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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第四章:ヘタレのジル、教会に殴り込む。
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死者の森の正体

僕は必死に森の中を、ヴィンを抱き抱えて走っていた。

早く…!

バケモノたちが宿屋に行ってしまう前に…!


そう思っていても、僕の足ではこの速さで限界だ。

それどころか、人並み以下の速さの全力疾走でさえ、もう息切れをして続けられなさそうなぐらいになってしまっている。

苦しいし疲れたし…でも…急がなきゃ…。


僕は棒のようになっていく足を必死に進めていく。

そんな時、音もなく近づいてきた何かに腕を掴まれた。


「わっ!?」


驚いて声を上げ、僕は氷の箱から鋭利な氷の塊を取り出して、僕の腕を掴んだ人物に向かって振りかざす。

その振りかざした手は掴まれて、攻撃を防がれてしまった。


「あはは、ご挨拶だなぁ。私だよ」


そんな聞き覚えのある声に顔を上げると、そこには癖のある短い黒髪を持ったヴィッタさんが立っていた。


「えっ…!? ヴィッタさん…どうしてここに…」

「それはこっちのセリフなんだけどねぇ」

「え…?」

「君、ここにレニアとマアヤが盗んできた資料を持って入らなかった?」

「…あ……はい…」

「だよね。奴ら、死にものぐるいで資料を探してるよ。あぁ、まぁ、本当にもう死んでるんだけどね」

「死んでる…? ヴィッタさんは、あいつらがなんなのか知ってるんですか…?」

「うん、知ってるよ。でも…まずは木の上からこっちを狙ってる奴らを掃除してから話をしようか」


木の上…!?

