呪いを早く解除するように注意された王子様
アンニーナ・プロヴェンツァーレ
ハルト(アンニーナの傍仕え兼側近)
カロル・アエスタース・メリーディエース(第一王女)
ナタン・アエスタース・メリーディエース(カロルの弟)
ラウル・アエスタース・メリーディエース(王様)
ハルト視点です。
温かい魔力が僕の中に入ってくる。誰なんだろう。
うん、知ってる。僕が魔力を受け入れる事ができる人なんて家族とあの子しかいない。
自分で祝福って言いながら結局呪いが発動するなんて馬鹿だなって自分で笑ってしまう。
違う、これは呪いなんかじゃないあの子を苦しめてしまったペナルティーなんだ。
ありがとうって言いたいけど声が出ない。心臓に絡みついていた何かが徐々に剥がれていく感じがする。
あの子の顔が見たい、僕は頑張って首を動かしたけど長い黒髪が逆に視界を遮った。
あ~彼女の顔が見たいな・・・。
すると、彼女は魔力を流しながら髪をそっと耳にかけてくれた。
そして僕をずっと見つめてくれている。
「ありがとう。」
頑張って口を動かしたけど、やっぱり声は出なかった。
アンニーナは少しだけ微笑むと僕の手をそっと離し部屋から出ていった。
そっか、彼女が探しているのはハルトとカロル王女。今の姿の僕じゃあないんだな。
寂しい・・・。でも仕方がない。早くこの姿でアンニーナの傍にいたい。
さっきまで彼女が握っていてくれていた手をもう片方の手でそっと包むと僕は再び目を瞑った。
「ハルト!大丈夫か?」
カロル王女が僕の方をそっと揺らし起こした。
さっきまで苦しかった胸や肩の痛みはすっかり消えていた。
「すみません。ご迷惑を・・・」
と言いながら僕は起き上がった。うん。眩暈とかもないから大丈夫。
「大丈夫かい?子ども達が大慌てで僕の所に来たから少し驚いたよ」
どうやらカロル王女達は国王まで呼びに行ってくれたらしい。
「本当にご迷惑を・・・」
「いいよ。ハルト君が元気になったんだったら僕も安心だからね」
ラウル国王は、ニコリと笑うとカロル王女達に声を掛けて部屋を出ていった。
「本当に驚いたよ。ハルトは一体どんな呪いにかかってんの?」
ナタン王子も僕をジロジロと見ながら尋ねた。
「・・・これは呪いではありません。ただの約束ですよ」
「「約束?」」
カロル王女とナタン王子は声を揃えて聞いてきた。
「そうです。運命の人とすれ違わないように、ずっとそばにいる事を約束した結果なんですよ」
僕の言っていることを理解できないナタン王子は「分かんね~」と言いながらソファーに座った。
「そこまで想っているのならどうして本人に確認しないの?あっこれ二回目だよ~。同じことばっかり聞いてる」
「気づいて欲しいじゃないですか」
「気づく?」
「はい。お互いに認めたからこの祝福は成立したのに、いつの間にかそれを忘れてしまっているなんて思いもしませんでした。」
「それは何か理由があるんじゃないの?」
「それが分かれば苦労しないのですが・・・。」
僕は苦笑いをしながらカロル王女に愚痴をこぼした。
「で?君は一体誰なんだい?」
ナタン王子もさすがに自分の父親が乗り込んでくるぐらいなので使用人ではないという事は理解したらしい。
僕は立ち上がると
「初めてお目にかかります。私は、セプテントリオ王国の第四王子エーベハルト・ヒエムス・セプテントリオと言います。以後お見知りおきを」
と言いながら小さく会釈をした。
僕の自己紹介に二人は目を丸くして驚いた。
「えっえっ待って。セプテントリオってあの人嫌いな王族の国の所?」
「カロル姉上、そんな言い方駄目じゃないんですか?ほぼ鎖国状態の国ってやつですよ!」
いやいや、二人とも同じぐらい酷い言い方だからね。
っていうか鎖国状態ってほどでもないと思うんだけど。兄様はまぁ、基本的に身内にしか興味ないのは分かるけど・・・。
「じゃあ、ハルト王子はずっとアンニーナの傍にいたいために使用人になってくっついてんの?」
「あっ、王子は付けないでください。普通にハルトと呼んでいただければ。まぁそうですね。」
「なんか、凄いね・・・。私はアンニーナをお嫁にしたいって言ってたけど辞退するわ」
ああ、そうしてくれ。お前なんかに譲らん。
僕はナタン王子に微笑みながら
「それは助かります。僕も余計な争いは極力避けたいので」
と忠告しておいた。
「まあ、ハルトがそこまで元気を取り戻すことができたのなら大丈夫かな?さすがに夜も遅いから窓から出ていってくれる?」
「そうですね・・・。そうさせていただきます」
「あ~、アンニーナはどうしてお見合いなんてしてるんだろうね~」
「本当に僕も知りたいですよ。」
「そりゃ~、王子様が目の前に現れないからじゃないのかい?」
「さすがに実体がない魔法陣だけの相手に恋に落ちろなんて無理な話だと思うよ。この国では大丈夫だけど、早く本来の姿で本当の気持ちを伝えないと全て失うかもしれないよ?」
カロル王女の言葉がなんか嫌な場所に引っかかった。
「早く気づいてもらえるように善処します」
「じゃあ、事件も解決したし早く自分達の部屋に戻ろうぜ~!」
ナタン王子の一言で僕たちは解散することになった。
最後までお読みいただきありがとうございました。




