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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第五章:ヘタレのジル、自分の過去を知る。
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マスターの予測

マスターの部屋に通された僕の目の前には、真横には、ゲラゲラと大笑いするゼアスさんが居り、僕の目の前には真顔でマスターが座っていた。


「ぜ…ゼアスさん…いつまで笑ってるんですか…」

「どうやっておやじの部屋まで行くのかと思いながら見てたら、いきなり壁登り出すんだぞ。そりゃあ笑うだろ!」


ゼアスさんはそう言いながら腹を抱えて笑う。

…だ…だってそれ以外にやりようが無かったじゃないか…!


「大体なんでお前そんなに身軽になってんだ? 猿か」

「さ…猿…? 僕はついに、ナメクジとかもやしとか棒とかから人類に近づいてきてるのか…」

「何言ってんだお前」


僕とゼアスさんのやり取りを無表情で見ていたマスターが、静かに口を開く。


「…ジル=オルドランド」

「は…はい……」


マスターが無表情のまま、僕の方に視線を向けた。

やっぱり、壁上りはいけなかったのか…。

お咎めはなんだろう…。


「面白かったぞ」

「…へ……?」


お咎めを受けると決めていた僕は、マスターの言葉に目を見開く。


「…親父は殆ど面白いって言わねぇからな。良かったなジル」

「何が…!? っていうかマスター全然笑ってませんよね…」

「親父は殆ど笑わねぇんだよ。終始仏頂面だから怖がられる」

「…む。わしは怖がられているのか」

「…ゼアスさんだってこの間シェリーちゃん怖がらせてたくせに…」

「あん?」

「いや…なんでも…」


穏便に済ませようと僕がボソボソと言葉を返した瞬間、ゼアスさんは僕の髪を一房掴んだ。


「い…いたたた! ちょっとゼアスさん…!?」

「お前、ここだけ髪が黒くなってるじゃねぇか…どうした?」

「え…? あぁ…」


ゼアスさんが掴んでいたのは、僕の髪の、封印の解除によって黒く染まった部分だった。


「それは、封印が解けた証らしいよ…。僕は元々、黒髪だったみたいだし…」

「…お前が…? 想像つかねぇな…今はまつげとかまで白いし」

「…そうなの? 自分の顔なんかまじまじと見たことないから…気が付かなかった」

「これ以上黒くなることはねぇのか?」

「…さぁ……」


そう答えた僕を、ゼアスさんはじっと見つめた。


「…」

「……」

「…な…なにか…?」


ゼアスは僕ににっと笑いかけると、


「お前、なんか頼もしくなったな。早くエリシアとシルヴィに見せてやりたいぜ」


と、言葉を放った。

…頼もしくなった…?

僕が……?

急に投げつけられた褒め言葉に、僕は困惑した。

前に比べたら確かに増えたけど、褒められることなんか稀だったからびっくりした…。


「ジル=オルドランドが力を取り戻したのならば、皆を呼び戻そう。最も、族長の方々は既に教会を潰して戻ってきているが」

「随分と仕事が早いな」

「ゼアス。お前はレインとマアヤを迎えにいけ。少し心配なことがある」

「…あぁ、わかった」

「それから、わしがシルヴィとエリシアを迎えに行くとしようか」


そう言いながら、マスターは立ち上がった。


「あ…あの、マスター…報告は…」

「お主の力が戻ったとわかった。今はそれだけでいい。エリンが気を失っていたことと、レニアが怪我をしていたことは、同じ理由なのだろう?」

「あ…はい……マスターの忠告通りになりました…」

「わかった。詳しい話は後で聞こう。先に、各地に散っている皆を連れ戻さなくては」


マスターはそんなふうに言いながら、ゼアスさんと共に部屋を出ていった。

マスターは、僕がギルドを出ていく前に言った。


『ジル=オルドランド』

『お主に、言っておきたいことがある』


そう呼び止められた時、マスターは僕に、重要なことを話していた。


「恐らく、協会内で力を取り戻した時、神はお主の前に現れるだろう」

「…え…?」

「そしてお前の力を試すように、他の二人を操るはずだ」

「…! 神の魔法のことですか…? でもそれって、生きている人間やドラゴンみたいな知能の高い動物には効かないんじゃ…?」

「意識があれば…な。気絶させれば、つぎはぎの死体人形と同じように扱える」

「……!」

「そうなる可能性があることを、レニアとエリンには伝えていない。変に力が入ってしまっては、神が現れる前に殺られてしまうという事も有り得るからな…。わしがお主に頼みたいことはただ一つ。決して…二人を殺さないでくれ。多少の怪我をさせ、気絶させるのは構わないし、むしろそうした方がいい。だが、わしはこんな任務を二人に与えていても、二人には死んで欲しくないと思っている。ギルドの冒険者は、皆わしの子供のようなものなのだ」


マスターのその言葉に、僕は小さく頷いた。


「はい…必ず三人で帰ってきます」


僕の言葉に、マスターは満足そうに頷いたのだった。




…まさか……本当にマスターの言った通りになるなんて…。

でも、レニアは自分で正気を取り戻してくれた。

それは、マスターの予想にもなかったことだ。

あれが無かったら、正直僕も危なかった。

今頃、頭の風通しが良くなっていたかもしれない。


神の魔法、パペット…それは、想像以上に危険な魔法なのかもしれない。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

よければブックマークなど、よろしくお願い致します。

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