再び呪いの解けた王子様
前回のハルトが午後から休暇を取った時のハルト視点
途中からカロル王女視点になります。
文官との打ち合わせと書類を作成すると、その文官は本当に急に呼ばれていたらしく他の仕事の期限が迫っていると困っていたので僕が書類を渡しに行くことにした。
しかし、今朝突然肩の痛みに襲われ嫌な予感がしたので今日は珍しく午後から休暇を貰い部屋にこもり鏡でその痛みが発生している場所を確認してみると
「これは、あの時の茨?」
オリエンス国でも出現した茨だった。あの時はアンニーナの茨に連動する形で出現したが今回はどうやら僕だけのようだった。しかも、すごく痛い。
「えっどうして?まるで僕が原因でペナルティーを与えられているみたいなんだけど?」
僕は、アンニーナを裏切るわけがないのにこの魔法陣はそう判定している。
ん?判定しているのか?
じゃあ一体誰が僕にペナルティーを与えているんだ。
「考えられるのは一人だけか」
縛られた相手が僕に対し疑念を持っているという事なのか
「もしかして・・・。焼きもちとかやいているの?」
今朝のアンニーナは刺々しい雰囲気があった。僕の事を避けようとしていたし滅多に言わない嫌味もいってたな。
「アンニーナが僕に嫉妬してるの?」
そう考えると心の中に喜びが湧き出る。彼女が僕の為に苦しんでいる。僕の為に悩んでいる。
想像するだけで心がくすぐられる優越感。少し歪んでいるかもしれないけどこれも愛情表現の一種だと思うんだよね。
「くッククク。」
「ウッ」
笑いが止まらない・・・。けど、これちょっと痛すぎるんだけど!
僕は気休めでその魔法陣を押さえつける。いつもはただ静かに刻まれているだけなのに燃えるようにそこが熱い。
「アンニーナは僕の事意識してくれるようになったのかな?早く気づいて欲しいんだけど」
痛みが治まらずそのままベッドで休むことにした。
眠れば少しは痛みが治まると思う。
愛しいアンニーナの夢が見れればいいんだけど。
結局夢を見ずに夕方になってしまったので急いでカロル王女に書類を渡しに行くことにした。
今日中に渡さないと面倒な事になるしね。
文官の執務室に書類を持っていくと
「ハルト殿でしたか。もしハルト殿でしたら王女が直接書類を貰いたいとおっしゃっていたので申し訳ないですがお部屋までお願いします」
と言われたので渋々持っていくことにした。
すれ違うメリーディエースの使用人の人たちに軽く挨拶をしながらカロル王女の部屋の近くまで行くと
「あっ、ハルト!」
親し気に僕の名前を呼んでくる。あまりいい気分ではない。
「カロル王女、これが今朝話し合った内容を書面にしたものです。お渡しするのが遅くなりすみません」
そういいながら書類を渡すと「ありがとう~」と言いながら受け取った。
「ん?ハルト、君なんか変じゃない?」
「変とは?」
カロル王女は何かを考え込むようにしながら僕の前に立ちはだかり少しずつ壁際に追いやられる。
「変なものが君から感じるんだけど?え~これ何?初めてかも!!」
カロル王女は興味深げに僕に近づき、その変な物の原因を突き止めようとする。
「前にも言ったけど結構嗅覚に自信あるんだよね~」
どうして、嗅覚なのか何度聞いても理解できない。
「ちょっと待ってね、今朝はうなじまで嗅いだから次は肩かな~」
目をランランとさせながら上から覆いかぶさってくる。悔しいけれど彼女の方が今は背が高いので身動きができない。
男性だと強引に身をはがしてもいいんだけど、一応女性王族なので安易に触れたくはない。
そして、鼻が近づくという事は物理的に顔全体が僕の体に近づいてきた。
ピリッ
その時、左肩に痛みが走る。今朝と同じ痛みだ。もしかして・・・。
僕は、カロル王女の体から自分の顔をずらすとそこには、驚いた表情のアンニーナがバレリアさんと一緒に立っていた。
待って・・・。この状態・・・。アンニーナは何を想像するだろうか・・・。
カロル王女の間から声を掛けようとしたとき、アンニーナはバレリアさんの手首を掴みそのままどこかへ走り去った。
多分、自分の部屋に戻ったんだろう。そうであって欲しい。こんな夜遅くに王宮と言えども女性二人で動くのは良くないと思う。
「さあ、ハルト(匂いを掻く)続きをしようじゃないか!」
この人、アンニーナの事気にせずによくもまあ人の匂いを嗅ごうとするな・・・。
「もう止めて・・・。」
僕は強く拒絶しようとした時、体中の血液が逆流するような衝撃を受けた。
「ハルト?」
そして、動悸と共に目まいがおき立っていられなくなった。
そのままカロル王女の方に倒れこむと
「おい、ハルト、君魔力がおかしくなってるぞ?」
カロル王女の声が遠くで聞こえてくるが意識を保つことができなくなる・・・。
「すみま・・せん」
その言葉だけを残し意識を失った。
※※※
アンニーナの使いの者が書類を持ってくると聞いたのでハルトだったら直接持ってきてもらうように役人に伝えていたが夕方になるまで彼がやってくることは無かった。
食事を終えたぐらいに私の部屋に向かっていたハルトに出会うと、随分体調が良くないように見えた。
体調が良くないというか、ん~なんだろ?ハルトの周囲に変な魔力が渦巻いてる?
私は気になって今朝の続きと言いながらその気持ち悪い魔力の発生源を匂いでかぎつけようとした。
・・・。鼻が一番優秀なんだよ。仕方がないだろ?魔力の目視はできるけど見えるだけで異常性は分からない。でも匂いはやっぱり変な奴は匂うからな!
私はこの変な魔力にとても興味を持ってしまった。気になったら最後まできっちり知りたいでしょ?
肩の辺りの匂いを嗅ごうとしたとき、ハルトは私を避け何かを見つけたみたいだった。
自分も振り向こうと思ったが、その時気付いてしまったんだ。
肩!左肩から匂うぞ!
ハルトの挙動も気にせずに当たりを確定させるためにもう一度ハルトの肩に確認しようとしたときハルトが私の方に倒れこんできた。
「ハルト?ハルト!」
気を失ったハルトを持ち上げようとした時
「カロル姉上?」
ナタンが前を通りかかったので「おい!ハルトを私の部屋に連れていくぞ!」
「ええ!何言っているんですか?頭大丈夫ですか?」
ナタンが少し悪口言いながらハルトを持ち上げて私の部屋まで運んでくれた。
最後までお読みいただきありがとうございました。




