新たな仲間と依頼決定座談会
我がパーティが四人になった。
これは大変心強いのだが、その分だけ食べる口が増えたという事で、維持費がかかるようになったとも言える。
つまりだ。
「仕事を探さないといけないな。しかも早急に」
「うっ、済まないね、あたしらほとんど一文無しで……」
レベッカとジョージは、手持ちのお金のほとんどが旅費で尽きてしまっていたのだ。
そんな訳で、俺とアリサで手に入れたお金がパーティの維持費にどんどん消えていくことになった。
宿代の立て替えなんかもあるからな。
それからだ。
部屋割りで、俺とアリサは別々の部屋になった。
アリサはレベッカと一緒。
俺はジョージと一緒だ。
これはなんと、レベッカが主張してきたのだ。
「やっぱり、年頃の男女が同じ部屋にいたら間違いが起こるかもしれないだろう? 女は女同士がいいのさ!」
案外貞操観念が強い人なのかもしれない。
「レベッカは北方の部族出身だからね。生涯同じ相手と寄り添う文化があったりするから、そういう意味で男女部屋を同じくしないというような……」
「うるさいよジョージ!」
ジョージが怒られている。
アリサはちょっと残念そうで、俺も俺でちょっと残念だったが仕方あるまい。
それに、部屋は別々と言っても、寝る前の相談なんかは俺の部屋にみんなで集まって行なう。
というわけで、下の酒場で仕入れてきた飲み物を口にしながら、明日からの対策について話し合うことにする。
「俺たちもあまり経験があるわけじゃないんだが、今までやった依頼というと、じゃがいも討伐と……」
「じゃがいも討伐!? なんだいそれは!?」
「あ、聞いたことがあるよ。この町の近くにできたっていう遺跡に関わる話だよね? 遺跡から漏れ出た魔力が、じゃがいもをモンスター化させたっていう」
「そうそう、それだ。それと、エルフの遺跡の発見」
「えっ、それは初耳だ」
ジョージがグッと寄ってくる。
「それはもう、知識神の神殿の管轄になっちゃったのよ。私たちは報告でおわり。興味があったら、お父さんに紹介する?」
「えっ、えっ、アリサさんのお父様は知識神の神官なのですか……!!」
「はいはい、ジョージが喋ってると話が進まないから! ……なるほどねえ。あたしらは、街道に出るゴブリンを他のパーティと一緒に退治したくらいかね。でもパーティを組んでなかったから、お小遣いくらいしかもらえなかったよ」
「なるほどな。じゃあ、お互い初心者みたいなもんだな。俺たちだって、どの依頼も他の冒険者だとか、エルフに助けてもらったし」
「アブラゲさん、赤ちゃん、元気かなあ」
アリサが遠い目をした。
結局、話し合いの結果、戦士に盗賊、神官と魔術師が揃っているから、これは普通に依頼を受けてみるのが良いのではないかという話になった。
つまり、モンスターの討伐だとか、隊商の護衛だとかだ。
「護衛は難しいんじゃないかな……」
ジョージが腕組みをしている。
「時間がかかるのもそうだけど、ほら、高価な商品を扱ってる場合万一があるかもしれないだろ?」
アリサを見る。
なるほど。
「ひどーい! 私だって気をつけるよ? だから大丈夫だよ! ……たぶん」
「うん、やめておこう。じゃあ、討伐とか?」
「頭数が揃ったって言っても最小限だからね。無理が無い依頼を見極めないといけないよ。あんたたちがさっき話してたじゃがいも討伐だって、結局はすごいことになったんだろ?」
「まあね。だけど、あれは例外だと思う」
「討伐系はアリサさんのパワーを生かせると思うんだ」
「ジョージさんパワーとか言わないで!?」
複雑な乙女心である。
しかし、ジョージも見た目に似合わず結構直接的な表現をしてくるな。
人見知りだけど、打ち解けると遠慮が無くなるタイプなのかもしれない。
「でもこいつ、交渉とか全然だめだから。だからあたしが慣れない報酬の交渉することになって、相場とか全然分かんないってのにさ」
「うっ、面目ない」
ジョージが落ち込んだ。
なるほど、彼らが貧乏旅行をしてきたのは、頭脳を担当しているジョージが人見知り過ぎて交渉事ができなかったせいなのか。
割りと俺たちとはすぐに馴染んだが、これは同年代だからかもしれないな。
「大人を相手にしてるとさ、緊張してしまってだめなんだ」
「私もけっこう緊張しいだよ。一緒に頑張ろう!」
「おおっ……、がんばろうアリサさん!」
「よし、ジョージ。アリサにシンパシーを感じるのは分かるが、ちょっと離れような」
俺は二人の間に割って入った。
閑話休題。
「ロッド、あんた意外と情熱的なんだねえ……」
「だから、本題に戻ろう!! 依頼についてだ!」
俺は冒険神神官の女性からもらってきた、依頼表の写しを広げた。
「ええっと、なになに? げすいのすくりーまあたいじ……?」
「うおー!」
「おおー!」
俺とアリサは驚愕した。
レベッカが広げられた写しを解読したのである。
「ねえ、北の部族って文字を使ってなかったはずだよね?」
「うん、だけど簡単な読み書きは旅の途中で僕が教えたんだ」
「凄いなジョージ。人目で脳筋と見えるレベッカに文字を教えるとは」
「あんたらあああああ!!」
ドンッ!
お隣さんから壁を叩かれた。
明日早い冒険者であろうか。
俺たちは首をすくめて、しーんと静まり返る。
「……ヒソヒソ声で喋ろう」
「町は怖いね……。大声で騒げもしないじゃないかい」
「スクリーマーか……。町の中の依頼だから、上手くやれば日帰りで行けるかもしれないな」
「すくりーまーってなんだい?」
「ええとね、それは動く野菜みたいなもので……」
「なんか、俺たちの冒険って妙に野菜に縁があるよな……」
「スクリーマーは、昔から町の下水にはたくさんいるのよね。数は多いけどそんなに強くないから、時々初心者冒険者が退治に行ったりして増えすぎないようにしているの」
「へえ、この町は下水があるんだね。僕、ちょっと構造に興味があるんだけど。この規模の町にある下水っていうことはやっぱり……」
「そうそう。半分は枯れた遺跡がつながっているの。遺跡に濾過する装置がついてるから、水をそっちに流してやるときれいになって川の下流に流れていって……」
「興味あるなあー……」
「あたしはそもそも下水を知らないんだけど。っていうか野菜ならスクリーマーは食べられるのかい?」
「ああ。ブロッコリーみたいな奴らでな……腹には溜まらないと聞いたことがある」
俺たちの話題はスクリーマー一色になる。
これは、もう決まりでは無いだろうか。
俺はまとめに入った。
「よし、それじゃあそういうことで、明日からスクリーマー退治に行こう。多分、俺たちの実力だとそう難しくない依頼だけど、まずはこのパーティでやっていくという事で、連携とかお互いの能力を確認するイメージで」
「賛成!」
「異議なし!」
「いいね! 楽しみだよ!」
満場一致である。
俺とアリサの三回目の冒険であり、レベッカとジョージを迎えての最初の冒険は、下水でスクリーマー退治。
ついでに枯れた遺跡の見学だ。
俺たちは飲み物で乾杯すると、依頼の成功を祈ったのである。