僕がパッと顔を上げると、そこからいくつもの黄色い目がこちらを見下ろしていた。

そうだ、最初にこの森に入った時も、木の上から降ってきたバケモノに頭を掴まれて倒されたんだった…。

もしかしたら、木の上なら少しは霧が薄く、動きやすいのかもしれない。


僕とヴィッタさんの目の前に、何人ものバケモノが降りてくる。

ざっと見ても、最初に森に入った時の三倍はいる。


…この氷の武器が足りるかどうか…。

少しずつだけど、もう氷は溶け始めてしまっている。

僕は戦闘態勢に入るため、ヴィンを地面に寝かせようとしたが、ぐしゃっという生々しい音がして顔をあげた。

すると僕達の周りを取り囲むように並んでいたバケモノたちが、一瞬にして全員倒れ伏していた。


「え…?」


一瞬の出来事に、僕は全く何が起こったのかわからなかった。

ただ、ヴィッタさんがその場から一歩も動いていないということだけはわかる。

ヴィッタさんはぐっと握った右手を引っ込めると、こちらに向けてにっこりと笑った。


「さぁ、話の続きをしようか」


その爽やかな笑顔に、バケモノの赤黒い血が飛び散っていて、なぜだか僕はゾッとした。

バケモノの死体の山の中心という異様な場所に、そんな爽やかな笑顔があるのが不自然だからそう思うのだろうか。


「い…今、一体何を…?」


僕がおずおずとそう聞いても、ヴィッタさんは軽く首をかしげて笑っているだけだった。


「それはまぁいいじゃないか。それよりも、こいつらのことについて話そうか」


ヴィッタさんは懐から布を取り出し、顔についた血を拭ってからそう言ってニッコリと笑った。


「…は…はい」


どうやら、ヴィッタさんは自分のことについてはあまり話したくないようだ。

つくづく、謎の多い人だ。


「あのバケモノたちについて、君が知ってることは?」


突然ヴィッタさんは、僕に質問をしながら歩き出す。

僕はそれを慌ててヴィンを抱え直してから追いかけた。


知ってること…知ってること…。


「えっと…頭を攻撃しないと死なないってことと…あとは、目の色が変わるってことくらいしか…」

「へぇ。目の色が変わるのにも気づいたんだね。なら、少しは説明が楽になるかな…」


ヴィッタさんは、そう呟くように言いながら顎に手を当てた。


「何から話せばいいかな。うーんとね…」


困ったように首をかしげたヴィッタさんは、一瞬右手を上から下へと振り下ろした。

それを僕が何かと思って見ていると、突然僕達の真後ろでゴンっという音が聞こえ、僕は驚いて後ろを振り返った。

すると僕の視線の先には、頭から血を流したバケモノが倒れていた。


「後ろから襲いかかろうとする無礼な奴が居たからね、少し痛い目を見てもらっただけだよ」


ヴィッタさんはそう言って笑うが、少し、痛い目を見る、ぐらいで済んではいない。

もはや死んでしまっている。


「…このバケモノ…一体何人いるんですか…?」

「ほぼ、無限に居るね」

「む…無限…!? そんなのどうしたら…」

「こいつらを根絶やしにしたかったら、神を倒すしかないのだよ」


そのヴィッタさんの言葉に、僕は驚いた。

このバケモノと神って…なんの関係があるんだ…?

はてなマークを浮かべる僕に、ヴィッタさんは可笑しそうに笑って言った。


「まだわからないのかい? こいつらは白の教会の者だよ」

「…え…?」


そうか…こいつらに格好に見覚えがあると思ったのは、白の教会の者だったからなのか…!


「白の協会が神の直下の部隊。そして、白の協会に居る者達は全員、こいつらのようなつぎはぎの人形なのだよ」

「…人形…」


人形と、そう言われてみれば、そんな感じもする。

話せた者もいたが、殆どは奇声をあげるぐらいで何も話さず、僕をただ追いかけてきていた。

でも…人形は自力では動けない…。

どういう原理でバケモノたちは動けているんだろう。

それに、教会の者がこんな森にいるわけはなんだ…?


「神の魔法は、パペットと言って意識の無い者、知能が低い者などを操ることが出来る、凶悪な魔法だ。直下の部隊として動いている奴らは全員、神のあやつり人形なのだよ」

「…このバケモノを…全部神が操ってるって言うんですか…?」

「うん、そうだよ。神の魔力量は君ほどではないけど怪物並みだからね」


君ほどではないとか言われるけど、僕の魔力は封印されているから、魔法なんて使えた試しがない。

ドラゴンの姿になれば、氷を操ることが出来るけど、それも、ドラゴンの器のおかげだし…。

これでは、自分に魔力があるということに実感が湧くはずがない。


「それで…その神の直下の部隊がどうしてこんなところに…?」

「神は世界の各地で人形を作り出す場所を設けているようなんだ。人間の死体を集め、つぎはぎだらけながらも動かしやすい形にして、その場所で試運転する。大丈夫そうなら、そこから各地にある教会に派遣する、という形でね。だけどね…」


ヴィッタさんはそう言いながらにっこりと笑う。

そして、方手を振ると手を振った方向にある木が何本も倒れた。


なっ…!?

手を振っただけで、どうして木が倒れるんだ…!?

レニアが言っていた。

ヴィッタさんの魔法は、ほかの人と格が違うのだと。


「あまり人形の数を増やされると、私たちも困るのだよ。だから、私はここを壊しに来た」

「ここをって…この森を…ですか?」

「そうだよ。木々が無くなれば、見通しもよくなって隠れて出てきてない人形も見つけ出しやすい」

「だけど、これだけの木の量ですよ…? こんな森を平地にするなんて…」


そんな風に反論する僕に、ヴィッタさんは何も言わずにただ穏やかにほほ笑んだ。


「そんなの、歩くのよりも簡単さ」


静かにヴィッタさんがそう言った時、僕は瞬きをした。

そして瞬きの後…ヴィッタさんと僕の周りには、木が一本もなくなっていた。

最後まで読んで下さりありがとうございます!

投稿の時間が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。

よければブックマークなど、よろしくお願い致します!

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