炎る日差しに立ち込める暗雲 Ⅳ
私は、再びモリーさんと一緒に部屋へ戻った。
体調がよくなさそうだったハルトは部屋につくまでになんとか落ち着いたみたいでよかった。
「姫、どうして別の文官を連れてきたのですか?」
ハルトが少しいじけながら私に確認してきた。
「別に・・・。ハルトは色々忙しそうだったから他の者に頼んだだけよ」
いつもよりそっけなく返事をしてしまう。
大人げないって分かっているけど、どうしても感情の処理をうまく制御できない。
「そうですか、では僕は先ほどの方と書類について打ち合わせに行ってきます。今日もユーリアさんに担当してもらってくださいね」
「ええ、分かっているわ」
ハルトは小さな声で失礼しました。と言った後部屋を出ていった。
バレリアが心配そうな表情をしている。
「アンニーナ様ハルトと何かございましたか?」
「いいえ。特に何もないわ。今日はこの後はどうなっているのかな?」
ハルトの話はあまりしたくなかった。主人をこんな気分にするなんて傍仕えとしては失格だと思うの。
「アンニーナ様の午後の予定は入っていませんよ~」
ユーリアが私の前にやってくると
「どこか遊びに行かれますか?」と確認してきたので
私は少し考えてから
「今日は気分が優れないからゆっくるするわ」
その言葉にバレリアが反応して
「では、体調不良になるまえに今日はゆっくりお休みください」
そういうと寝室に入っても大丈夫な部屋着に着替えさせてくれた。
「・・・ありがと」
私は、寝室に入る前にバレリアにお礼をいうと
「私はアンニーナ様の心労を癒すことはできませんがどうか心安らかに過ごせるようにいつもお傍にいさせてくださいね」
バレリアの優しさに少し涙ぐみそうになりながら小さく〝うん〟と頷いて寝室のドアを閉めた。
寝室に入った私は、お昼寝をするわけでもなく少し開けた窓から入ってくる風をうけながらただぼーっとしていた。気休めに本を読もうと机に何冊か置いているが中々手が伸びなかった。
することもないしやる気も起きないので机の上で腕を枕にして頭を乗せて目を瞑っていた。
ふと左手首の魔法陣が気になったので左手首を見ると
「うそ?」
いつもは淡い桜色に光っていた魔法陣の半分以上が黒色に染まっていた。
私は起き上がってその魔法時を観察した。
特に痛みもないので変化に気づいていなかった。
「えっいつの間に?」
黒く染まった魔法陣も元の色の部分も綺麗に光っている。ただ一部が黒く染まっているだけだけど。
「少し怖いし、ラウル国王にお願いしてこれを壊してもらおうかな」
カロル王女も手伝ってくれるって言ってたし。
「カロル王女かぁ~」
私はそのままベッドに飛び込むと(これ、バレリアに怒られる案件だけどね)今朝のカロル王女とハルトの仲の良さを思い出す。途端に心のモヤモヤが発生した。
私は、それを思い出さないように目をギュッとつぶった。
すると、気持ちが少し落ち着いたような気がした。
「良かった・・・。」
このモヤモヤはいつかは制御不能になりそうですごく怖かった。
落ち着いてよかったと思いながらなんとなく左手首を確認すると
「魔法陣の黒い部分が増えてる?」
さきほどよりも魔法陣の黒い部分の面積が明らかに広がっていたのだった。
「どうゆうこと?」
どうして私がハルトの事を考えてモヤモヤするとこの魔法陣が黒くなっていくの?
ハルトと魔法陣に何か関係があるのかしら・・・。
だらだらと時間を過ごしていたのでもう夕方前だった。
私は寝室から出ると
「アンニーナ様、御気分はいかがですか?」
「うん。大丈夫よ。それよりハルトはいるの?」
「いいえ、それが・・・。文官との書類の打ち合わせを終えた後、急に休暇が欲しいと言ってきたのでユーリアと後退しています」
「そうなの。まあ、ハルトも働きすぎだからね」
「そうですよ!ハルトは私の仕事を奪いすぎなんです!」
ユーリアは少し怒りながら私が夕食を食べに行くと思い外に出れる衣装を用意し持ってきてくれた。
「これもアンニーナ様に似合うと思いまして!私頑張って選んでみました!」
「ありがとう!あっこの色は中々着た事のない色かも!」
「そうですよね。アンニーナ様はこの色も似合うと思ってたんですよ」
ユーリアは嬉しそうに私に衣装を当てながら色々説明してくれた。
着替えが終了したのでそのまま食堂へ移動することにした。今日はモリーさんは帰宅したのでバレリアが案内してくれるらしい。
「実は、私はもう道を覚えていたのですがモリーさんが熱心に自分がお連れしますと言ってくれていたのでお言葉に甘えてたんです」
とバレリア的には少しお仕事をさぼった気分だったのか申し訳なさそうに私に話してくれた。
「バレリアは他の仕事もあるからそこは甘えて良かったと思うわよ」
「ありがとうございます」
バレリアははにかみながらお礼を言ってきた。
そして、美味しい夕食をバレリアと一緒に食べた後(一人だと寂しいからバレリアに我儘を言って付き合ってもらいました)部屋に戻っていると
「アンニーナ様・・・。」
バレリアが突然止まった後振り向いた
「どうしたの?」
「あの・・・。少し迷子になったかもです」
珍しく頬を掻きながらエヘヘと笑ってごまかしていた。バレリアでもそんなことあるんだな。
私は周囲を見渡してみるとなんとなく方向が分かったので
「バレリア、多分私達の部屋はこっちの方よ!」
私が指を刺した方向を二人で見ると、そこにはあの二人が壁際に立っていた。
「あれ?あれはカロル王女とハルトですよね?」
私は嫌な予感がした。壁側にいるハルトをカロル王女がうえから被さるように立っている。
ハルトはカロル王女より少し背が低いので二人からは私達は死角になっているようだった。
ドキドキ、ドキドキと鼓動が外に漏れそうなほど私の中で響いている。
この先を見てはいけないと思いつつ私もバレリアもその場から動けなかった。
カロル王女がハルトをそのまま押し付けて何かをしているようだった。
その時私は以前見た夢を思い出した。
「バイバイ、姫」
ええっとその後二人は何をしたんだっけ・・・。
その時、カロル王女から体を少し動かしたハルトと目があった。
ハルトは私を見つけると目を大きく開いていた。
私は、バレリアの手首を掴むと
「私達の部屋はあちらよ!」
と小声で打伝えそのまま走り去った。
最後までお読みいただきありがとうございました。




