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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第四章:ヘタレのジル、教会に殴り込む。
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ヘタレドラゴン、二股を疑われる

穏やかな雰囲気だった村のなか、一人の男の怒号が響き渡った。


「なっ…なんなんだよてめぇは!! 俺はこいつにぶつかられた被害者だぞ!」


…まぁ…確かに僕の前方不注意もあるかもしれないな…。


「私には、あなたから当たりに行ったようにしか見えなかったけれど? 私の他にもそう見えた人が居るはずよ」


捻り上げた男の腕を離したシルヴィは、両手を腰に当てて冷たくそう言い放つ。


…本当に、そこら辺にいる男子よりも普通にかっこいいよ…シルヴィは…。


僕はそう思いながら、僕はガタイのいい男と、シルヴィを交互に見比べていた。

すると、腕を離されたのをいいことに、その男はシルヴィの胸倉を掴んだ。


「てめぇ…! 女のくせに調子に乗るなよ!」


そんな男の顔を冷静に見てから、シルヴィは体を捻り、男のわき腹に蹴りを食らわせた。

出店の方に吹き飛んでいく男を、僕は慌てて出店の手前で受け止めた。

受け止めたといっても、その場で尻もちをついて思い切り倒れてしまったのだけど。


こんな重そうな男の人が出店に直撃でもしたら危ないじゃないか…。

シルヴィ…力加減考えてよ…!


僕はそう思いながらも、受け止めた男を離して立ち上がると、尻についた砂を払って、出店の店主に頭を下げた。


「騒がしくしてすみません」

「いや、いいけどよ…兄ちゃん大丈夫か? でこ赤くなってんぞ」


でこ…?

店主に言われたその言葉に、僕は自分の額に手を当てる。


「ぶたれたか?」

「…あ…いや、これはベッドから蹴落とされた時にぶつけたもので…全然大丈夫です」


そんな僕の言葉に、店主は僕とシルヴィの顔を交互に見比べて苦笑いした。


「兄ちゃんの彼女さんは随分と強ぇんだな」


…か…彼女…?


「つ…付き合ってません!」


シルヴィと僕は同時に店主の方を向くと、同時にそんな声をあげる。

そして僕とシルヴィは顔を見合わせると、お互い少し俯いた。


僕も驚いて声をあげちゃったけど、そんなにムキになって否定しなくても…。

シルヴィに僕がお似合いじゃなくて、そう見られるのが嫌、と思う気持ちは、わからないでもないけど…。

なんだか心が痛い。


「そうなのか? じゃあどうだいお嬢ちゃん、うちの息子と見合いなんていうのは」

「だっ…ダメです!!」


あれ…今、僕なんて言った…?

店主の言葉を聞いて、咄嗟に口から言葉が零れ落ちた。


「そーかそーか」


店主は楽しそうに僕の顔を見ながら笑う。

ダメ…ダメって…。

僕は、シルヴィの恋人でもなんでもないのに…。

というか、人間かどうかも怪しいところなのに…。

僕はただの、パーティメンバーだ。

そんな僕が、シルヴィが他の男の人とお見合いするのをダメと言う権利なんかないのに…。


それが、わかってるのに、シルヴィを誰にも渡したくない、だなんて…。

…どうかしてる。


僕の横で、シルヴィは小さく俯いている。

…また、少し気まずくなってしまいそうだ…。


いつの間にか、僕の足下に座り込んでいたはずのガタイのいい男の人の姿も、その場から無くなっていた。


「し…シルヴィ…」


僕は前のように何も離せなくなってしまうのが嫌で、シルヴィに小さな声でそう呼びかけた。

…声もひょろひょろのもやしみたいだと、前に奴隷商人に言われたことを思う出す。

…確かに、その通りかもしれないと、自分で思ってしまった。


僕のその、もやしのようなか細い声に、シルヴィは顔をあげた。

シルヴィの頬は、こころなしか赤く見える。

…もしかして、具合悪い…?


「大丈夫…?」


僕がそう問いかけると、シルヴィの頬がもっと赤くなる。


…!?


そんなシルヴィを見て、僕は熱があるんじゃないかと、シルヴィの額に手を当てる。


「…熱は…なさそ…」


そこまで言った僕の頬を、シルヴィの白い手がバチンっと叩いた。


「ぶっ…」


その場にべしゃっと倒れた僕を見て、店主は吹き出して笑い、シルヴィは慌てて僕の横に屈みこんだ。


「ご…ごめんなさい、ジル…! つい…!」

「い…いや、こっちこそごめん…」


自分がそんな、つい、で殴られるほど気持ち悪い顔をしていたとは思わなかった。

その辺の配慮が足りていなかったのか…。

でも、顔なんかどうしたらいいのか。


別に誰に顔を否定されたわけでもないのに、僕は悶々とそんな風に考える。


「僕が気持ち悪かったのは謝る…けど…シルヴィ、ちょっと具合悪いんじゃないかな…一旦宿屋に戻った方が…」

「ジルが気持ち悪いなんて、誰も言ってないでしょう…?」

「いや、つい、でぶつほど気持ち悪かったのかと反省してたところだったんだけど…」

「ち…違うの…! そうじゃなくて…」


そうじゃなくて、の、続きをシルヴィはなかなか口にしてくれなかった。

それどころか、もともと赤かった頬がさらに赤くなる始末だ。

そんなシルヴィと僕のことを交互に見比べながら、店主はにやにやとしている。


僕の心情も、シルヴィの心情も、全部わかっているとその表情が物語っていて、何となく居心地が悪い。


「兄ちゃんたちは、ピュアでいいなぁ」

「…?」


おまけによくわからないことを言い出す。

今の状況に困り果てていた僕の背中に、誰かが飛びついてきた。


「ジール! 起きたんだね!」


僕は声の主が見なくてもわかった。

大体、僕に飛びついてくるのなんか一人しかいない。


「エリシア…おはよう」

「うん! おっはよー!」

「エリシア、ちょっと離れてくれない…?」


いつも通りのやり取りだ。

エリシアも飽きないのだろうかと思ってしまう。


「嫌!」

「嫌って…」

「だってジルに抱き付いてると安心するんだもん」


そこまでエリシアが言った時、店主がこちらを変な目で見ているのに気付いた。


「兄ちゃん…」

「は…はい…」

「一人にしておけ…」

「はい…?」

「二股はダメだ」

「何の話ですか!?」


真面目な顔をしてとんでもないことを言う店主に、僕の頭はもうついて行っていない。


「え、ジル! いつ誰とそんなことしたの!?」

「してないよ!」

「だよねっ! ジルはそんなことできないもんね!」


エリシアのできない、という言葉が、ぼくの性格について言っているのか、はたまたそもそもお前には恋仲の人を作るのすら不可能だろう、と言われているのか…僕には判別できなかった。


「さー、行こうシルヴィ! お買い物の続き!」


そんな風にエリシアがシルヴィの手を引いた時、シルヴィの首から、水色の貝殻が音を立てて地面に落ちた。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

よければブックマークなど、よろしくお願い致します。

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