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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第六章:ヘタレのジル、神の本拠地へ。
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暴走

神がゼアスさんに何をしたのか、僕にはわからなかった。

ただ、神がゼアスさんの目の前で自分の腕を切った瞬間、ゼアスさんの様子がおかしくなった。

目を見開いて固まった次の瞬間、頭を抱えて苦しそうなうめき声をあげた。


「ゼアス!?」


エマさんがそんな風に声をあげてゼアスさんのもとへ駆け寄ろうとするのを、エリシアが止めた。

エリシアは金色の美しい瞳で、ゼアスさんを見つめている。


「エマお姉さん、今、ゼアスさんに近付いちゃダメだよ」


エリシアは目を細めて、そんな風に言う。


「操られてる…?」


僕がそう聞くと、エリシアが首を縦に振った。


「多分…ゼアスさんの意識はここにはないよ。ジル、エリシアがゼアスさんの時間を止めるから、神様を足止めできる?」

「う…うん、頑張る」


僕の返事を聞いたエリシアは、ゼアスさんの方へ駆け出した。


「ちょっとお前、邪魔しないでくれる?」


そんな風に神が言いながらエリシアにレインさんの大剣を振りかざす。

そんな神を、僕は横合いから多少不格好に突き飛ばした。

エリシアは、必ず僕が神を止めると信じていたのか、神の方を一瞥もせずにゼアスさんに駆け寄った。


「…本当に…目障りだよね…お前」


神がにっこりと笑いながらそう言い、僕に向かって大剣を構える。

それを見て、僕は女神がくれたドラゴンの姿になった。

ただの大剣を相手にするなら、体も頑丈で、動きも速いドラゴンの方が数倍いい。


「へぇ…それが女神から与えられた力か」


僕がドラゴンの姿になっても、神はほとんど驚きもしない。

まぁ、調べはついていたということなんだろう。

ギルド内で、僕がドラゴンだったと知らなかった何人かは、驚いたように声をあげた。


「でもさ…女神から与えられたその器があったとしても…ゼアス=ジェリアの魔法は通るよね?」


そんな神の言葉に、僕がはっとしてゼアスさんの方を見た瞬間、ゼアスさんはエリシアの首を掴んで持ち上げた。

その時、僕には聞き取れなかったが、ゼアスさんはずっと誰かの名前を呼んでいるようだった。


『エリシア!』


僕がエリシアとゼアスさんの方に駆けだそうとすると、神が僕の目の前に割り込んできて、大剣を僕の体に大きく振って当てた。


『う…』


大剣は、鱗を貫通はしないし、そこまで痛いわけではないけど…ゼアスさんたちの居るほうとは真逆の方向に押し戻されてしまった。

そして次の瞬間、ゼアスさんは意識を取り戻さないまま魔法を詠唱し始め、魔法の弾丸を僕に向かって放った。

僕がその場から飛びのこうとした瞬間、僕の前足に神がどこからか取り出した片手剣を突き刺した。

僕の鱗を貫通するってことは…この武器の素材は竜の鱗か…!


「僕の魔法は、相手に幻覚を見せている間、僕が自由に操ることが出来るんだ。」


前足はその片手剣によって床に固定されてしまったせいで、僕は飛びのけなくなる。

そして、ゼアスさんの魔法をもろに何発も食らってしまった。


『ぐ…う……』


立っていられないくらいの激痛が走って、僕はその場に倒れこんだ。

まさか、ゼアスさんの本気の魔法を全身で受ける日が来るなんて…。

今日は最悪の日だ…。


でもとにかく、僕の体のことよりもエリシアを…。


そう思って動かし辛くなった頭を無理やり動かし、ゼアスさんに首を絞められ続けているエリシアの方を見た。

魔法を打ち終わり、ゼアスさんは意識のないまま顔をエリシアの方に向けた。

その瞬間、エリシアがニコッと笑った。


…あの状況であんな晴れやかな笑顔ができるのか…。

というかむしろ、その晴れやかな笑顔に若干ゼアスさんへの殺意がこもっているような気がするんだけど、僕の気のせいかな…。


ゼアスさんと目が合っている状態でエリシアの目が光りだし、ゼアスさんの動きが止まった。


そんなゼアスさんの腕を振り払って地面に着地したエリシアは、一瞬でせき込んでから神の方を向いた。


「いくら皆を人形にして動かそうとしたって、エリシアが居る限り無駄だよ?」


そんな風に、エリシアはにっこりと笑った。

…すごい挑発の仕方だ。

僕も、いつまでも痛がってはいられない…。


そう体を起こそうとしたとき、僕の体から一瞬で痛みが消えた。

僕のすぐ横で、シルヴィが魔法を使ってくれていたのだ。


『シルヴィ…ありがとう』

「私に出来る事なら、なんだってするわ。ジル、あなたがこれからエリシアを援護するなら、私は後ろからジルを援護しながら魔法を放つわ」


そんな風にシルヴィは言う。


『うん…でも、変なんだ。エリシアは、神を挑発してから全くこっちに視線を向けてない。いつもなら、ちょっとの目くばせくらいあるはずなのに…』

「…確かにそうね。何か策があるのかしら?」


神が一歩、エリシアの方へ踏み出した瞬間、エリシアと神の間にランディットさんが割り込んだ。

そしてドラゴンの姿になる。

僕と同じ、真っ白い鱗に覆われている、大きなドラゴンだ。

エリシアは、今度はランディットさんに援護してもらうつもりだったようだ。


『相手が誰だろうと、エリシアちゃんに危害を加えようとするやつには容赦しないよ』


そんなふうにランディットさんは威嚇のような低い声を上げた。

そんなランディットさんの声に、神はうんざりとしたように首を横に振った。


「本当に、ここはドラゴンだらけだな。僕がせっかくドラゴンと人間が争うようにけしかけてあげたのに…。まぁいい。僕は何も、ここでお前達を始末しようとしているわけじゃない。お楽しみは…これからだ」


神はそんなふうに言うと、何かを合図するかのようにパチンっと指を鳴らした。

するとその瞬間、僕達を取り囲むようにぐにゃぐにゃと空間が歪み始めた。

ギルドの建物の中、少し端の方には空間魔法を使って姿を消していたヴィッタさんが、少し疲れたような表情で現れて、舌打ちをした。


歪んだ空間からは、五人の白い外套を羽織ったバケモノたちが姿を現す。

その五人のうち一人は、ヴィッタさんの母親だった。

ヴィッタさんと激しく争っていたのか、体のあちこちに傷がついているが、動くのになんの支障もないようだ。


そして現れたバケモノたちが一斉に手を振りかざした瞬間、僕の目の前は真っ暗になった。

最後まで読んでくださりありがとうございます!

よければブックマークなど、よろしくお願い致します。

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