完全に呪いの解けた王子様 前編
ハルト視点です。
「えっ?姫は外泊ですか?」
僕は明日の予定を確認しようと姫の部屋を訪れるとユーリア先輩にそう告げられた。
隣にいたメイリンさんもニコニコ笑いながら頷いていた。
「では、お妃様方への挨拶はどうされたのですか?」
この国のお妃様方は姫をたいそう可愛がっていると使用人の間でも囁かれるぐらい仲がいい。
姫が挨拶を忘れて関係が悪くなるのはあまりよろしくないなと思っていると
「王妃様方も公認なので大丈夫ですよ!」
メイリンさんの言葉に僕は違和感をもつ。
お妃様方も姫の外泊を認めているということは何か知っているのだろうか。
とりあえず、姫がいないので明日の予定を確認する事ができないと判断し僕はそのまま姫の部屋を出た。
途中でバレリアさんに出会ったので姫の事を確認するとバレリアさんは誰もいない部屋に僕を引き入れた。
「どうやらアンニーナ様の想い人がこの国にいるらしくて」
「はい?」
僕はバレリアさんの言葉を理解できなかった、姫が好きな相手がこの国いるなんて。
「どこかで出会ったのでしょうか」
僕は気持ちを落ち着かせながらやんわりとバレリアさんに事の経緯を確認した。
すると、前回の城下町での散策の時にその人と出会ったらしい。
僕はその時何をしていたんだ・・・。確かマルシェで知らない人に話しかけられて対応をしていたんだ。
でも、姫はそんな話を僕にはしなかった。どうしてだ?
っていうかメリーディエース国を出てから姫の対応が少し変わったような気がしていた。
前は少しは僕の事に気があるような雰囲気を出していたが、今では全く普通に上司と部下の関係だったような気がする。
一体何が起こっているんだ・・・。
僕意外の誰かの魔力が姫に入ったり他の人を想ったりしたら僕の方の魔法陣にも何かしらの影響があるはず・・・。それどころか近頃は綺麗に彼女の魔力の色が僕の肩に咲いていたんだ。
バレリアさんにはとにかく今できる事は見守ることだけと言われた。
姫の何を見守れというんだ!僕はバレリアさんと別れると自分に与えられた部屋に戻った。
不安になり上半身を脱いで浴室に向かうとそこには煌々と姫の魔力色に魔法陣が染められている。
それをそっと撫でると心が満たされる。こんなにも僕は想われている・・・はずなのに。
翌日、あまり深く眠る事はできなかったがとりあえず身支度をすると姫の部屋に向かった。
そこには主のいない部屋で使用人たちが一生懸命仕事をしている姿があった。
「おはよ~ハルト!」
ユーリア先輩が元気に挨拶してくれた。
「おはようございます。ところで姫は?」
今朝こそ姫に会いたいと思った僕はすぐにユーリア先輩に確認した。
「アンニーナ様ならまだ戻られていませんよ。当然今日の公務はキャンセルしてくださいね」
近くで作業していたバレリアさんが当たり前のように言ってきた。
「姫は・・・いつ戻られるのですか?」
僕の声は震えていたかもしれない。正直聞くのが怖かったでもそれ以上に近くにいないことが怖かった。
「さあね・・・。やっとアンニーナ様にも春が来たのだからそっとしておきましょう」
バレリアさんの言葉に僕の心が傷ついた。
「では、今日の面談のキャンセルを相手側に伝えてきます」
「はい、お願いします」
僕はそう言うと退室した。
今日の面談は数件しかなかったから午前中に終わることができるだろう。
姫が城に戻ってくる時期が分からないから次の予定を立てる事もできないしね。
淡々と仕事を処理していくと予定通りに午前中に終了した。
昼食をとった後午後からの予定がないので一度部屋に戻ることにした。
部屋に戻り自分の肩を確認すると相変わらず美しく魔法陣が輝いていた。
「姫・・・アンニーナ」
僕は嬉しいよりも苦しい気持ちが上回ってしまう。
どうしてだ、僕の事を愛しく思ってくれているのに
どうしてだ、そばにいないなんて
最後までお読みいただきありがとうございました。




