる予定」
「うん。楽しみ」
レイの提案に私は頷くともう一度その湖を眺めた。
風が少し冷たいかな?と思っていると背中に温かいものを感じた。
「ん、これ。風が冷たく感じたから僕のでよければ」
「ありがと」
どうやらレイは多めに着ていたらしく上着を私に譲ってくれた。
とても静かに流れる風景に別れを告げるといつの間にか少し離れたところで小ぶりの馬車が止まっていた。
「あの中に昼食も用意されているんだ。さすがに高台まで歩いていくとお昼に間に合わないからね」
レイはそう言うと再び私の手を引き馬車までエスコートしてくれた。
馬車の中は外より暖かかった。私は上着を脱ごうか悩んでいると
「すぐに目的地に着くと思うから着たままの方がいいよ」
と言われたのでそのまま着ることにした。
しばらくすると馬車がゆっくりとスピードを落としていった。
どうやら目的地に着いたみたいだった。
「じゃあ、降りるね」
レイが先に馬車から降りて次に私が降りる。もちろん、レイは手を差し伸べてくれた。
「ありがと」
「どういたしまして」
二人で微笑みあいながら馬車から離れた。
「ほら、あそこだよ」
レイが指さした場所には、既にテーブルがセットされていた。
椅子を引いて私を座らせるとレイは向かい側に座った。
「うぁ~ここもすごいね!」
そこまで高さは無いが城下町が一望できる場所だった。
「ほら、あそこがマルシェであの公園、見える?あそこが僕達が出会った所だね」
「へぇ~意外と近くに見えるね」
二人で一通り景色を見終わると机の上に設置されていたバスケットを開け軽食を食べながら色々とお話しをした。
最後に温かいお茶を飲み終えると、二人で食べたものをバスケットに片づけた。
これらは後で誰かが取りに来てくれるらしい。
至れり尽くせりで申し訳ないなって思った。
すると突然レイが何かを思い出したように
「あっ!そうだ!実は少し奥まった所にすっごく美味しい実をつける気があるんだ!少しだけよってかない?」
「へぇ~。レイって意外とやんちゃなんだね~」
「男の子は誰だって通る道でしょ!」
レイはウインクをしながら私の手を握ると木が生い茂った方へ歩いていった。
「ん~」
私は思わず無意識に唸った。
「どうかしたの?」
「あっちょっと気になることがあって」
ここって魔物が生息しているのかな?って聞いてもいいのだろうか。
「何?珍しい植物でもあった?」
レイは少年の様に目を輝かせながら私に聞いてきた。
私はレイと手を繋いでいない右手に魔力を込めながら
「そうだね・・・。私はお初にお目にかかりますだね!」
と言いながらレイの背後に迫っていた魔物に魔力をぶつけた。
レイは魔物は見慣れていないのかな?本気で驚いていた。
「結構囲まれてるかも?」
レイの方が地の利があると思いお任せしていたが・・・そうでもなかったみたい。
「こっこっち!」
レイは慌てて私の手を引くと来た道と逆の方にどんどん進んでいった。
これ?大丈夫そ?
「レイ?」
「どうしてこんなに魔物がいるんだよ~」
「レイ!」
少しパニックになりかかっているレイを落ち着かせるために強めに名前を呼んだ。
「うわっ」
するとレイがいきなり立ち止まった。
「いてっ」
私は、好きな人の前という事をすこぉ~しだけ忘れて、素で対応してしまった。しまった・・・。
「どうしよう。前からも・・・」
私はレイの背後からそっとこんにちはをすると数匹の魔物がこっちに向かっていた。
もう少し乙女のアンニーナでいたかったけど・・・。無理だね。
「レイは、魔物と戦えるの?」
「えっ少しだけ」
「じゃあ、基本的には私の後ろにいてね!」
「はっはい!」
私はレイが不安にならないようにニコリと笑うと手始めに前から勢いよくやって来た魔物を〝エイッ♩〟と言ってやっつけた。好きな男の子の前だからね。エイッて感じで!
「えっ、アンちゃん、強いね・・・」
と言いながらも私が打ち漏らした魔物を後ろから仕留めてくれていた。
「まあ、王族だったらこれぐらいのレベルの魔物は一人で狩れないとね・・・。お嫁にいけないよね」
「そうなの?プロヴェンツァーレってすごい国だね!」
「えへへ、そうでもないよ」
と私は照れながら反対側の魔物も蹂躙・・・ううん。キャッ、こわ~いって言いながら蹂躙した。
「ふぅ~とりあえず、こんな感じかな?」
私は両手を叩いてから眉毛あたりに手を敬礼するように置いてとりあえず残党がいないか確認した。
こっちの方がかわいく残党の確認をしているように見えるかもって思うじゃん?
「ありがとう、アンちゃん」
「どういたしまして」
二人はお礼を言い合って周囲の魔物の数を確認した後、とりあえず馬車がある所まで戻ろうかという話になった。
しかし・・・。
「とりあえず、この子をなんとかしてから・・・って話だな」
馬車への道には2メートル級のクマみたいな魔物がこちらに向かって威嚇しながら手を振り上げようとしているところだった。
「急に出没するとか、本当に止めて欲しい・・・」
私は自分にだけ聞こえる音量でぼやいた。
最後までお読みいただきありがとうございました。




